星の願いはきらめいて｜リアクション

星の願いはきらめいて

　千暁は表札を確認し、呼び鈴のボタンを押した。
「はーい！　あら、千暁さん？」
「こんにちは。こちらの弟さん、勇太君がもうすぐ退院だって聞いたものだから、お祝いをお持ちしましたの」
　千暁は、バッグの中から手作りクッキーを取り出して渡した。
「まぁ、ありがとうございます！」
　二階から戻ってきた三恵のＧＯサインを確認し、千暁は雑談に取りかかった。
　ご近所さんである千暁が家人の目を引きつけているうちに、ありあと道哉が侵入し、二階にあるボトルシップを仕上げるという作戦である。三恵は機動力を生かして警戒と情報共有を担当している。
　ありあと猫の道哉は『浩太』というプレートの掛かった部屋に入り、机の上にボトルシップを発見。
「うわー、設計図もちゃんと描いてある。親切ー」
「道具もパーツも置きっ放しだ。早速取りかかろう」
　道哉の能力、ほころびの光は、物の脆いところが光って見えるというものだ。
「嬢ちゃん、舳先の台座部分は接着が甘いようだ」
「りょうかーい！」
　道哉のアドバイスを受け、接着剤を両手で持ったアリアは静かにボトルの中に身を乗り出す。
　いくら身長２５ｃｍと言っても、ボトルは中で自由に動ける程大きくはない。そんな中での精密作業は、なかなか骨が折れる。
「次はメインマスト最上部の、物見台だ。まだつけていないパーツがある」
「うわっ入り口から遠っ。ピンセットを持たなきゃ」
　ありあはピンセットを両腕で持ち、接着剤をつけたパーツをそっとメインマストに差し出す。腕をぷるぷる震わせながらくっつけて、一息ついた所で別のパーツにぶつかりそうになる。
「うわっ……ちょっ……と……」
　震えながら身体の位置を保ち、道哉に咥えられてボトルの外に。
「はぁー、危なかったぁ。道哉ちゃん、後何カ所くらい？」
「ふむ、脆い所はもう無いな。後は残りパーツ２つで完成だ」
　道哉が言い終えた時、三恵が慌てた顔で窓から入ってきた。
「お２人とも大変ですわ！　お兄さんの浩太君が学校帰りの道を歩いているのを見ましたの。後１０分くらいで到着すると思います」
　２人はすぐさまパーツを着け終え、道哉がありあを背中に乗せて撤収。
　三恵は千暁に作戦終了を知らせたのだった。

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