裏山サバイバルバトル～右手には水鉄砲を、左手には勝利を～｜リアクション

裏山サバイバルバトル～右手には水鉄砲を、左手には勝利を～

【激闘！　愛は学科を超えて　後編】

　一葉は山道をしばらく走ったあと、誰も自分の方を追いかけてこないのに困惑していた。
　そして、思わぬ事態に遭遇する。
「よう、一葉」
「まさか、先輩と戦うことになるなんて……」
　おそらく、愛するであろう橘敦志と遭遇したのは幸か不幸か。強がりなのか、一葉は微笑んだ。
　今回のルールは、学科別なので、一緒のチームにはなれなかったからな、と内心敦は思いながら、応えるように笑った。
　お互い、水圧式拳銃を構えて隙をうかがう。
「今日は敵同士だったな？全力で行かせてもらうぜ？」
　その敦志の言葉を聞いた瞬間、強化された身体能力で一葉は移動しながら引き金を引いた。
「お、やるな」
　しかし、左手で指を鳴らして飛んできた弾を自分の弾倉へ『ステルラ・トランスウォランス』で瞬間移動させて、撃とうとしたが。
　ガチッ！　ガチッ！
「！？　しまった」
　完全に弾が入っている状態で、さらに弾を送り込んだため、敦志の水圧式拳銃は誤作動を起してしまったのだ。
「……！　チャンスだわ」
　すかさず、距離を詰めて一撃を撃とうとする一葉。
「……すまんな一葉、戦いに容赦は禁物なんだぜ」
「えっ」
　ふっと、距離を開けてそこに破裂式水爆弾を転がした敦志。
　パンッ！　と爆発し、一葉に思いっきり水が降りかかる。冷たさに驚いて、一葉の手から敦志の足元に水圧式拳銃が転がった。
「つ、冷たっ！」
「…すまん、やりすぎた…」
びしょ濡れになっている一葉に、目のやり場に困りつつ敦志が声をかける。当然、判定のホイッスルは鳴った。
「えっと、すぐ戻るから待ってろ」
　と、敦志が指を鳴らそうとした瞬間だった。
「先輩ッ！」
焦ったような一葉の声が響く。
「お楽しみのところ悪いが、今、普通科は俺の敵だ」
　まさに、油断したところの奇襲であった。猪野秋夜が事態に目を付けて、好機をじっと待っていたのだ。
その瞬間、敦志は咄嗟に下に落ちている水圧式拳銃を後ろに振り向きざまに打った。
「当たれっ！？」
「むっ！？」
　――その瞬間、ホイッスルは二回鳴らされた。
「……一緒に退場しようか、一葉」
「う、うん」
　敦志の腕の中で、顔を赤らめる一葉。
ふと、敦志は怪訝そうに秋夜へ聞いた。
「そういえば、猪野といったか。あんたなんで敵側にいるんだ？」
「それはだな、山を歩いていたら、あの一年に巻き込まれた」
　秋夜は、手でののこのアホ毛を形作って、ため息を吐いた。
「……そ、そうか」
　それから、退場後色水をろっこんの『失意の紅眼』を使用し、再び陣地に戻ろうとしたが、そばにいた判定員の服を透明にしてしまい、大目玉を食らったとか。
「まて！　なぜ服ごと透明になる！　違う！　わざとじゃない！」
　と言いつつ、引きずられていったという。
　また、一葉は幸せそうに服が乾くまで敦志の制服に包まれていたとかなんとか。