寝子島あやかし譚｜リアクション

寝子島あやかし譚

●美味しいものを食べましょう♪

「ところで、先程はほしびと、と言ったな。ここはさらに別の世界に通じておるわけか……」
　片夏阿呂江は、あやかしの存在がバレてはまずいらしいことがわかったので、人間は別世界の存在すら知らないということを理解したようだ。
「ここは、儂の知らないことが多いのじゃな。何か怖いのう。大丈夫なのか？」
　正体がバレなければ大丈夫、とアイオ・キャンドライト言うが不安だ。
「この世界を知るには、美味しいものを食べることですわ。ということで、カフェに行きましょう」
　阿呂江の不安を感じ取ったアイオは、安心させようとカフェに誘った。
　
　カフェに向かいながら、阿呂江は周辺の建物や道行く人を観察していた。
（儂の村にはないものばかりじゃのう）
　珍しいもの、初めて見るものに、ここはこういう世界なのだというのが少しわかった気がした。
　カフェに着くと、ここはどのような店なのかと尋ねる。
　飲み物やお菓子、軽食を出してくれる喫茶店という店なのだとアイオは教えてくれた。
　人間の世界にはこのような店があるのかと感心しつつ、阿呂江はカフェに入る。
　
　空いている席に着くと、2人はメニューを見て何を頼もうか話し合う。
「アイオが奢るので、アロエはしっかり人間界のスイーツを食べてくださいませ。どのケーキを頼んでも良いですわ」
「猫が奢ると言うのなら、仕方ないが付き合ってやるぞ。どれを頼んでも良いのだな？」
　と言うものの、何が良いのかわからない。
　何にしようか迷ったが、これにしてみるかとフルーツタルトとモンブランを食べてみることに。
「猫、これとこれを頼む」
「わかりましたわ。すいませーん」
　アイオは店員を呼ぶと、フルーツタルトとモンブランを2人分注文した。　

　フルーツタルトとモンブランが運ばれると、これがケーキというものか……と阿呂江は目を輝かせて見る。
「まずはこのフルーツタルトをいただこうかの」
　一口食べると、口の中に甘さが広がる。
「これは！　果物の甘さと生地の相性が素晴らしすぎる！」
　喜びながら、残りを食べる。そのスピードはまだ食べているアイオが驚くほどだった。
「次はこっちのモンブランを」
　食べるなり、これは栗じゃ！　と驚く。
「栗の味をうまく取り入れ菓子に昇華されておる！　どれも美味じゃ……圧倒的美味ッ……」
　必死に食べているので、口にクリームがついてしまった。
「うふふ、気に入ったみたいですわね。口にクリームがついたままですわ」
　紙ナプキンで阿呂江の口を拭きながら、可愛いですわねと微笑むアイオ。
「こ、こらっ何故じっと見るのだ」
「美味しそうに食べていると思いまして。評価はいかがです？」
「評価はまあまあじゃ。思ってたのよりはちょーっと良かっただけじゃっ！」
　そう言っているが、ケーキを食べている時は大喜びだったとアイオはクスクス笑う。
「そんなに笑うな、この猫がぁ！」

　カフェでスイーツを満喫した後、店に出るなりアイオは「じゃあもう1件行きますわよーっ！」と宣言。
「寝子島には、まだまだ美味しいスイーツがありますのよ」
「な、何と！　それらも食べてみたいのじゃ！　猫、次は何を食べさせてくれるのじゃ？」
　スイーツの話をしながら、2人はあれが食べたい、これが食べたいとお店巡りをすることに。
（人間共の住まう世界は、美味なるものがたくさんあるのじゃな）
　悪くない世界かもしれないと、寝子島に迷い込んだばかりの考えを少し変えた阿呂江だった。

　スイーツ巡りは思う存分楽しめたが、アイオの財布が急激に寒くなったことはいうまでもない。

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あとがき

担当マスター：カターレ
ファンレターはマスターページから！

あやかしの皆様、はじめまして。カターレです。
もれいびさん、ほしびとさんはお久しぶりです。

新種族「あやかし」の登録が始まってから、様々なあやかしさんが増えましたね。
死んだ人間や、フシギな力によって付喪神。姿や特徴は千差万別の妖怪。
様々なあやかしさんを描写することができたこと、嬉しく思います。

あやかしのご利用ガイドに関することを、何点かお伝えしておきます。

幽霊さんの中には何かを食べるということをする方もいましたが、幽霊の詳細に
視覚、臭覚、聴覚、味覚は生前通りにある
ものを食べたり飲んだりできるが、失敗して体を通り抜けてしまうこともある
とありますので、今回は、味覚はあれど完食できないといった描写となっております。ご了承ください。

霊界での生活はさまざまなあやかしが存在するため、地域や建物、集まりごとに風習も慣例も異なります。
貨幣は、古今東西さまざまな紙幣や硬貨がごちゃ混ぜで使われています。
という一文がありますように、霊界でも現実の寝子島世界同様、施設等の利用は金銭的なやりとりが生じます。
対価は硬貨でなく、それに変わるようなもので行われることもあります。
それ以外は、現実の寝子島世界とあまり変わらないようです。

ひと・もれいび・ほしびとと違い、できないことがあったりします。
できないこと、知られてはいけないことといった縛りを除けば「あやかし」は比較的自由度が高い種族ではないでしょうか。
今後、リアクションに登場してくださったあやかしさん以外の方と接する機会が増えることでしょう。
どのようなあやかしさんに出会えるか、すごく楽しみです。

はじめましてのあやかしの皆様、シナリオガイドにご参加くださりありがとうございました。
またお会いできることを楽しみにしております。では。

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