寝子島高校・部活王決定戦｜リアクション

寝子島高校・部活王決定戦

　じわり、天文部包囲網が築かれる。
　攻撃能力の高い前衛が、事実上凜太郎一人しかいない。
　高戦力の戦士が、多勢をもって一気にたたき潰せば、あとは非力な女子ばかり。
　決めてとやらの『ほしにねがいを』を使えば――。
　その時が最後の時。
　すべてのバトルエアーの加護を失い、丸裸となった連中を、徹底的に潰せばよい。

　――ここ……。

　意を決したスピカ、凜太郎と美野梨に合図。
　次の瞬間、スピカは天に向けて祈りの声を放つ。　

「スキル発動！　＜ほしにねがいを＞！　
　効果申請、『速度上昇』！　繰り返す、効果申請、『速度上昇』！」
「なっ！？」
　一同が驚愕する。
　いかなる願いも通す、最強レベルのスキル＜ほしにねがいを＞。
　その効果、最弱クラスの「速度上昇」。

　瞬間、スピカの内奥で時間感覚が励起。クロック数上昇。全フレーム高次元積分化。超光速反応の獲得によるウルトラマルチタスク、あらゆる原因による行動遅延のキャンセル発生。
　低レベルスキル化の影響によりバトルエアーの消失は軽微。同時にCoをＫとＭに、AsをKに付与。ALのためのパワーを確認し、黒体召喚を連続発動。虚無の空間に無数の黒体が発生し、時空が軋み悲鳴を上げる。同時にＫに黒体の操作を委譲し、AL発動の準備。Ｋの＜黒体操作委譲→無効＞のムーブをＡＦＬ上で確認、ほくそ笑む。
　スピカの両手からまばゆい発光。全身全霊を込めた、恐怖の一撃。

「来る――」
「来るぞ――」
「逃げろ――」

　恐慌し、算を乱す敵軍。
　カッと目を見開いたスピカ、スキルを発動する。
「＜因果逆転＞（アルマゲスト）――！！！」

　次の瞬間、誰しも予想出来ぬことが起こった。
　前線にいた凜太郎の姿は消失。コスモパワーの能力値上昇は、敏捷度の上昇に全振り。

――うちの最大戦力は、僕じゃない。

　凜太郎のその言葉、じつはブラフ。
　その言葉を聞いた者は、すべてスピカの存在を疑う。
　すでに黒体操作とスキャンで手一杯の美野梨が、攻撃に手を回す可能性はない。なにより武器がない。
＜ほしにねがいを＞を控えたスピカが、大規模な攻撃を仕掛けてくるはず――。

　だれもが、そう考える。
　
　だが、スピカの行動は「ステータス上昇」。

　となれば、攻撃者は――。

「……」

　美野梨は、望遠鏡をクルリと回転させた。
　その周囲に黒体はない。スピカから委譲されたブラックホールは、コントロールを破棄され、すでに蒸発した。
「望遠鏡を反対に覗いてはいけません」

　説明書の最初に書かれている文言だ。
　
　さかしまのレンズの表面に、すさまじい勢いで光が集中していく。
「扁平率……屈曲率……磁場……拡散率……」
　美野梨が呟くうちにも、レンズの表面に光が盛り上がる。

　――――ソーラーレイ！
　集中した太陽光のエネルギーを集束させ、一気にぶっぱなす。
　バベルの光。インドラの炎。
　人間の罪過を焼き尽くした炎が、いまここに顕現する。
　しかも＜コスモパワー＞により攻撃力上昇。
　＜因果逆転＞により必中の性能を付与。
　予測不可能、回避不可能の神の雷が、一同に降り注ぐ。

　宇宙的ぶっこわれパワー！

「射出」

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