学食百景　～今年の夏も、プレミアム！～｜リアクション

学食百景　～今年の夏も、プレミアム！～

●アルバイトと呼び込み作戦

　白真白と北条冬華は学校の廊下を歩いていると、ふとチラシが目に入った。

「学食でなんだか面白そうな事やってるみたい」

　それは学食のチラシだった。
　夏季限定メニューがいくつも紹介されているなかで、真白はある一点に目が留まった。

「バイトも募集してるんだ。報酬は……食べ放題の食券かぁ」
「せっかくだし応募してみましょうか」
「そうね。ちょっとこれも欲しいし」
「食券も興味ありますが、なんだか楽しそうですしね。終わったらクレープでも食べましょうか」

　そんなことを話しながら２人は学食に向かった。真白としてはせっかく面白そうなことをやっているのだから、企画側の立場で参加してみたいという思いもあった。
　学食に着くと、さっそく学食スタッフから仕事内容の説明を受ける。特別メニューの宣伝を兼ねた呼び込みで、話題作りのためにコスチュームを着用するとのこと。おおよその話を把握したところで、コスチュームを受け取る。その瞬間、２人の動きが固まった。

（なにこの牛柄マイクロビキニエプロン！？　しかもこのエプロン、ビニール製の半透明な奴なんだけど！？）

　真白のまっとうなツッコミが脳内を駆け巡る。冬華も同じような感想を抱いているようだ。

「これは少し大胆過ぎませんか……？」
「そうよ。流石にこんな格好で呼び込みするのは……」

　しかし、この格好で呼び込みをしなければ報酬は渡せないという。

「うっ……えーい、食券のためだよ、もう気にせずやろう！」
「えー！？」

　真白は半ばヤケになってそのビキニに着替え始める。冬華は戸惑いを隠せないが、真白も着ているのもあって、結局押しに負けて自分も着ることにした。

「真白さんが着ると、なんだか大きいせいでお牛さんみたい……」

　冬華の視線が真白の胸元に向く。しかし真白も冬華のほうを見て同じようなことを考えていた。

（それはブーメランってやつじゃない？）

　その言葉は心にしまって、学食の外に向かった。そして学食の近くを通り過ぎる人たちに向けて声を掛ける。

「学食で特別なメニューやってるよーかき氷パフェにクレープアイスー」
「牛乳なども一緒にどうぞ。産地直送ですよー」

　呼び込みを始めると、２人に視線が集まってくる。学食のアピールに注目しているというより、２人の格好に視線が集まっている気がする。いま着ている服装を考えれば当然かもしれない。

（むぅ……視線は感じるけれど見てるだけで動きは止まっているような……このままだと食券が手に入らない）

　真白はこの状況を打開する作戦が必要だと考え始める。しかしどうすればいいのだろうか。

（アピールをしないといけないわけで……アピール……）

　思考の海にだんだん沈んでいく真白の隣で、冬華は懸命に声を張っていた。ただ冬華も視線は感じていて、自分の格好を改めて確認してしまう。

(この服のせいですよねきっと……でもアルバイトの仕事はしないと……)

　なんとか学食に人を呼び込みたい。その気持ちは２人とも同じだった。ただ真白と冬華は発想が少し違った。

「冬華ちゃん、ちょっと失礼！」
「え？　ひゃん！？」

　真白が冬華の後ろから胸をわしづかみにした。

「ま、真白さん……！？」
「この私たちの立派なものでアピールするしかないよね！　これも食券の為！　冬華ちゃんも頑張って！」
「アピールっていっても、私は牛さんじゃないですよ！？」
「細かいことは気にしないで！」

　なんだかんだ文字通り、２人で体を張った呼び込みを行い、学食に人も集まって来た。努力の甲斐もあって、無事に食券を手にした。

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