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スターライト・セレナーデ
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考えてみれば六年前というのは、十八になったばかりの絢からすれば人生の三分の一に相当する。
まだ私が、現在の三分の二の年齢……十二歳だったとき。
私は、世界のすべてを失った――。
「嘘でしょ。それって……!」
母が亡くなってまもなく、絢からすればまだ、悲しみにかさぶたはおろか、薄い膜すら生まれていない時期に、諒一は再婚すると言いはなった。
しかも相手はそのとき、すでに妊娠していたのだ。
中学一年ともなれば、この事実が何を意味するかくらい理解できる。
穢(きたな)い。
絢の頭に最初に浮かんだ言葉だ。
穢い。
不潔。
恥ずかしくないの?
みずからのグロテスクさを直視せず、きょうだいができるんだ、祝福してほしいという諒一の厚顔さにも絢はおぞけだった。
つづいてやってきたのは悲しみだ。
一時的な激情ではなく、深く、重く、絶望に似た悲しみだった。
死んでなお侮辱をうける母の人生を悲しみ、生きつづけ汚辱に直面させられる我が身を悲しみ、絢は自分が、光の届かぬ海底に沈んでしまったように思った。
あまりにも悲しすぎたから、私の世界から涙は消え去った。
涙のかわりに、泣くかわりに……無色透明のほほえみを覚えた。
「絢、元気だったか?」
「ええ。父さんはどう?」
「俺もそれなりにやってる」
いま、私は微笑している。
絢は自覚している。
でもそれは、色も匂いも熱すらもない偽りのほほえみだ。頬の筋肉が動いているだけのことにすぎない。
父娘は連れだって歩いた。
とくに目的があるわけではないが、シーサイド駅ビル方面にむかっている。
つくろいのような会話はすぐに途切れた。
距離は近い、けれど。
私と父のあいだには、沈黙しかない。
何をどうしたらいいのか絢はわからなかったが、それはきっと父も同じだろうと感じてもいた。
「何か食べるか?」
ぽつりと諒一が言った。彼の視線の先には、駅ビル屋上で開催中のビアガーデンのポスターが貼ってある。
特に空腹ではなかったが、
「いいよ」
と絢は返事した。
エレベーターの客は一人減り二人減りして、『R』の表示で停まったときには、残っているのは絢と父親だけになっていた。
案の定というか、月曜ゆえビアガーデンの客入りはまばらだ。週末ならもっとにぎわっているのだろうか。
「あそこにしよう」
夜景が一望できる席を諒一は示した。絢の了承を求めている口ぶりではなかった。絢としても、どうでもよかったので反対はなかった。
食事はセルフサービスだ。
「すごいなここ、チェコのピルスナーがあるんだな」
この銘柄、現地に行ったときよく呑んだよ、と諒一は自分のジョッキを置き、絢の手にウーロン茶のトールグラスを渡した。
目の前の大皿には、諒一がチョイスした料理が少しずつ盛られていた。
中華カレーなんていう変わり種があった。アボカドのディップとトルティーヤチップスの組み合わせはカラフルで目にも楽しい。一方で、地味このうえない大豆に昆布の煮物まで載っている。
「これ……?」
パリッと焼かれたハッシュドポテトもあった。どうぞ、と諒一は取り箸で絢の皿に置く。
「好物だろ?」
たくさん取ってきた、と諒一は笑った。
「ブルックリンのホテルで朝食べたやつは特にうまくて、ディナーにもオーダーしたよな」
おぼろげではあるが、父、そして存命中の母と海外に行ったときの記憶がある。夕食の席で絢がねだると、メニューになかったにもかかわらず、ウェイターは嫌な顔ひとつせず焼きたてをもってきてくれた。
覚えててくれたんだ、と言いかけたが絢の口から言葉は出なかった。
このハッシュドポテトも、父が、自身の人生を飾るエピソードのひとつとして頭に残していただけかもしれないと思ったから。
会話は盛り上がらなかった。諒一が少し質問して、絢が短く回答して、問答はそれで終わりだ。これが数回くりかえされたに過ぎない。どうやっても火のつかぬ湿気た薪のようだった。
やがて食事は自然に、無言の行へと入った。
一通り食べ終わり、諒一はビールの三杯目を、絢もウーロン茶のお代わりを口に運ぶだけとなっている。
会話がなく店がすいていることもあって、空間を埋めるのはスピーカーから流れる音楽だけだ。
ついさっきまで最近のユーロポップスがかかっていたのに、いつのまにかBGMは、昔のアイドル歌手みたいな楽曲に変わっている。しゃらしゃらしたシンセサイザーに打ち込み丸出しのドラム、それなのに、いや、それゆえに、メロディの哀調は高まり、伸びやかなヴォーカルは冴えわたる。
曲が終わった。プレイヤーの事故なのか最初からそう決められていたのか、それっきり音楽は流れなくなった。
静かだ。
光ばかりまばゆい沈黙の世界にいるように絢は感じた。
従姉と約束した『父と会う』は、こういう状況のことだっただろうか。
――ちがう。ちがうはずだ。
沈黙をふりはらうように絢は口を開いた。
「父さん……来年、私、高校を卒業するの」
「そうだな」
「それでね、将来は女優になりたい。だから、卒業したら大学の演劇科か劇団付属の養成校へ行こうと思うんだけど……」
さすがに驚いたらしい。父は問い返した。
「そうなのか」
「気持ちはゆるがない」
「……ぜひそうしなさい。自分で決めたのなら」
女優? 演劇? 食っていけるのか? などと世間の親のようなことを言うつもりは諒一にはないようだ。
「ただ、厳しい世界だ。写真とはまたちがうが、センスと実力……それに運もいる」
運ばかりはどうしようもないが、と前置きして諒一は、自分と交友のある俳優などの芸能関係者について語り、助けになりそうなアドバイスをいくつか与えた。
「いずれにせよ、舞台はもちろん、映画、ドラマ、絵画でも小説でも音楽でも、自分の好みから少々外れようと、あらゆる芸術にできるだけたくさんふれなさい。たくさん吸収するんだ。まちがいなく表現者としての糧になるから」
勢いこんで一気に話し、ジョッキの残りを父はあおった。
「もっとも……絢ならきっと、こんなこと言われるまでもなくわかっているだろうが」
そうね、ともちがう、とも絢は口にしなかった。
ただ、駅で会ったばかりのころよりはほんの少し、色みのある笑みを返しただけだ。
シーサイド駅の改札で、諒一は絢に別れを告げた。
「またいつか」
何月ごろとか一年先とか、具体的な表現を避けたのは、自分のスケジュールの見通しが立っていないからかもしれないし、絢が決めることだと考えているからかもしれない。
「ええ、また……」
駅舎全体が震えた。
「電車だな」
去りぎわ、手を振るかわりに絢は言った。
「父さん、あのときのことを忘れることはできそうにないけど……ありがとう、会ってくれて」
父は無言だった。
だけど一瞬だけ目を閉じ、こくりと小さくうなずいてから背をむけた。
――『スターライト・セレナーデ』 了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
ご参加ありがとうございました! 桂木京介です。
リアクションはほぼ時系列順にしています。週末から月曜日までの連続する数日間というイメージです。ですが構成上の都合で前後している箇所があることをご了承下さい。
寝子島ウルトラメガトロビアガーデンの登場は、拙作
『大人の時間はビアガーデン』
以来ですので劇中時間では2年、リアルタイムだとなんと7年ぶりです……!
時間の流れの速さに驚くとともに、『らっかみ!』の重ねてきた年月の長さにも思いを馳せてしまいました。あのころと現在と、変わったものもあり変わっていないものもありますが、これからも私は続けるつもりですので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
それではまた、新たなシナリオで会いましょう!
毎回書いててすみませんが、ご意見ご感想、首をながーくしてお待ちしております!!
桂木京介でした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年10月16日
参加申し込みの期限
2021年10月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年10月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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