喫茶Rainyの危機～ナウなヤングにバカ受けデザート編～｜リアクション

喫茶Rainyの危機～ナウなヤングにバカ受けデザート編～

●助っ人登場
　――喫茶Rainy、閉店の危機！
　源頼子の救援要請を受け、店には四人の高校生が集まった。
　本日は臨時休業。試作デザートをじっくり吟味できる。
「僕は若い子の“オシャレ”には疎くて。今日はよろしくお願いするよ」
　お店自慢のコーヒーを出して、飴村甘慈は丁寧に頭を下げる。
「こんなに素敵なお店が閉まるなんて……悲しいから」
　いても立ってもいられず、鎌倉を飛びだした楡宮遠海だが、方向音痴が災いして迷子に……『助けを求める声』に気付いた頼子に連れられ、なんとか到着した次第。
　店内で涼んでいたものの、甘慈に頭を下げられ、別の汗が噴きそうになる。

　遠海の言葉に、桜井ラッセルも頬を掻きつつ、
「俺も昔さ、父さんと喫茶店によく行ってたんだけど……独特の空気感？　年配の人達も穏やかに過ごす雰囲気が、居心地よくってさー」
「こーいう店じゃねーと、食えないメニューもあるしな。口を出すだけならタダってもんだ」
　個人的にオーダーしたカキ氷を頬ばり、水守流も「いっちょ手助けさせてもらうぜ」と乗り気な様子。
「“この店が無くなるのは、俺達も困る”ってことです。ぜひ協力させてください」
　八神修がそういうと、顔をあげた甘慈も「ありがとうね」と柔和な笑みを浮かべた。

　「キッチンを使っていいよ」と甘慈に勧められたものの、本格デザートについて門外漢。
　それならば、と代案が提示された。
「イメージを描いてくれるかな？　再現できるよう、僕も頑張るから」
　先ほど出されたアイスコーヒーを片手に、ラッセルと修、遠海はスケッチブックにデザート案を描き始めた。

　そんな中、流は手をあげ、甘慈マスターを呼び寄せる。
「季節限定メニューもあるらしーな？　ちょいと見直してみねーか」
　流の提案に、甘慈も「それは確かに」と顎を撫で、まずは作ってもらうことに。
　……数分して、デザートが運ばれてきた。
「おまたせしやした、クリームソーダとクリームあんみつですよ！」
　頼子が運んできたデザートを見つめながら、流は先ほど食していたカキ氷を思い返す。
（「カキ氷は最近出回ってる粉雪じゃない、ザクザクの氷だったな。クリームソーダもクリームあんみつも、派手さはねーが、大正レトロな店の雰囲気にはよく合ってる。……どれどれ」）
　見た目は良くとも、味が良くなければ、レビューはマイナスになる。
　食べ専らしく実食から品評すべく、流がクリームあんみつを口に運ぶと……眠たげな目が僅かに見開く。

　バニラビーンズの効いたアイスと、黒蜜の絡んだ固めの寒天は舌触りも良し。
　色鮮やかなフルーツの甘酸っぱさは、黒蜜の濃厚さにアクセントを加え、最後まで飽きさせないよう工夫されている。
「ん。複雑すぎない、“昔ながらの味”っていうの？　やっぱ最近の食いもんじゃ出せねーよな」
　流行り廃りのサイクルが早まった、今だからこそ。
　残されるべきグルメ――そう直感して、流は意見をひねり出すことに。

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