寝子島ビーチグランピング！｜リアクション

寝子島ビーチグランピング！

●グランピングを楽しもう

　光村千恵と光村日向は荷物を抱えて『寝子島ビーチグランピング　すずしま』に向かう船に乗り込んだ。

「グランピングって初めて知ったよ！　便利な施設があるんだね～」

　千恵は海を眺めながら、楽しそうな声をあげる。向かう先は寝子島の南にある鈴島から、さらに東側にある島。オープン記念として行われた抽選会に当選し、一泊二日の宿泊券を手にした２人はこうして船に揺られている。
　だんだんと目的地に近づくと、船は緩やかに停止して、他の乗客とともに目的地に降り立った。
　
「こんなところに来ちゃうと無人島生活のこと思い出しちゃうな」

　千恵は以前MewTubeの企画『無人島サバイバルチャレンジ！』に参加した。限られた物資だけを持ち込み３日間過ごすというもので、鈴島で行われた。

「……あの時は心配したんだからね」
「ごめんなさーい……でもアレはアレで工夫して過ごせてて、充実感があったよ」

　さらに千恵は言葉を続ける。

「もし遭難したら私だって頼りになるんだから、その時は任せてよね」

　おどけて話す彼女に、日向はやれやれといった表情を浮かべる。

（方向音痴で泣いてばかりいた千恵だったから、どんなについていきたかったか）

　この施設に興味津々な千恵を見ながら、日向は一呼吸置く。

（でも今日は僕の目に届くところにいるんだ。今日は兄妹水入らずで楽しもう。成長して交流関係が広がれば、あまり一緒にいたがらなくなるかもしれない）

　だからこそ、この時間を大切にしたいと改めて日向は思った。

「今日は楽しんじゃおっと！　快適生活で上書きだ～！」
「ああ、そうだな」

　案内されたテントは小部屋ほどの広さがあり、内装もかなり整っている。千恵はその豪華さに驚き、はしゃいでいる。荷物を置くと２人は海辺に出た。

「お兄ちゃんこっちこっち！」
「今行く」

　ビーチに早速向かうと、海が輝いて見える。しかし千恵の表情が少しだけ曇る。

「どうした？」
「泳ぎは浮き輪が手放せないんだよね……」
「それなら泳ぎの練習をするか？」
「うん！」

　２人は水深の浅いところで泳ぎの練習をする。日向は千恵の手を取ると、ゆっくりとその手を引く。

「足を交互に、水を蹴る感じで」

　千恵は言われるように足を動かすが、どこかぎこちない。そこで日向は千恵の横に並んで、同じように足を動かす。

「こんな感じ」

　千恵はそれを見て真似をする。これを繰り返すうちにだんだんと良くなってきた。次に日向は手の動き、クロールの仕方を丁寧に見せる。

「こんなふうに腕を回して」
「うん」

　そうして２人の水泳レッスンは続いた。
　海に慣れてきた頃に、銛突き体験を行った。これで採った魚はスタッフに調理してもらえるという。丁寧に説明を聞き、分からないところは熱心に尋ねる。

（千恵にいいところをみせたい）

　日向はその一心だった。銛をよく手に馴染ませてイメージを固めてから潜る。水中では陸上ほどうまく動かせないが、運動神経がいいので感覚である程度はどうにかできる。

（海の中って……こうなってるんだ）

　プールの中から見える景色とはまた違う。しかし言葉で表すのは難しい。

（みんなや千恵にも見せてあげたいな……その内誘おうかな……。よし、目的は忘れずに……いくよ！）

　目を凝らし、魚に注意深く近づくと銛を放つ。そうして捕まえた魚を持って水面に浮上する。

（ごめんね。君の命は大事に食べるから）

　スタッフの手伝いもあって、そこそこの数の魚が採れた。そして調理に移ると、まずはスタッフが手慣れた様子で串を刺し、火にかける。味付けはシンプルに塩を振っただけだが、とても美味しそうに見える。千恵は熱さに気を付けつつ、それを口にした。

「おいしー！」

　千恵は素直なコメントをした。

「おいしい？　そう、よかった……」

　日向はしみじみと彼女が喜ぶ姿を眺める。そして自分もその魚を食べてみる。

「！　……捕れたてだからかな、自分でとったかいもあって特に美味しいね」

　２人ともずっと笑顔だった。日向はスタッフに教えてもらいながら自分でも調理してみる。
　
「ん～～！　おいしー！」

　千恵は先ほどよりも嬉しそうに言った。

「スタッフさんのも美味しかったけど、お兄ちゃんの料理もやっぱり美味しい。昔からうまいよねぇ」
「それは……」

　千恵の言葉に日向は頬を赤らめる。

「みんなの美味しそうな顔をみるのが好きだから……上達もするよ……」

　彼はそんな独り言を漏らした。
　ビーチで存分に遊び、魚突きも体験して、充実した時間を過ごした。でも流石に疲れてたのか、千恵が眠そうだ。

「疲れたし休憩しようよ。えへへ、テントだとワクワク感がちがっていいよね」
「それはあるな」

　今日の思い出やこの後どうするかなどを話しているうちに、千恵が眠ってしまった。日向はそんな彼女の頭をそっと撫でた。

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寝子島ビーチグランピング！

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