ミネラルショーがやってきた！｜リアクション

ミネラルショーがやってきた！

　アンモナイト発見という手柄で、拍手喝采と共に発掘体験コーナーを後にした龍樹の目に入ったのは『７００万年の奇跡を貴方のもとへ――アンモライトのFOSSIL COLLECTER』という看板だ。
　アンモライトとはなんぞやと看板目指して歩いて行くと、謎はすぐに解けた。
「す、すげー……アンモナイトが虹色のキラキラに……宝石になっちまうなんて不思議だな」
　ひげもじゃの店主に渡された小さなかけらでさえ、見る角度を変えると緑や赤、黄、青へと色変わりする。ついさっき発掘した化石とはまるで別物だ。
「虫眼鏡もあるぞ、少年。太古の神秘をじっくりご覧あれ」
　アレコレ観察していると、隣に新しい客――稀跡がやってきた。
「お嬢さんも虫眼鏡をどうぞ。太古の神秘をゆっくりご鑑賞ください」
　稀跡は赤ちゃんの頭くらいある完全体のアンモライトを観察した後は、金色に輝く物に見入る。
「虹色の他に、金色もあるんですね。この、殻を仕切る隔壁の曲線が優雅だわ」
「さすが、お目が高い。そちらは殻全体がきれいに黄鉄鉱化している物です。内側の隅々まで、びっしり結晶が育ってるんですよ」
「こんなメタルでロボットみたいなやつ、おっちゃんが作ったんじゃねーの？」
　龍樹のちゃちゃに、店主はガハハと笑った。
「いやいや、僕にこんなデザインセンスがあればよかったんだけどね。こっちの方解石になったやつも、全部自然の造形美さ」
　所々黄色っぽい、乳白色のアンモナイトを手に取り、そっと指を滑らせる稀跡。
「それ、ペンダントになったやつがこっちにあるぜ。お姉ちゃんに似合いそうだな♪」
「ふふっ、ありがとう。ちょっとお高いから買えないけれど、お勧めは嬉しいわ」
　龍樹と稀跡のやりとりを見ていた店主が、テーブルの一角に並べてある、小さな欠片たちを指さした。
「あちらのアンモライトでしたら、どれでも1,000円でご提供しておりますよ。いかがでしょう」
「本当ですか？」
　稀跡はそちらに目を向け、ためつすがめつ眺める。
　最終的には青みの強い欠片を購入し、龍樹と店主にお辞儀をして歩いていった。見送った後の店主がニヤニヤ笑いで言う。
「君、モテるだろう？　うらやましいねぇ」
「ま、まぁなー。おっちゃんもそのうちモテるターンが来るって。頑張れよ！」
　龍樹は店主を励まし、手を振り合って別の店に向かった。