喫茶Rainyの危機～ナウなヤングにバカ受けデザート編～｜リアクション

喫茶Rainyの危機～ナウなヤングにバカ受けデザート編～

　マイナーチェンジしたあんみつは、アイスをイチゴと抹茶に。
　クリームソーダも、本日はコーヒーフロートで。
　薄味にならないよう、コーヒーは濃いめに淹れて調整。
　乗せたアイスはミルクアイスで、溶けてもカフェオレ風になるよう工夫されていた。
　甘慈に勧められ、それぞれ味見……すると。
「あんみつのアイスは別々に食べても美味しいし、イチゴアイスと抹茶アイスを一緒に食べてもイケるな」
「バニラも合わせて三色アイス！　って、できてもいいよなー」
　あんみつとアイスの相性は言わずもがな。
　修とラッセルは一息に食べると、コーヒーフロートで口直し。
「甘慈さんのコーヒー、美味しいわね。ホッとする苦みっていうか」
　微笑みをこぼす遠海と打って変わり、流は小さく唸る。
「毎回、淹れる手間を考えると面倒くせーか？　甘慈のじーさん、どう思う？」
「水出しすれば大丈夫かな。一晩かけて抽出しておけば、すぐに提供できるからね」
　新しい名物になるかも……甘慈は嬉しそうに頬を緩めていた。

　最後に出された、ラッセル発案の“海のいきものソーダ”は、まるで海と氷山を合わせたような見た目。
　ラムネ色のジュレの層には、ビタミンカラーの果物と、イルカのゼリーが泳ぎ。
　氷山風の生クリームにはオレンジとブドウ、ペンギンのマシュマロを添えて、星形ピックで果物に留めていた。
　子供心をくすぐる、陽気なデザインが目を引いた。
「店長すっげー！　マジで形にしてくれるとか、俺ここ通っちゃいそう！」
「桜井のアイデアはストーリー性があるよな。それもニャンスタ映えには必要そうだ」
　感動の雄叫びをあげるラッセルの隣で、修は全体像を見てから試食。
　溶けたクリームはソーダ水と混ざり、白く泡立つソーダの中で、フルーツのブロックが踊りだした。
「ちびっ子にも人気が出るんじゃねーか？　なあ頼子」
「確かにこういうのは好きです、ちびっ子じゃありやせんが！」
　鼻息を荒くする頼子の姿に、ラッセルは思わず噴きだしてしまった。
　……全ての試食を終えて、遠海が甘慈のほうに向き直る。

「甘慈さん、どうかしら。私達のアイデアは役立ちそう？」
「ああ。どれも僕には思いつかない発想だったよ。近いうちに店で並べられるよう、練習しておかないと」
　肩を揺らして笑う甘慈に「そうだ！」と、ラッセルが手を叩く。
「ミニ黒板に『新作あります！』って宣伝しようぜ！　俺、デザインには自信あるからさ」
「いいな、飾り付けもして注目を集めよう」
　自分達の考えたデザートだ。
　多くの人に知ってもらいたいし、味わってもらいたい。

　……後日。
　ラッセル主導でデザインされた立て看板や、ニャンスタで見た画像を頼りにやってきた若者達で、
　喫茶Rainyには行列ができていたという。
　少年少女の自由な発想が、寂れていく喫茶店を救った。
　――その事実を、多くの者は知る由もない。

　Fin．

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あとがき

担当マスター：木乃
ファンレターはマスターページから！

マスターの木乃です。シナリオにご参加頂き、誠にありがとうございました！

オシャレなカフェはどこでも見かけますが、「昔ながらの喫茶店」はあまり見かけなくなりましたね。
ケチャップがほんのり甘いチキンライス。少し固めの皮で包んだオムライス。
さっくり焼き上げたハムとチーズのホットサンドなどなど。
そんなメニューが、実はよく見かけるけど、入ったことのない喫茶店にはあるかも。

それではまた、シナリオでご縁がありますように。

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