【星幽塔】第？階層　不死概論｜リアクション

【星幽塔】第？階層　不死概論

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「二人とも、これ見てくれ」
　ラッセルの呼びかけに、八神修と美野梨が立ち止まる。
　しゃがんだ彼の足もと、廊下に古そうな血痕がこびついている。
「続いているのは……あっちか」
　修の視線が追いかけた先は丁字路になった曲がり角。覗くと、その奥の突き当りに鉄扉が見える。血痕はそこまで続いていた。
（鉄扉か……他の扉はほとんど木製だったと思うが）
　鉄扉の上部には格子つきの覗き窓が据えられているのに気づく。小動物なら入り込めるだろうか。
　そう思った時、ラッセルとちょうど目があった。同じことを考えたらしい。
「桜井、頼めるか？」
「おう」
「気をつけてね、桜井くん」
　カナリアに変身したラッセルが鉄扉へ向かう。
　美野梨が星の力で霧を発生させ、修と美野梨はその霧に身を沈めて後を追った。
　ラッセルが中から鍵を開けると、二人は滑り込むように中へ入りこむ。
　そこには人一人が簡単に収まりそうな大きさの容器がいくつも並んでいた。濁った薬液が満たされた中に、切開など諸々の処置が施された生き物がいくつも浮かんでいる。
　巨大なハサミや蛇腹状の可動部位など、個々の特徴は怪物の各部位に似ていた。
「怪物の素材かしら？」
「その可能性は高いな。ここから怪物の弱点を推測できるかもしれない」
「記録もあるかもしれないわね。……八神くん、ここにも血痕が」
　床に張り巡らされたチューブを避けながら、二人は血痕を追って部屋の奥へ。
　すると一体の白骨が、容器の間に身を隠すようにうずくまっているのを発見した。資料が一冊、ページを開いた状態で抱えられている。
　あいにく、彼ないし彼女を運んで埋葬してやれる余裕はない。だからせめて手を合わせてから、修がそっと資料を回収した。
　予想通りそれは、怪物の素材となった生き物に関する記録だった。
『彼女が何故、実験体たちの各種の毒への耐性を執拗に試験していたのか。麻酔に応用するためなどと言っていたが、それはあの怪物の耐性を高めるためだった。完全な効力を発揮する毒は、もはや見つけるのは困難だ。しかし……』

　怪物の弱点を考察する修と美野梨のやり取りの向こうで、処置された生き物の絵面に耐えきれず隅っこに居たラッセルはふと思う。
　怪物たちはキメラ的な代物で、この施設を作った人間によって改造された生き物たちの成れの果てなのだろう。
　（なら、あいつらも被害者ってことなのか……）
　だからと言ってやられてやるわけにはいかないが、少しだけ同情してしまう。