ハッピーバースデー！　６月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　６月☆

☆アシュリー・アンダーソンの誕生日

　休日、アシュリー・アンダーソンは一人でした。
「今日はアタシの誕生日、か。とは言えど、今年は面と向かって祝ってくれる人なんて…… 心当たりがないな」
　ネットを使えば親や故郷のイングランドの友に祝ってもらうことはできるでしょう。
「でも、なんかこう……いまいち違うんだ、それだと」
　ないものねだりだろうか、とは思いつつ。
「一人で祝う事になりそうだな……」
　嘆いてばかりでも仕方がありませんから、自分へのプレゼント探しにシーサイドタウンの店を巡ってみることにしました。
　アクセサリーを見たり、洋服を探したりしましたが、イマイチピンときません。
「便利グッズも……今買うのは気が引けるというか気分じゃないな」
　かといって一人でおいしい食べ物を食べたいとも思えないのでした。
「困ったもんだ」
　ついため息を漏らします。

「アシュリーさん？」
　思いがけず声をかけられ、驚いて振り返ると。
「ん？　雛鶴先生かい？」
　寝子高の情報の先生、雛鶴さゆり先生が立っていました。
「ちょうどよかったです。あなたにお礼を言いたいと思ってたの」
「えっ？　なんのこと？」
　まったく心当たりがないので、アシュリーは首をひねりました。
「そうね、立ち話も何ですし、お茶でもどうかしら？」
「それは構わないけど」
　授業で会う以外接点がないはずですが、アシュリーは狐につままれたような思いで先生についていくことにしました。

　お洒落な喫茶店に入り飲み物を注文すると、雛鶴先生は言いました。
「この前はアイドル活動研究部の助っ人をしてくれてありがとう。私、これでも顧問なんです」
「ああ……」
　そう言われてようやく腑に落ちました。
　先日行われた部活王決定戦で、部活に所属していないアシュリーはアイドル活動研究部の助っ人として戦ったのです。
　激しい戦いの中で、部員たちをかばって攻撃を受けてアシュリーは力尽き、多くの人々に感動をもたらしたのでした。
「私感動して泣けてしまいました。感謝の気持ちです、これを受け取ってもらえませんか？」
　そう言って雛鶴先生はバッグから小箱を取り出しました。
　開けると、オニキスをあしらったイヤリングが入っていました。
「えっ、この素敵なイヤリングをアタシに？」
「オニキスは魔除けの石と言われているので、きっとアシュリーさんを守ってくれるわ。遠慮なく受け取ってください」　
「あたし、今日誕生日なんだ。誕生日のプレゼントにこんないいものをもらえるなんて、超嬉しいよ、ありがとうな！」
　晴れやかな笑顔になったアシュリーに、雛鶴先生は微笑みを向けました。
「まあ、ちょうどいいお祝いになりましたね。お誕生日おめでとうございます」
　アシュリーはさっそくイヤリングをつけてみました。
「どうかな？」
「よく似合ってますよ。そうだ、お誕生日ならよかったらケーキも頼みませんか？」
「そ、それじゃ……」
　メニューを見ながら、アシュリーはすっかり憂鬱を忘れていました。

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