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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
落とし穴の先で
星ヶ丘寮の一室。姫神 絵梨菜はドレッサーの鏡を覗き込む。頭を左右に振ってツインテールの仕上がりを確かめる。
――これって右が少し短いよね。微妙だけど。
思い切って右のリボンを解いた。ブラシで髪を整えて素早く一束に纏める。慎重な手付きとなってリボンを結び直した。
「これなら、いいよね」
眩しい笑顔は瞬時に青褪める。机上の時計は午前十時を過ぎていた。
「約束の時間に遅れちゃう！」
傍らのポーチを引っ掴む。短いスカートを翻し、部屋を飛び出していった。
ツインテールを振り乱し、絵梨菜は坂道を軽快に下る。
「間に合わないよ！」
怒鳴った瞬間、路地裏が目に留まる。近道になるが道幅は狭い。一瞬の迷いを振り払うようにして強引に突っ込んだ。
「えー！」
その一歩が突き抜けた。嫌がらせのような落とし穴にまんまと嵌ってしまうのだった。
衝撃はなかった。閉じた瞼をゆっくりと開ける。
「ここ、どこ？」
鬱蒼とした木々に覆われていた。閑静な住宅街は瞬く間に森へと変化した。
「誰かいませんかー」
適当に呼び掛けて耳を澄ます。どこからも声は返って来なかった。
「自分で動かないとダメみたいね」
一方に決めて歩き始める。のたうつような根を越えた。ぬかるんだところは避ける。時に周囲に呼び掛けた。
「反応はなしね」
苦笑いで枯れ葉を踏み締めて延々と歩く。
「それにしても」
歩きながら周囲に目を向ける。似たような光景に溜息が漏れた。
絵梨菜は立ち止まった。屈伸運動を始める。中国武術で鍛えた肉体であっても疲労は隠し切れない。
突然、風向きが変わった。
「硫黄かな？」
匂いを頼りに向かうと赤い池に突き当たる。目にした瞬間、えー、と声が漏れた。
「凄く毒々しいけど、入れるのこれっ？」
朽ちかけた看板には温泉の文字が見て取れた。
「霊界の部分が気になるけど」
首に触れると汗ばんでいた。軽く肩を回す。
――だいぶ歩いたからね。プールに行く予定だから水着もあるし、温泉に入って行こうかな。誰かきたら帰り道を聞くこともできるし。
笑顔を浮かべた絵梨菜は見つけた大木に向かう。裏に隠れるようにして手早く水着姿となった。脱いだ洋服は折り畳んで柔らかい草地に置き、下着を入れたポーチを重石として使う。
「食み出てはいないね」
銀色のマイクロビキニは極端に小さい。大事な部分をギリギリで隠していた。
「湯加減はどうかな」
素足で近付き、片方の足を入れる。一気に表情が緩んだ。両足で少し歩いて、その場に腰を下ろした。
「癒されるよぉ……」
少し出た肩に手で赤い湯を掛ける。交互に繰り返したあと、すかさず脚を摩った。
――少し張っているね。
両手を駆使して揉み解す。ついでに足の裏を親指で押した。
――あれっ？ なんだろう。なんか、おかしい。
背中に手を回すと奇妙な物が指に触れた。掴んで顔の前に持ってくるとコウモリのような黒い翼だった。
「え、なにこれ？」
変化はそれだけではなかった。立ち上がると尻尾が生えていた。自分の意思で動かすこともできる。
「これって、もしかして」
自身の腹部に注目。ハートに翼が生えたような模様が浮かび上がっていた。
――絶対、サキュバスの淫紋よ。手足も長くなってるわ。魅惑のアダルトボディが今の私なのね。
「なんか目覚めちゃいそう」
軽く腰をくねらせる。
聴力まで増しているのか。微かな音に目が反応した。大木の近くに置いたポーチと洋服を人相の悪い二人組の男が持ち去ろうとしていた。
「なにしてるのよ！ それ、私の物だよ！ 返して！」
「簡単に盗られるヤツが間抜けなんだよ」
二人組はニヤニヤしながら背を向けた。
「許さないからっ！」
「もう手遅れなんだよ」
距離にして十メートル以上。全力で走ったとしても間に合わない。
翼の力強い羽ばたきが状況を一変した。絵梨菜は凄まじい突進で距離を詰め、一人の背中に飛び蹴りを浴びせた。その勢いのまま木の幹に顔面を強かに打ち付けて仰向けに倒れた。
驚いた一人にも伸ばした爪で襲い掛かる。顔を守る両腕は刻まれてだらりと下がり、無防備となった顎に膝蹴りを入れた。くぐもった声を漏らし、真上を見上げる格好で両膝から崩れ落ちた。
「まだ、まだ！」
尻尾を鞭のように振るう。二人組はその痛みに、勘弁してくれ、と悲鳴に似た声を上げた。
「いいわ。その顔。もっと気持ちよく、してあげるね」
変身の影響なのか。絵梨菜は上気した顔で笑う。過度の興奮で背中の翼が暴れるように羽ばたき、身体が傾いだ。堪えようとしたが勢いは止まらず、湯の中に頭から突っ込んだ。
「もう、こんな時に……ここは？」
目的地のプールのようだった。姿は元に戻っていて、夢かな、の一言で友達を探し始めるのだった。
――これって右が少し短いよね。微妙だけど。
思い切って右のリボンを解いた。ブラシで髪を整えて素早く一束に纏める。慎重な手付きとなってリボンを結び直した。
「これなら、いいよね」
眩しい笑顔は瞬時に青褪める。机上の時計は午前十時を過ぎていた。
「約束の時間に遅れちゃう！」
傍らのポーチを引っ掴む。短いスカートを翻し、部屋を飛び出していった。
ツインテールを振り乱し、絵梨菜は坂道を軽快に下る。
「間に合わないよ！」
怒鳴った瞬間、路地裏が目に留まる。近道になるが道幅は狭い。一瞬の迷いを振り払うようにして強引に突っ込んだ。
「えー！」
その一歩が突き抜けた。嫌がらせのような落とし穴にまんまと嵌ってしまうのだった。
衝撃はなかった。閉じた瞼をゆっくりと開ける。
「ここ、どこ？」
鬱蒼とした木々に覆われていた。閑静な住宅街は瞬く間に森へと変化した。
「誰かいませんかー」
適当に呼び掛けて耳を澄ます。どこからも声は返って来なかった。
「自分で動かないとダメみたいね」
一方に決めて歩き始める。のたうつような根を越えた。ぬかるんだところは避ける。時に周囲に呼び掛けた。
「反応はなしね」
苦笑いで枯れ葉を踏み締めて延々と歩く。
「それにしても」
歩きながら周囲に目を向ける。似たような光景に溜息が漏れた。
絵梨菜は立ち止まった。屈伸運動を始める。中国武術で鍛えた肉体であっても疲労は隠し切れない。
突然、風向きが変わった。
「硫黄かな？」
匂いを頼りに向かうと赤い池に突き当たる。目にした瞬間、えー、と声が漏れた。
「凄く毒々しいけど、入れるのこれっ？」
朽ちかけた看板には温泉の文字が見て取れた。
「霊界の部分が気になるけど」
首に触れると汗ばんでいた。軽く肩を回す。
――だいぶ歩いたからね。プールに行く予定だから水着もあるし、温泉に入って行こうかな。誰かきたら帰り道を聞くこともできるし。
笑顔を浮かべた絵梨菜は見つけた大木に向かう。裏に隠れるようにして手早く水着姿となった。脱いだ洋服は折り畳んで柔らかい草地に置き、下着を入れたポーチを重石として使う。
「食み出てはいないね」
銀色のマイクロビキニは極端に小さい。大事な部分をギリギリで隠していた。
「湯加減はどうかな」
素足で近付き、片方の足を入れる。一気に表情が緩んだ。両足で少し歩いて、その場に腰を下ろした。
「癒されるよぉ……」
少し出た肩に手で赤い湯を掛ける。交互に繰り返したあと、すかさず脚を摩った。
――少し張っているね。
両手を駆使して揉み解す。ついでに足の裏を親指で押した。
――あれっ？ なんだろう。なんか、おかしい。
背中に手を回すと奇妙な物が指に触れた。掴んで顔の前に持ってくるとコウモリのような黒い翼だった。
「え、なにこれ？」
変化はそれだけではなかった。立ち上がると尻尾が生えていた。自分の意思で動かすこともできる。
「これって、もしかして」
自身の腹部に注目。ハートに翼が生えたような模様が浮かび上がっていた。
――絶対、サキュバスの淫紋よ。手足も長くなってるわ。魅惑のアダルトボディが今の私なのね。
「なんか目覚めちゃいそう」
軽く腰をくねらせる。
聴力まで増しているのか。微かな音に目が反応した。大木の近くに置いたポーチと洋服を人相の悪い二人組の男が持ち去ろうとしていた。
「なにしてるのよ！ それ、私の物だよ！ 返して！」
「簡単に盗られるヤツが間抜けなんだよ」
二人組はニヤニヤしながら背を向けた。
「許さないからっ！」
「もう手遅れなんだよ」
距離にして十メートル以上。全力で走ったとしても間に合わない。
翼の力強い羽ばたきが状況を一変した。絵梨菜は凄まじい突進で距離を詰め、一人の背中に飛び蹴りを浴びせた。その勢いのまま木の幹に顔面を強かに打ち付けて仰向けに倒れた。
驚いた一人にも伸ばした爪で襲い掛かる。顔を守る両腕は刻まれてだらりと下がり、無防備となった顎に膝蹴りを入れた。くぐもった声を漏らし、真上を見上げる格好で両膝から崩れ落ちた。
「まだ、まだ！」
尻尾を鞭のように振るう。二人組はその痛みに、勘弁してくれ、と悲鳴に似た声を上げた。
「いいわ。その顔。もっと気持ちよく、してあげるね」
変身の影響なのか。絵梨菜は上気した顔で笑う。過度の興奮で背中の翼が暴れるように羽ばたき、身体が傾いだ。堪えようとしたが勢いは止まらず、湯の中に頭から突っ込んだ。
「もう、こんな時に……ここは？」
目的地のプールのようだった。姿は元に戻っていて、夢かな、の一言で友達を探し始めるのだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2022年01月05日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年01月12日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2022年01月12日 11時00分
