ミネラルショーがやってきた！｜リアクション

ミネラルショーがやってきた！

　寝子電スタジアムに入った嘉渡洲稀跡は、心踊らせて辺りを見回した。
　初めてミネラルショーに来ることができ、参加型イベントは申し込み済みで、色々買いたいからお金も多めに持ってきた。
　――もはや楽しみしかない。
「いざ、行きましょう！」
　意気込んで、買い物メモを取りだそうとしたのだが。
「あら？」
　昨夜、ペンで印をつけた出展リストやら大体の予算配分やら、書類をまとめたクリアファイルの中に、買い物メモが無い。
「まさか……」
　どこかに落としたのだろうか、と稀跡は青ざめた。
　昨夜うきうき、予算配分に悩みながら作った買い物メモである。
「……大事なものなのに」
　慌ててポケットとバッグを探し、辺りを見回すが、無い。先ほどの幸せから急転直下、稀跡はうちひしがれた――そんな時。
「あの。これ、あなたのものかしら」
　振り向いた稀跡に差し出されたのは、探していた買い物メモ。声の主は、黒髪に翡翠のような瞳を持つ少女だ。
「そ、そうです！　ありがとうございます！」
　買い物メモを受け取り、稀跡は深々と頭を下げた。

◆

「嘉渡洲さんも今日初めてなのね。丁寧な買い物メモだから、何回も来ている人なのと思ったわ」
「違うんです、三宅先輩。今まで行きたくても行けなかったから、つい、熱が入ってしまって」
　静謐な存在感とゴシック様式の服が相まって、アンティークドールのようにも見える少女は、三宅葉月といった。
　買い物メモを拾ってくれたお礼をするべく、偶然立ち寄ったという彼女を『かぎしっぽミネラルズ』に案内しているところなのだ。
「ようこそいらっしゃい！」
　店主の挨拶が聞こえ、２人は猫のイラストつき看板が掲げられた店に到着。
　店の細長いテーブルの上、赤や白の珊瑚は、海の中のようなイラストの背景に陳列してある。動物の姿を象った翡翠に琥珀。水晶の小さな粒――さざれ石は、透明なガラスの器に山盛りだ。
「これ、素敵ね」
　葉月が手に取ったのは、うさぎの形に彫られた翡翠だ。頭の方は緑で、尻尾の辺りは白っぽい。
「まぁ……」
　稀跡は赤珊瑚に目を留めた。手のひらサイズの置物で、ガラスの魚と一緒に枝を広げている。
「どうしよう、紫水晶もいいし……どの子も素敵だわ」
「そうね。私も少し迷うわ」
　２人はあれこれと手に取ったあげく、葉月は翡翠のうさぎと無色透明の小さな水晶を購入。稀跡は水晶さざれ石と赤珊瑚を買うことにした。
「お買い上げ、ありがとうね！　うさぎのお嬢さんには一匹買えばもう一匹プレゼント！　さざれ石のお嬢さんは、おまけしといたからね！」
　２人は笑顔の店主に頭を下げ、『かぎしっぽミネラルズ』を後にした。

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