裏山サバイバルバトル～右手には水鉄砲を、左手には勝利を～｜リアクション

裏山サバイバルバトル～右手には水鉄砲を、左手には勝利を～

【隠密は戦場の華？】
　小山内海ら率いる生徒に追われながら、邪衣士は必死に考えていた。
　サバイバル慣れをしている士は、自身の能力『天の救い』を使って視界を悪くした。
「チームを勝たせる為だと思えば少しは心が痛まずに済むかなっと……」
そう思い、必勝の策を打ったのだ。そして、射程の長いスーパーハイドロキャノン水鉄砲を使って上手く狙撃する戦法で確実に相手側を減らしていく……はずだった。
「っとここまで準備は万端だったんだが……」
　追われつつ、自身の方向音痴に救われる日が来るとは思ってもみなかったと、思う。
　必死に背後を振り返る、どうやら巻いたようだ。
「また迷子になってしまった！　仕方がない狙撃ポイントが大幅にずれるのはイササカ仕方がないとしてこのまま敵陣営とばったり遭遇だけは何としても避けたいここいらで陣取るか……」
「まるでフラグのようでございます」
「えっ！？」
　パシュッとどこからともなく水鉄砲が放たれる音がして、判定員からの士への退場のホイッスルが鳴る。
なんと、士は敵陣営にたどり着いてしまったのだ……。
　にっこりと、丁香花リラはダウジングを掲げた。『神魂ダウジング』は士を指し手大きく揺れている。
「ろっこんは、用法・用量にご注意でございます」
　携帯を操作しつつにっこりと言うリラに対し、士は、やれやれと首を振った。
　時を同じくして、ホイッスルが三度鳴らされた。
　同じく、退場となったのは山田与太郎と、高梨彩葉、三ヶ島葵の三人であった。
「お前らも、撃たれたのか？」
「悲しい……事故でした」
「あ、あはは」
「ま、起こってしまったことは仕方ないかなー」
　そう言って聞く士に対して、黒く眉毛を書き足した与太郎は目をそらす。対し、彩葉と葵はやれやれと行った感じでそれぞれどこか達観している表情を見せる。
「出会いが必ずしもいい結果をもたらすとは限らないのでございます」
　と、リラがその場は締めた。
後に、士が聞いたところによると、こういうことらしい。
　彩葉と葵は、それぞれの戦術的目的達成のため、協力体制を構築した。
　当初はそれぞれ一人で移動していたが、途中、彩葉と葵は出会った。
「敵兵の位置を知っておきたいから、出来るだけ同じチームの人と情報を交換したいねー」「あ、それなら。一緒に頑張ろうよ！　サバゲーって初めてで」
　と、いうことで協力して、相手チームを狙うことにした。
「あっしも、あっしで頑張ります」
　ちょうど、そのすぐそばに与太郎が隠れていたという不安要素を除けば、二人の作戦は万全だったと言える。
「姿勢を低くだよー」
「物陰に隠れて音を立てずに敵を打てばいい、ってことだね」
「うんうん、いけるかなー？」
　そのとき、相手チームの緑のゼッケンが視界に入った。
「あ、来たよ」
「単独みたいだねー」
　やや、遠くから見ればわかるくらいの盛り上がりを見せる胸の女子生徒だった。
「きゃあっ！」
　葵の狙撃を受けて服を赤く染めた生徒。どうやら狙撃はうまくいったようだ。
「(この戦術なら……私が大将をやるのも時間の問題みたいだねー……)」
「やったよ、この戦術はうまくいくかも！」
　鳴るホイッスルと、喜ぶ二人。しかし、その瞬間だった……。
「おっぱいに一片の悔いなし！！」
　カッ！　ドカーーーンッ！
　その光景を見て、何を思ったのか興奮しが自らのろっこん『ライジング・サン』を発動させ与太郎が大爆発した。
「ちょっと今のは、同じチームといえど許せないかなー」
「そ、そういうのはいけないことだとおもうよ！」
　なんというか、巻き込まれる二人。完全に加害者と被害者である。
　そして、二人にオシオキと言う名の水鉄砲を食らう与太郎。爆発事件からのこの時間のロスが失態だった。突然、別の方向から水鉄砲が放たれる。
「な、なんで私の位置がうわぁあああ！」
「やーらーれーたー」
「シダ発見した。撃つ……普通科の人達、破廉恥な人多い、破廉恥いけない」
　リラの指示を受けて、シダ美穂戸が他の生徒とともに与太郎、葵、彩葉を補足、撃滅した。
　かくして、この事件は収束した。隠密どころではなかったという。

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