ゴールは落神神社｜リアクション

ゴールは落神神社

【山道を走れ！】

　寝子島神社へ円、海、翡翠がたどり着いたときであった。
　

（……あれ？）
「どうした？」
　足を止めた海に翡翠が尋ねる。
『なんでもない、だいじょうぶ』
　ちょうど、それは刀の意識が途切れたときであった。
　見れば、円も青い顔をしている。
「……少し、休憩する？」
「……ん、いや、大丈夫だよ」
　円もしっかりと返事をする。
　動いていた方が、楽だ。　
　そう思いつつ、参道商店街を抜けてからかなり早く進んでいることも実感していた。
　敵の個体数が少なく、一箇所の遭遇だけで済んだので、かなり時間的に最短で進んできたのだ。
　実質的に最短距離を走っているのはこのグループである。
　現在、寝子島シーサイドタウン方面は腐サンマさんから逃げ回っている最中であり、未だに落神神社への活路を見いだせていない。
　星ヶ丘方面は、修の起こした奇跡によりぐっと時間が短縮されたが、まだ軟体生物との遭遇の可能性から抜け出せていない……。
　だが、それらはこの三人は知らない。
　そうして、山道に足を踏み入れる……。
「……静か、だな」
『なにもきこえない』
「むぅ？　空が……」
　翡翠が周囲を見回すが、森は森のままであった。
　海が耳を澄ましても、森が発する音しか聞こえない。
　しかし、円は首をかしげている。
　暗い雲で覆われているはずの空が、かすかに紫なのに気づいたのである。
　そして、その声に釣られて三人はそれを発見してしまう。
　紫色の雲の隙間から、人面が張り付いた大きなゴーストのようなものが空を漂っている。
　それらは不気味なうなり声を上げながら、その雲の周囲を取り巻き、それ以上は何もしてこない……。
（猫村翡翠　１ｄ２０＝２）
（小山内海　１ｄ２０＝５）
（桜庭円　１ｄ２０＝１２）
「あっ、腰が抜けちゃったよ……あはっ……あははははは！」
　その光景を見て、翡翠の頭は引っかき回される。
　泣いたり笑ったり、恐慌状態へと追い込まれる。
　「ぐすっ、あたちじにだぐな゛い゛ぢに゛だぐ゛な゛い゛ぃぃぃ！」
　そして、海も海でがくりと腰を抜かしてしまう。
　先ほどの光景が……そして、終わり方までもがありありと想像できてしまう。
　自分も飲まれてしまったら……どうなるのか？
（ひぅっ……こないで……こないでぇ……）
　口から言葉は出ず、小動物のように震える……。
　そんな二人を円は、正気に戻そうとする。
「落神神社まで行かなきゃいけないのに……」
　二人の頬をはたいたりしながら、いつ終わるか分からないこの状況に円はじりじりと焦っていくのであった。

【寝子高付近にて】

　神社真下の交差点付近の民家の中、修はただじっと人が訪れるのを待っていた。
　目印に玄関にハンカチを、風で飛ばないように石で抑えてあり、人がこればこれを目印に入ってくる可能性に掛けたのだ。
　同じく、タオルなどで体を拭いて七星と舞が合流した。
「星ヶ丘方面は先ほど確認した人数だけでいいだろうか？」
「そうですね。それ以外の人は見ていません」
　そう言って、修と舞が確認しあう。
「こちらもそうですわ……他に飛ばされた方が無事だと良いのですけれども」
　七星は祈るようにつぶやく。
　春の事は分かっていない。
　また、瓢に関しては誰も把握していない……。
「とりあえず、リミットを決めて待とう」
「それがいいですね」
　そう言って、待つ時間を決める……。
　果たして、誰かたどり着くのであろうか……？
「誰か、いるのだ？！」
　真っ先に聞こえたのは真央の声であった……。