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◆
梓 智依子
の場合。
7月中旬。
4日間に渡る期末試験が終わったと、智依子はほっと息を吐き出す。
周囲を見渡すと教室にいるみんなも開放感を感じているようで、さっそく放課後どこに行くか、寄り道して甘味処で祝杯を上げよう、とか具体的に話している者たちもいて、ほほ笑みを誘う。
「ね? 智依子さんもどう?」
「ありがとう。でも、きょうは早く家に帰りたいから」
智依子の返答に、「そっか。疲れたもんね」と勝手に納得したクラスメイトに「ごめんなさい」と返して。
智依子はぱたんと鞄のふたを閉じると教室を出て行った。
本当は、まっすぐ家に帰るわけではない。試験最終日は午前中で終わりということもあって、長めにシフトを入れてもらった。大型玩具店『おもちゃのハローニャック』寝子島店でのバイトである。
数カ月前、智依子はここで店長――今では元店長だが――我妻によるパワハラ、セクハラの餌食となりかけた。それはあわやというところで同僚のナターシャによって阻止され、事なきを得たわけだが、今もあのときのことを思い出さずにいられない。
休憩室に一人でいると、ふいにあの声、においがよみがえって……。冷たい手でわしづかみにされたように胸がぎゅうっと縮まって、喉がふさがって息ができなくなって。恐ろしい無力感に身動きできず、ただ立ち尽くすだけというのが何度もあった。
これはきっと、薄まることはあっても永遠に消えない。
おそらく智依子と同じ目にあった者は、十中八九辞めるに違いない。つらい場所から遠ざかろうとするのは動物の生存本能だ。にもわらず今も辞めずに勤めているのは、娘がいるからだった。
智依子は14歳で母となった。夫はいない。いわゆるシングルマザーである。
そんな若さでは経済的独立など現実的ではないし、里子に出さずに育児と学校生活を両立させるためには大人の理解と協力が不可欠だ。その2つを与えてくれたのが寝子島に住む祖父母だった。
それは簡単ではなかったと思う。想像するしかないが。
彼らのおかげで娘と離れずにすみ、こうして学校にも通えているのだと思うと、涙が出そうになるほどありがたかった。
地主である彼らの生活から経済的な困窮は感じられなかったが、それでも何もしないではいられないと始めたバイトである。ここと同等のバイト先がすぐに見つかる保証もないし……、それに何より、無垢な子どもたちと触れ合えることが癒やしでもあった。
いつか。将来的には子どもに関わる仕事がしたいと思う。漠然としすぎていて、それがどんなものか、まだ形にはなっていないけれど。
制服に着替えて店舗へ入る。とたん、開店の間じゅう流れる店のコマーシャルソングと一緒に、楽しそうな子どもたちのはしゃぎ声があちこちから聞こえてくる。
「智依子さん。早いのね。もう試験期間終わったの?」
「はい。今日からまたよろしくお願いします」
見本のぬいぐるみを抱えた女の子が、智依子を見上げてにぱっと笑う。
「そう。じゃあさっそくだけど、これお願い」
「はい」
商品番号とカラーが書かれた紙を受け取って、女の子にばいばいと手を振りながら、智依子は在庫の置かれた倉庫棚へ向かった。
その週の日曜日は、シフトを入れていない日だった。
本当は日曜日はかき入れ時で時給もいいのだけれど、この日ばかりは仕方ない。
「ママ、早く早くー!」
今子どもたちの間で人気のアニメのリュックサックを背負った楓が、待ちきれない様子で玄関から飛び出した。そこでぴょんぴょん跳ねている。
「楓、待って。戻ってきなさい。帽子を忘れているわよ」
おそろいで買った麦わら帽子をかぶせて、ゴムをしっかりとめる。
祖母によると、智依子が連れて行くと約束した翌日からずっとこの日が来るのを心待ちにしていて、毎日「あとどれくらい? 何回お布団入るといいの?」と尋ねていたらしい。
「それまでいい子でいたら連れて行ってもらえるって……ママとお出かけするの、すごく楽しみにしていたのよね、楓ちゃん」
「うんっ!」
「すみません。それでは行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい。今日は2人、親子水入らずで楽しんでおいでなさい」
玄関まで見送りにきてくれた祖父母に向かい、ありがとうございます、と軽く頭を下げて玄関を出た。
「いい子にしていたそうね、楓」
「うん! 楓、いい子だよ!」
つないだ手をぶんぶん振って、満面の笑顔で答えると、木にとまっていた鳥がチチっと鳴く声がして。楓は歌をうたいだす。
「♪おーひーさーまーにっこにこー。とーりーさーんもにっこにこー。おーはーよーう、おーはーよーう。きょーうもいーいてんきー」
「楽しそうなお歌ね。とっても上手」
「えへへ。せんせーに教えてもらったの。ママにも教えてあげるねっ」
楓から歌を習いながら、一緒にうたって駅まで歩いた。
楓の上機嫌は、またたび市動物園でも続いていた。
ふれあい広場でうさぎやハムスターを抱っこしたり餌をあげたりして戯れたり、キリンやゾウ、猿なんかを見て回る間もずっと、はしゃいではしゃいで、走り回って、笑い続けて。いつかぱったり倒れるんじゃないか、心配になるくらいだった。
「そんなにあわてると、転んじゃうわよ?」
「キリンさんたちは逃げたりしないから」
「そんなに柵から身を乗り出しちゃだめ。危ないわ」
などと智依子が心配しても、楓は振り返って「ママのほうこそー。遅いよー」と笑うだけだ。
本当に楽しそうで――そんなにも我慢をさせていたのかと思うと、申し訳なくもあり――智依子は「ん!」と奮起する。
「よーし。じゃあ、ペンギンさんのとこまで、ママと競争!」
それを聞いて、きゃーっと楽しそうな声を上げて走る楓のすぐ後ろを走りながら、智依子も楓と一緒に心から楽しむことに決めた。
「ペンギンさんもシロクマさんも、夏のせいか少し元気ないねー」
と心配そうに柵から覗き込む楓。
水筒から冷たいジュースを飲む楓。
ソフトクリームで口元をべたべたにした楓。
そんな楓でスマホの画像フォルダをいっぱいにする。
動物園を出たあとは寝子島アウトレットへ行き、楓に新しい服を買ってあげる。そうして外へ出ると、もうすっかり夕暮れだった。
「ママー、ゆうやけきれいだねー!」
「そうね。じゃあそろそろおうちに――」
帰ろうか、と尋ねるより先に、楓が手を引っ張った。
「あそこ! あれ乗りたい!」
指さしたのは、観覧車だった。
帰りたがらないのは、帰るとこの楽しい一日が終わってしまうと気付いているからかもしれない。
向かいの座席で膝立ちして、後ろ向きになって外の景色を眺めている楓を見つめながら、智依子は思う。
「ママ、お空真っ赤ー」
「そうね」
振り返って言う楓にほほ笑んで答えると、楓は少し考えるような間をあけて、座席から下りて、今度は智依子の膝に上ってきた。
「あのね」
「なぁに?」
「ゆうやけきれいだけど、ママのほうがもっときれいよ?」
夕焼けを浴びてほほ笑む智依子を見て、子ども心ながらに感じるものがあったのだろう。
優しい子。
鼻の奥にツンとしたものを感じて目が潤む。
「……ありがと、楓」
抱き寄せ、そっと両腕で包み込む。
地上に降りるまでの間、智依子はその小さくてあたたかな、かけがえのない宝物を抱き締めていた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
寺岡志乃
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年02月15日
参加申し込みの期限
2022年02月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年02月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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