寝子島写生大会｜リアクション

寝子島写生大会

●寝子島の姿

　小山内海は『寝子島写生大会』に参加していた。
　この大会ではテーマとしてまたたび市動物園、九夜山頂上展望台、キャットロードの３つが挙げられている。

（どこで描いても面白そうだけど……）

　それぞれに魅力があると思うと、１つに絞り切れない。

（よし。３か所全部見て回ってから、ピンときたところで描こうかな。それくらいの時間はあるよね）

　そうと決まればさっそく行動開始。最初に訪れたのはまたたび市動物園。

（何度来てもどの動物もかっこいいし可愛いね）

　海はふれあい広場でうさぎと戯れたり、猛獣エリアのライオンを眺めている。動物たちは元気に各々好きなように過ごしていて、絵の題材にするには申し分ない。しかし彼女はしっくりこなかった。

（ここで描いてもいいけど……なんかピンと来ないかも。次の場所に行こうかな）

　動物園を後にすると次にキャットロードに向かう。ここには多種多様な店が並び、人々が行き交っている。駅が近いのも人が多い理由の１つかもしれない。

（にぎわってるにぎわってる。やっぱりここは人が多いね）

　ここにいると活気というものを肌で感じる。
　寝子島ではありふれた、日常的な光景。しかしここも気になることがある。

（動物園とはまた違った雰囲気でいいけど……ここで描いてたら他の人の迷惑になっちゃういそう）

　人の行き来が絶えないので、写生をするために道具類を広げるのは躊躇われた。

（そうなると、最後の場所かな）

　またたび市動物園、キャットロードと見てきて、最後に九夜山の頂上展望台にやってきた。

（ここからの景色はいいね。寝子島全体が眺められるし）

　旧市街、シーサイドタウン、星ヶ丘。
　自分の知っている場所も知らない場所もよく見える。

（ここからの景色、私のお気に入りの場所からの風景と似てるなぁ。あっちも市街地を一望できるし……うん、ここからの風景を描こう。ピンと来た）

　場所を決めて道具を用意すると、彼女は下書きを始めた。今回は水彩で描くので、絵の具や筆など色々なものが手元にある。
　建物は一つ一つをしっかりと描くように心がける。また時間経過で見える風景も変わるのでそれも気を付ける。

（こういう寝子島を一望できる風景ってやっぱり好きだな。賞は……取れたらうれしいな。取れなかったら取った人の作品を見て今後の参考にしたいな）

　彼女は風景の下書きを終えると、色を乗せていく。色が増えるたびに寝子島の風景が鮮明になる。それを海は楽しそうに眺めていた。

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