ゴールは落神神社｜リアクション

ゴールは落神神社

【悲劇の山道……そして、なにか？】

　山道を行く一行は、不意に悪寒に襲われ、周囲を見渡した。
　その瞬間であった。
　むっと、水が腐ったような臭気が漂い始めた。
　暗闇の中で、何かがうごめく気配がする。
「……走れ！　森から出て、山道を走るんだ！」
　修が慌てて叫ぶが……。
　そこにいた全員がそれを見てしまう。
『それ』は波であり、水で有り、ゲル状の生物であった。
　闇の中、腐臭をまき散らしながら、ぬめぬめと黒い光沢を放つその生物は、山全体を覆っているように地面にべっとりと張り付いている。
　その、張り付いている所々から、手ぬぐいのような手を伸ばし、そこを通る人間を絡め取りに行く……。
　まるで、この九夜山全体が、その膜状の生物に覆われているかのようだった……仮にいうのであれば水粘菌と言ったところだろうか。
　また、その伸ばしてくる手ぬぐいのような手とは別に、人間を飲み込まんと黒い津波が襲いかかる！
（雨垂ミゾレ　１ｄ２０＝９）
（稲場舞　１ｄ２０＝２）
（後木真央　１ｄ２０＝５）
（恵御納夏朝　１ｄ２０＝１７）
（忍足春　１ｄ２０＝４）
（多喜勇生　１ｄ２０＝１１）
（天満七星　１ｄ２０＝４）
（八神修　１ｄ２０＝１１）
　これは、神の啓示であったのか、それとも、運命だったのか。
「おい、なんなんだこいつ！　やめてくれえ！　ヒッ……うわぁぁぁぁぁ！」
　まず、ミゾレがその黒い手によって空中へと軽々と持ち上げられる。
　そのまま、ぎりぎりと強い力で締め上げられ、声も上げられなくなり、ヒューヒューという音がした。
　舞は、ぞくりと恐怖に襲われた。目の前には七星がいる……。
　七星もまた、襲い来る黒い波に対し、ただ震えるだけであった……。
「いやぁぁぁぁ！」
　舞は叫ぶと七星に抱きつく……。
「あ……あぁ……」
　七星は、それに揺さぶられるがまま水粘菌の波にのまれていく。
「来るな……来るな……なのだ！」
　真央もまた、突然の恐怖に襲いかかられる。
　もしも、もしもまたあれが繰り返されるのならば……？
　自分のせいで取り返しのつかないことになったら……？
「ごめんなさいなのだ……ごめんなさいなのだ……！」
「っ……くそっ！」
　そんな真央を修は無理矢理引っ張ってはしる。
　自分も怖いのだ、タダでさえ体力が無いのに、この山道で相当応えている。
　だが、ここで果たして友人の手を修は離すことが出来るのか……？
「沈着冷静さと智謀。それが俺に求められる役割だろ！」
　恐怖に耐えながら、しかし、葛藤が生まれる。
（このまま――手を離すか）
　そう、修が冷徹に判断した瞬間だった。
「助ける……だから、頑張って」
「くっそ！　くっそ！　帰る！　帰るんだ！」
　その修の葛藤は、夏朝と勇生によって中断された。
　恐怖に耐えた二人は、修を助けるように動く。
　全員は無理でも、一人なら……。
　そう考えて、たまたま近くにいたこの四人は脱出をしていく……。
「待って、ねぇ！　待ってよ！」
　そんな彼らに声を投げかける春。
　だがしかし、春の体の半分以上はすでに水粘菌の体である黒い波にのまれている。
　じりじりと体を分解される恐怖が、春に襲いかかる。
「いや……いやぁぁぁぁ！」
　こうして、修、夏朝、勇生、そして真央はここを通り抜けたのであった。