ハッピーバースデー！　６月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　６月☆

☆初瀬川理緒の誕生日

　６月６日は、理緒の19歳の誕生日です。
　大学に入って２ヵ月過ぎましたが、あまり実感が湧きません。
（……というか、グラドルの仕事も並行しての大学生活なので、高校の時とあまり変わってないような……？）
　授業時間が一コマ90分とかやたら長いのには閉口しましたが。
（去年の誕生日はシーサイドタウンの寝子島アウトレットで、紗月とお買い物をしたっけ）
　もっとも、自分のバースデープレゼントより恋人の佐和崎紗月の服を買う方に気を取られたのですが。
　今年の誕生日はオフなので、何しようかな、と考えていると。

（理緒ちゃんの誕生日プレゼント、何にしようかな。そういえば……）
　紗月も理緒のことを考えていました。
　３月に撮影したグラビアが先月掲載され、グラドルデビューした紗月はいきなり大ブレイク。
　さっそく仕事が入って先日理緒と共に、タイへ２泊３日の海外ロケに出掛け、ようやく落ち着いたところでした。
（そういえば理緒ちゃん、タイでの撮影の合間に「どこか静かなところでお茶でも飲んでのんびりしたいな」って言ってたっけ）
　そんなことを思い出して、そんな場所あるかな……とネットで調べてみました。
「あ、これ……」
　ステッラ・デッラ・コリーナで季節のケーキバイキングを開催中、という記事を見つけました。
「ねえ理緒ちゃん、お誕生日にステッラ・デッラ・コリーナへ行かない」
　声をかけられ、理緒は聞き返しました。
「星ヶ丘の高級ホテルよね？」
「うん、そこで季節のケーキバイキングがあるんだって。静かかどうかはともかく、優雅に過ごせそうだと思って」　
「いいね。ケーキバイキング……」
（グラドルやってると体型維持も契約内容に入ってるけど……）
　理緒はちょっと考えました。
（でも、一日だけならいいか。せっかく紗月が誘ってくれてるんだし）
「うん、行こう」
　すぐに結論は出て、笑顔で答えたのでした。

　そんなわけで予約をして、当日がやってきました。
　ポニーテールの理緒と、セミロングの紗月。
　二人ともおめかしをして、いざステッラ・デッラ・コリーナへ。
「紗月、素敵よ」
「理緒ちゃんこそ」
　お互いの姿を見て微笑み合います。
「いらっしゃいませ」
　一歩ホテルへ入ると、そこは別世界。
　優雅な空間の中足を進めて、レストランへ。
　二人はずらりと並んだケーキを見回し、皿を手に悩みます。　
「どれから食べようかな？」
「最初に食べるのは一番美味しいのがいいよね」
「あ、ルビーチョコのケーキ！　食べてみたかったんだ」
　はしゃぎながら、皿が溢れない程度に適当にケーキを取り分けて。
「理緒ちゃん、海が見えるよ」
　テーブルへ着くと、ケーキに気を取られていた理緒に紗月が窓の外を示します。
「わぁ、綺麗だね」
　二人はケーキと紅茶を味わいながら、ゆったりと優雅な時間を満喫します。
「こういうのもたまにはいいよね」

　しばらくすると、紗月が言いました。
「理緒ちゃん、お誕生日おめでとう……これからプレゼントを贈るね」
　そうして席を立った紗月が向かったのは、グランドピアノ。
　すでにホテルには話を通してありました。
　椅子に座った紗月の指が、馴染み深い曲を奏でます。
　それは二人にとって大切な曲。
　紗月にとっては原点であり、理緒との出会いのきっかけとなった曲。
　モーリス・ラヴェルの『水の戯れ』でした。

　美しい音色を全身で聞きながら理緒は感じていました。
　あの時と同じように。
　いえ、あの時よりもしっかりと。
　心を丸ごとつかまれてしまっていることを。

　このままいつまでもずっと。
（理緒ちゃんのために弾いていたい）
（紗月の魂の調べを感じていたい）
　そんな二人のひと時なのでした。

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