ハッピーバースデー！　６月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　６月☆

☆セリエール・S・ヘイグの誕生日
　
「かつてシェイクスピアも言っていた。ケーキにすべきか、パフェにするべきか……はっ、もうこんな時間ですか？」
　海外から転勤してきたスイーツ好きなイギリス人、セリエールは、街頭で甘い物の屋台に見入ってしまったおかげで仕事の取引に行くというのに少し遅刻してしまいました。
　急いで駆け込んだセリエールは、平身低頭頭を下げます。
「本当に申し訳ございません、大切なお客様をお待たせしてしまうなんて、社会人失格ですね……」
　ペラペラな日本語で誠意を込めてお詫びし、話し方や人柄でなんとか取り繕って、セリエールは無事商談を成立させたのでした。

　仕事を終えた後は、ルンルンと街歩きを楽しみます。
「変わった鳥です！」
　可愛いものが大好きなセリエールは、変わった鳥や猫をみつけるとノートとペンを取り出して、デッサンに夢中になるのでした。
　子供を見かけると、おもむろに懐からシャボン玉セットを取り出して吹いてみたり。

「おいしそうな匂いです！」
　午後、小さな焼き鳥店に入り、ランチを食べることにしました。
「夜は居酒屋になるんですか。ええと、モモ、ネギ、砂肝をください」
　メニューを見ながら頼み終えて待っていると、隣の客の注文が耳に入りました。
「ハンバーグとグラタン」
「ホワイ？　ここ焼き鳥屋ですよね？」
「ああ、裏メニューなんだよ」
「そんなものが？　詳しく教えていただけませんか！」
　セリエールは興味津々で、隣の常連客に裏メニューについて尋ねるのでした。

　かつては世界中を回る仕事をしていたものの、今は自由な会社で働くセリエール。
　趣味として海を散歩したり、絵を描くなど個性的に生きています。
　昼下がり、次の取引先までの時間調整でカフェへ。
「英国紳士たるもの午後のお茶の時間も忘れてはなりません」
　紅茶にレモンを数滴搾り落とし、スコーンを割って読書をしながら楽しむ姿はまさに英国紳士の優雅さに満ちていました。

　取引先を辞し、会社に直帰の連絡をして夕方、行きつけのケーキ店へ向かいます。
　ポイントカードを店員に見せると。
「あれ？　今日お誕生日ですね、おめでとうございます」
　その言葉に一瞬ぽかんとして、次の瞬間満面の笑みを浮かべます。
「ワァオ、今日がバースデーだったとは。自分でも忘れていたよ、アリガトネ！　いつもより豪華なケーキを頼むかな」

　ケーキを買って店を出たセリエールのつぶやきが、風に乗って流れていきました。
「この街は本当に、僕をワクワクさせてくれる」
　そのワクワクは、あるいは平和なことばかりではないのかもしれませんが。

　