学食百景　～今年の夏も、プレミアム！～｜リアクション

学食百景　～今年の夏も、プレミアム！～

●久しぶりの場所

「尚輝先生、学食に行きませんか？」

　御巫時子は五十嵐尚輝先生にそう声を掛けた。
　
「夏限定のメニューが気になってたんです」

　時子は楽しそうに話す。その誘いに尚輝先生は同意し、２人は放課後に向かう約束をした。普段の営業時間は１１時から１４時までだが、夏季メニューの販売期間中は放課後も営業している。
　そして放課後。食堂にはそこそこ人が集まっていた。寝子島高校の学生以外も来ているようだ。やはり限定メニューというのは魅力的に感じられるのかもしれない。

（いつもはお弁当なので久しぶりの学食です。尚輝先生は利用されてるんでしょうか？）

　時子は視線を隣にいる彼に向ける。
　尚輝先生は１日何も食べなくても平気な人なので、あまり利用しないかもしれない。時子としては、ちゃんと毎日食べてほしいところではある。
　メニューを改めて確認すると、夏季限定メニューにはかき氷パフェやクレープアイスといったデザートだけでなく、プレミアム激辛サンマ丼や寝子島丼といったガッツリ系もある。

「激辛もあるんですね。でも今日は暑いので冷たいものがいいでしょうか。尚輝先生は何にされますか？」
「僕はかき氷にします。時子さんの言う通り、今日は暑いですし」
「それなら私もかき氷にします」

　時子は抹茶のシロップを、尚輝先生はメロンのシロップを選んだ。
　注文したかき氷パフェは想像以上にすごい代物だった。大盛のかき氷に、イチゴやオレンジ、サクランボなどの各種フルーツが乗せられて、さらにゼリー、チョコレート、クッキー、生クリームにアイス、ソフトクリームなどなど、豪華な具材がこれでもかとてんこ盛りにトッピングされている。プレミアムの名を冠するだけのことはある。

「すごいですね……」

　時子は思わず呟いた。
　２人はさっそく上に乗っているフルーツなどを食べていくが、全然減っているように感じない。

「ふふっ、かき氷になかなかたどりつきませんね」
「遠い道のりになりそうです」

　尚輝先生も少しずつ食べているが、やはりかき氷が見える様子がない。けれどフルーツは瑞々しくて甘く、クリームとの相性もいい。

「抹茶もいい感じです。尚輝先生のほうはどうですか？」
「意外にさっぱりしてて食べやすいです。美味しいですね」

　ようやくかき氷が見えてきた頃、２人のお腹は結構いっぱいだった。でも形容しがたい暑さに、程よい冷たさとサクサクした食感が沁みる。少し残しておいたフルーツと一緒に、気づけば２人とも完食していた。

「ごちそうさまでした。時々学食に来るのもいいですね」
「そうですね」

　かき氷パフェの余韻を舌に感じながら、時子が話を切り出す。

「暑い日が多いですが、尚輝先生は食事しっかりとってますか？　食欲がなくても少しでも食べたほうが良いですよ」

　尚輝先生は食べるように心がけていると返事をするが、どの程度食べているかは本人もあまり覚えていないようだ。

「お弁当のおかずのリクエストはありますか？　揚げ物より煮物や焼いた一品がいいでしょうか？」
「そうですねー……」

　時子の質問に尚輝先生は少し考えながら答える。
　そんな何気ないやりとりを食後の休息に交わす。普段と違う空気のなかで話すのは少し新鮮に感じた。

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