ろっこんカレイドスコープ｜リアクション

ろっこんカレイドスコープ

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　吉住志桜里が師範代を務める道場の門前に、いかにもガラの悪そうな学生どもが詰め寄せていた。
「道場破りか？」
　道着に着替えた琴触昴の問いに、志桜里は首を横に振る。
「ただの不良ども。トラウマが足りなかったようね」
　然り、連中は何度も喧嘩に来るマタ工の不良グループだ。十数人ばかりは居るだろうか。どこから拝借してきたものか、鉄パイプだのなんだのと物騒な凶器を手に手に持ってメンチ切っている。
　もっとも、得物の物騒度合いで言えば鉄剣を携えた彼女たちも大概だった。
「なんだ。わざわざ着替えるまでもなかったんじゃないか？」
　やれやれとため息をつく昴に、吉住獅百合が退屈そうにあくびを噛み殺して同意する。
「弱っちぃし、つまんなーい」
　獅百合は一人離れて、道場の扉にもたれかかった。ザコ相手では、そこまでやる気にもならないということか。
　それが彼らの怒りに火をつけたのだろう。何と言っているんだかわからん叫びをあげて、不良たちが一斉になだれこんできた。
「そうね。さっさと片付けましょ」
　志桜里は悠然と向き直った。
　彼女のろっこんを受ければ、大抵のヤツはイモを引く。しかし懲りずに気迫充分な様子に挑んでくるところだけは、感心してやらないでもないが――。
「跳べ、昴っ」
　応じて昴が跳んだ。
　構える志桜里を見下ろし、昴は『見越活技』を発動。着地と同時、巻き添えはごめんと飛び退いた。
　志桜里が先頭の不良の襟首を左で締め上げるように掴み、右の拳を正中線ど真ん中に叩き込む。
　三秒。
　『ウチデノコブシ』が発動。『見越活技』によりその効果範囲を拡大されたろっこんは、不良たちを残らず捉える。瞬間、全員まとめてはたと消えた。
　否、志桜里の足元で蟻のように群れていた。何事かわめいているようだが、身体と一緒に声も小さくなっているので虫の鳴き声くらいにしか聞こえない。
　そこから先は一方的だった。
　見の姿勢を取っていた獅百合が、戯れに虫の頭をもぎ取る幼児のような残酷さに瞳を光らせて飛び込む。さすがにもぎ取りはしないが、縮んだ彼らの十倍はあろうかという足で踏み潰すのは充分過ぎるほどの蹂躙だ。
「あッはは、小さいって惨めだね！」
　足の下でそれこそ虫のようにぴくぴくと痙攣するだけの不良たちを見下ろし、ケラケラと笑う。
　その傍らでは、蟻の群れに踏み込んだ昴が鉄剣を振るって薙ぎ払っている。剣を振るって生じる風圧さえも彼らにとっては嵐のよう、掠っただけでひとたまりもない。
「蟻の如き蹂躙劇には相応しいな！」
　そんな彼らの様を見る昴の目には、えもいわれぬ嗜虐心の輝きがあった。容赦なく鉄剣で潰し、足や拳でさえ潰す様子はまるで甘いものでも楽しむが如く。
　そして志桜里は、わざとゆっくり歩いて彼らを追いかけた。コンパスの差を存分に活かし、彼らが必死で逃げたところに一歩踏み出して一瞬で追い立てる。
「格の違いがお分かりになって？　む・し・け・ら♡」
　そうしてたおやかな笑みと共に、すり潰し踏みにじるような摺足でもって彼らを潰した。
　あっという間に死屍累々の有様になった不良たちを元に戻すと、三人手分けして門の外へと放り捨ててやる。積み上がった不良たちの塊は、さながらゴミ捨て場の様相だった。

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