火曜日の屋上｜リアクション

火曜日の屋上

　紙袋さんの紙袋には、目の位置に小さな穴があいているのだが、いかんせん小さかった。
　四月を追いかけて、明後日の方向に走っていってしまった。
　瀕死の隊長を置いて。
「お、おしり……かみぶく……ろ…………」
「ひっ。まだ生きてる……！」
　四月が逃げようとして立ち上がると、その足は見事に下心のあごに命中していた。
「お、おしり～」
　再び倒れる下心の顔をイスと勘違いした四月は、そっと自分のおしりを……むぎゅ。
「……うん。あれ？　あたし何かおかしい？」
　確かにおかしいが、スケッチする際にイスは必要だ。
「スケッチに集中しよう！」
　四月は反復横跳びズを見ながら、猛烈にスケッチした。
　下心は心地よく意識を失っていった。おめでとう！

　見えないおっぱいをモミモミしながら歩く紙袋をかぶった変な人が向かった先は、魂行凪だった。
　神魂の影響で変態度が絶賛増し増し中の変態二人が、ついに出会ってしまった！
「……だ、だれ…………？」
「ファファファファ」
　紙袋の小さな穴から熱い視線が送られている。
「そこから……見てる……の？」
「ファファファファ」
　紙袋さんは変態度が増しすぎて、まともに喋れなくなっていた。
「ファファファファ」
「もっと……見て……もっと…………」
　ここから先は音声のみでお楽しみいただくことになるが、きっと学生らしく教科書を読んだり、ノートをとったり、そういったことをしているはずである。
「ファファファファ」
「これで……どう…………？」
「ファファファファ～」
「……もっと…………見て」
「ファファファファー！」
「いいよ…………」
「ファ……ファ……ファファ～」
「……えっち」
「ファファファファーーーーー！！！」

　一方、四月は妄想していた――

『小津は魔法使い～ペロペロ×エロベルト！～』

　小津秋吉は、男の娘の魔法少女。
「うふふふ。本当は男というのは、内緒だよ～」
　しかし、ある日着替えているところを赤い髪の男に見られてしまった。
「見たぞ……黙っていてほしければ……」
　赤い髪の男は、悪～い笑顔で近づいていった。

　という妄想をしているうちに、四月のろっこん『となりのドッペルさん』が発動、分身していた。
　本体の四月は赤い髪の男を、ドッペルさんは男の娘を追いかけた。

　そうこうしているうちに昼休みになり、屋上は人で混んできていた。
　ドッペルさんは勢い余ったのか、男の娘にぶつかると、手にしていた修正液を顔面にぶちまけてしまった。

「こ、これは……？」

　男の娘は今まで「あははうふふ」と完全に壊れていたはずだが、その声は冷静そのものだった。
　まさかと思いつつドッペルさんが静かに顔を上げると、目の前にいるのは秋吉ではなかった。
　秋吉とは別の女性が、修正液を指先につけて臭いを嗅いでいる。

「この臭い、この粘度……かけられたのは修正液のようだな」

　この声、この冷静な判断……まさか、やが……いや、まさかまさか。仮に「修子」と名付けよう。