ハッピーバースデー！　６月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　６月☆

☆夢宮瑠奈の誕生日

　アイドルグループ『CitrusCat's』の一員、末明せれね。
　それが女子高生夢宮瑠奈のもう一つの顔でした。
　今年は瑠奈の誕生日に合わせてバースデーライブという名のイベントをやることになりました。
（ちょっと大きな催しになってるみたいで、ドキドキです）

「私の歌を聴きに来てくれたみんな、ありがとう！」
　満員の客席に向け、せれねは呼びかけます。
（瑠奈であるあたしも、せれねとしての『私』も、たくさん人が来てくれるとうれしいです）
「この世界はこんなに緩やかで、みんなが笑いあって生きている。それはとても幸せなことなんだと、思っています」
　アイドルであるせれねは、ファンに多くを語りません。
　気持ちを伝えるのは、歌だから。
　せれね（瑠奈）は口にしない思いを込めて、歌うのです。

（これはその幸せを護るためのたたかいなんです。日常をたたかうんです。
　あたしは別に攻撃力は高くないけど、みんなのこころを護るのが役目だから、だからあたしはうたうんです）
　眩しいライトに照らされ、熱狂する観客に向け、明るく、楽しく。
　せれねは歌い、踊ります。
（闇に染まったっていい。光に身を包まれてもいい。すべてはフツウを護るため。みんなが願うフツウを、みんなの持っている普通を）
　どこまでが瑠奈で、どこまでがせれねなのか。
　混然一体となって、思いは歌になります。
（あたしのフツウは）
（私の普通は、ステージの中からみんなのこころに寄り添うことだけ）

　幕が下り、万雷の拍手と共にカーテンコール。
（きっといつか、みんながあしたにたどり着けるように。そんな風に、この誕生日を思っています）
　再び幕が上がったステージに登場し、せれねは疲れを知らないように歌いだします。

「瑠奈ちゃん、お誕生日おめでとう♪　これ、プレゼント！」
　フツウの瑠奈に戻った時。
　大好きな野々ののこが声をかけてくれました。
　ののこはニコニコとプレゼントを差し出しています。
「ありがとう！　ののちゃん」
　プレゼントを抱きしめる瑠奈の顔に浮かぶのは、ファンのためではない、一人だけのための笑顔。
（ののちゃんがあたしのために選んでくれたプレゼント、何だろう？）
　でももう開けてみる前に心は決まっているのです。
（何をもらっても、とっても嬉しい）
　ワクワクしながら包みを開けると、イルカの絵が描かれたキャンディーの缶が出てきました。
「瑠奈ちゃん、イルカ好きだよね？」
　笑顔で言うののこに、イルカ以外への気持ちも込めて瑠奈は答えたのでした。
「うん、大好き」

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