ハッピーバースデー！　６月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　６月☆

☆シリウス・グランの誕生日

　６月９日に１８歳の誕生日を迎えた綾辻綾花。
　数日後、エノコロ岬を訪れていました。
「いろいろプレゼントをいただきましたが、私もあげたい方がいます」
　綾花が目指すのは、運が良ければエノコロ岬の謎の岩に触れれば行けると言われる場所。
　岬の大岩に触れて願いました。
（『いぬねこの国』へ、王さまの誕生日を祝いに行きたいです）
　
　目を開ければ綾花は、たくさんのいぬねこが行きかう町にいました。
　そして手を見れば肉球が。
　綾花の姿は、ブラックスモーク色のにゃんこに変身していたのです。
「無事これました！　かばんもちゃんとありますね」
　持ち物を確認して安心した綾花は、お祭りをしている広場へ向かいます。
　猫の王さま、といっても今は王さまとしての権力を放棄したのですが──シリウスを探しに。
「今年もきっと、ここにいると思います」
　たくさんのねこの中でも、何度も会っているシリウスを探すのは難しくありませんでした。
　ハロウィンの時はカボチャの頭をかぶっていても見つけ出したくらいです。

　シリウスを発見した綾花は、まっしぐらに駆け寄りました。
「王さま！　じゃなくてシリウス！　会いたかったです！」
　綾花は猫の姿でシリウスにダイブ。
「ニャ──ッ！？！　その声と雰囲気はアヤカ？！」
　毎度のことながら驚くシリウス。
「癒されます……」
　綾花は相変わらずもふもふなシリウスの毛並みを堪能しながら、うっとりと幸せな表情を浮かべました。
「ストップ、ストップニャ」
（はっ、もふもふな毛並みに目的を忘れるところでした）
　我に返った綾花は、プレゼントを取り出しました。
「誕生日おめでとうございます！」
　そう言って、青いバラの花束を渡しました。
「青いバラの花言葉は『夢が叶う・神の祝福』なんですって。お部屋に飾って下さいね」
　シリウスは目を細めていいました。
「素晴らしいニャ。夢が叶うなら、ねこの国の皆も神様に祝福されるニャ。ありがとうアヤカ」
　王さまは何よりも国民の幸せを願っていたのです。
「それと……」
　さらに綾花は可愛くラッピングされた箱を渡します。
「これは……？」
　シリウスが箱を開けると、栞が入っていました。
「寝子島に咲くブルースターで作った栞です。シリウスって星の和名に青星ってあるからピッタリだなって思って。ぜひ使って下さいね」
「ありがとうニャ。アヤカはいつでも吾輩を喜ばせてくれるニャ」
　笑みを浮かべたシリウスに、喜んでもらえてよかったと綾花は微笑み返すのでした。
　そこでシリウスは、意外なことを言い出しました。
「今回は、吾輩からもプレゼントがあるニャ」
「えっ？」
　シリウスは、猫の足跡柄の包み紙でラッピングされた箱を取り出しました。
「アヤカもこの前誕生日だったニャ。お誕生日おめでとうニャ」
「これを、私に？　開けてみてもいいですか？」
「もちろんニャ」
　わくわくしながら開けてみると、箱に入っていたのは可愛らしい花のデザインの髪留めでした。
「これをつけるときは、吾輩のことを思い出してほしいニャ」
「ありがとうございます！　嬉しいです！」
　言うなり綾花はもう一度シリウスにダイブ。
　もう一度思い切り金茶の毛をもふもふしたのでした。

「今日はせっかくの祭り、存分に楽しもうニャ。お腹はすいていないかニャ？」
「嬉しくて胸がいっぱいですけど、そう言われるとお腹がすいてきた気がします」
　そして綾花とシリウスは、いい匂いが漂う屋台へと向かったのでした。
　