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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ろっこんカレイドスコープ
◆
二年前のある日のことだ。
椎井 莉鳥が自身にろっこんがあると気付いたのは、ささいなきっかけからだった。
「っ」
自宅でゆっくりしていたところ、指先が不意にチクリと刺すような違和感を訴えた。指先を見ても特に異変はなく、気のせいに思えた。
その矢先、鋭い感覚が指先を走り抜ける。
それは冬場にドアノブに触った時に生じる、静電気の鋭さや痛みに似た感覚だった。
しかしそれにしては、指先の間隔はやけに長いこと続くのが不思議だった。静電気ならすぐにおさまるものなのだが。
しばらく、ぼーっと指先を観察していた。電流のような感覚に意識を研ぎ澄ます。すると、
（止まった？）
始まりと同じくらい唐突に、電流のような感覚は途切れた。まるで電源を切ったように。
かと思うと、少し間を置いてまた"電流"が流れ始める。しばらくはその繰り返しで、莉鳥も困惑しっぱなしだった。何がきっかけで流れるのか、何がきっかけで途切れるのか。それがまったくわからないのだから。
そうこうするうちに、その指先の"電流"は途切れてそれっきりになった。今度はしばらく置いても再発することがなかったので、莉鳥も電流自体気のせいだったのだろうと思うことにした。
そうして莉鳥自身、そんなことがあったことさえ忘れ去りかけていたある日の帰り道。
人気の少ない通りに入ったところで、莉鳥はイヤホン越しに悲鳴を聞いた気がした。
イヤホンを外して辺りをうかがうと、耳に飛び込んでくるのは街中で聞こえるのはあまりに不可解なヒヅメの音。
訝しむ間もなく、すぐ手前の曲がり角から人影が一つ現れる。帽子を目深にかぶって顔はうつむきがち、くたびれたジャンパーを羽織り、小脇に抱えるのは出で立ちとはミスマッチな小洒落たポシェット。
そして何より目を引いて不自然なのは、その人物の足元。
馬の足だった。
見間違いか、そうでなければ映画の路上撮影現場に入り込んでしまったかと疑いたくなる絵面だが、確かにそいつの足は馬の足になっていた。
ヒヅメの音はこの人物の足音なのだろう。そしてさっきの悲鳴。
瞬時に悟る。馬への変身能力を持ったもれいびが、それを悪用して路上でひったくりをした現場に出くわしたのだ。
引ったくりの方も莉鳥に気付いたのだろう。走る勢いはそのままに、ぐっと腰を低く落とす。莉鳥をぶっとばして逃げる気まんまんだった。あわよくば、ついでに莉鳥からも引ったくろうとでも思っているのかも知れない。
引ったくりはあっという間に目の前まで迫ってくる。避けるのはとてもじゃないが間に合わない。
思わず目を閉じた莉鳥は、とっさに指先を引ったくりに向けて意識を――気を集中させていた。
瞬間、忘れかけていた鋭い感覚が指先を走る。
次に聞こえてきたのは、弾けるような物音と、かえるを捻ったようなうめき声。
何が起きたのかまったく判断ができず、目を開けるまでに五秒くらい要したと思う。なんならうめき声が吹っ飛ばされた自分の声じゃないかと一瞬心配さえしたが、身体に痛みがないのでそうではないと察せられた。
やがてゆっくりを目を明けると、まず目に入ったのはさっきの引ったくり。ぴくぴくと小刻みに痙攣しながら、地面の上を転がっていた。足が人間の素足に戻っているのは、気絶したせいだろうか。それでもポシェットを抱えたままなあたり、盗人根性たくましいというか。
「いたっ」
そんな引ったくりの有様を眺める莉鳥の指先に、再び鋭い感覚が走る。
見れば、指先からはマンガかアニメの超能力のように電気がスパークしていた。何度か爆ぜて、やがて消えていく。
どうやら指先から出た電流が、引ったくりを倒したのだと莉鳥は理解した。電流の止まった指先を見つめて呟く。
「こういうろっこんだったのね」
さてこの後はどうしたものかと考える莉鳥の視界に、杖をついて歩いてくる老婦人の姿が映った。歩く速さこそゆっくりとしているが、表情や手付きからは慌てているのがよくわかる。おそらくポシェットの持ち主なのだろう。
莉鳥は引ったくりからポシェットを取り返すと、老婦人に声をかけた。
「これ、あなたのですよね」
「まあ……！ ありがとう、助かったわぁ」
差し出されたポシェットを受け取り、老婦人が安堵の笑みを浮かべる。他に盗られたものもないようなので、あとは老婦人におまわりさんを呼んでもらって任せることにした。
あの日から、早いものでもう二年が過ぎた。
このろっこんを使う機会は……頻繁ではなかったが、それなりに使ってきたように思う。
おそらくこれからもまだ、しばしば使うことにはなるのだろう。
二年前のある日のことだ。
椎井 莉鳥が自身にろっこんがあると気付いたのは、ささいなきっかけからだった。
「っ」
自宅でゆっくりしていたところ、指先が不意にチクリと刺すような違和感を訴えた。指先を見ても特に異変はなく、気のせいに思えた。
その矢先、鋭い感覚が指先を走り抜ける。
それは冬場にドアノブに触った時に生じる、静電気の鋭さや痛みに似た感覚だった。
しかしそれにしては、指先の間隔はやけに長いこと続くのが不思議だった。静電気ならすぐにおさまるものなのだが。
しばらく、ぼーっと指先を観察していた。電流のような感覚に意識を研ぎ澄ます。すると、
（止まった？）
始まりと同じくらい唐突に、電流のような感覚は途切れた。まるで電源を切ったように。
かと思うと、少し間を置いてまた"電流"が流れ始める。しばらくはその繰り返しで、莉鳥も困惑しっぱなしだった。何がきっかけで流れるのか、何がきっかけで途切れるのか。それがまったくわからないのだから。
そうこうするうちに、その指先の"電流"は途切れてそれっきりになった。今度はしばらく置いても再発することがなかったので、莉鳥も電流自体気のせいだったのだろうと思うことにした。
そうして莉鳥自身、そんなことがあったことさえ忘れ去りかけていたある日の帰り道。
人気の少ない通りに入ったところで、莉鳥はイヤホン越しに悲鳴を聞いた気がした。
イヤホンを外して辺りをうかがうと、耳に飛び込んでくるのは街中で聞こえるのはあまりに不可解なヒヅメの音。
訝しむ間もなく、すぐ手前の曲がり角から人影が一つ現れる。帽子を目深にかぶって顔はうつむきがち、くたびれたジャンパーを羽織り、小脇に抱えるのは出で立ちとはミスマッチな小洒落たポシェット。
そして何より目を引いて不自然なのは、その人物の足元。
馬の足だった。
見間違いか、そうでなければ映画の路上撮影現場に入り込んでしまったかと疑いたくなる絵面だが、確かにそいつの足は馬の足になっていた。
ヒヅメの音はこの人物の足音なのだろう。そしてさっきの悲鳴。
瞬時に悟る。馬への変身能力を持ったもれいびが、それを悪用して路上でひったくりをした現場に出くわしたのだ。
引ったくりの方も莉鳥に気付いたのだろう。走る勢いはそのままに、ぐっと腰を低く落とす。莉鳥をぶっとばして逃げる気まんまんだった。あわよくば、ついでに莉鳥からも引ったくろうとでも思っているのかも知れない。
引ったくりはあっという間に目の前まで迫ってくる。避けるのはとてもじゃないが間に合わない。
思わず目を閉じた莉鳥は、とっさに指先を引ったくりに向けて意識を――気を集中させていた。
瞬間、忘れかけていた鋭い感覚が指先を走る。
次に聞こえてきたのは、弾けるような物音と、かえるを捻ったようなうめき声。
何が起きたのかまったく判断ができず、目を開けるまでに五秒くらい要したと思う。なんならうめき声が吹っ飛ばされた自分の声じゃないかと一瞬心配さえしたが、身体に痛みがないのでそうではないと察せられた。
やがてゆっくりを目を明けると、まず目に入ったのはさっきの引ったくり。ぴくぴくと小刻みに痙攣しながら、地面の上を転がっていた。足が人間の素足に戻っているのは、気絶したせいだろうか。それでもポシェットを抱えたままなあたり、盗人根性たくましいというか。
「いたっ」
そんな引ったくりの有様を眺める莉鳥の指先に、再び鋭い感覚が走る。
見れば、指先からはマンガかアニメの超能力のように電気がスパークしていた。何度か爆ぜて、やがて消えていく。
どうやら指先から出た電流が、引ったくりを倒したのだと莉鳥は理解した。電流の止まった指先を見つめて呟く。
「こういうろっこんだったのね」
さてこの後はどうしたものかと考える莉鳥の視界に、杖をついて歩いてくる老婦人の姿が映った。歩く速さこそゆっくりとしているが、表情や手付きからは慌てているのがよくわかる。おそらくポシェットの持ち主なのだろう。
莉鳥は引ったくりからポシェットを取り返すと、老婦人に声をかけた。
「これ、あなたのですよね」
「まあ……！ ありがとう、助かったわぁ」
差し出されたポシェットを受け取り、老婦人が安堵の笑みを浮かべる。他に盗られたものもないようなので、あとは老婦人におまわりさんを呼んでもらって任せることにした。
あの日から、早いものでもう二年が過ぎた。
このろっこんを使う機会は……頻繁ではなかったが、それなりに使ってきたように思う。
おそらくこれからもまだ、しばしば使うことにはなるのだろう。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年12月28日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年01月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2022年01月04日 11時00分
