せんせいといっしょ：相原先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：相原先生編

　ある程度進んだ所で少し下がった武道は、集団の後半あたりの位置をキープして走っていた真央からこんな質問をされた。
「はにゃ？　武道ちゃん先輩は水着で走らないのだ？」
　水泳部アピールはしないのかな？　と子猫のような目で問いかける真央に武道はちょっとだけ苦笑する。
「さすがにおにーさん、朝はそこまでテンションないなー」
　と言いながらぽりぽり頭を掻いていると、相変わらずペースを落とす事なくまゆにならぶ竜司が何やら質問していた。
「所で！　まゆ先生の好みのタイプってどんな人っすか？　おっしえってくださーいっ！」
「あたしをロリとか言わない人よっ！」
　唐突に飛ぶ質問に、まゆはきっぱりと清々しい程に言い切った。その言葉に２年１０組の生徒たちだけではなく参加者全員で「なるほど」と納得した。まゆはその愛らしい外見が相変わらずコンプレックスなようだ。
　どこか鋭い視線のまゆに竜司が「どいひーっ？！」と叫べば、あちこちでくすくすと笑いが起きる。そうしながらも、すこし後ろにいた寿美礼は真面目な顔でまゆを見ていた。
「まゆ先生はすごいなって思うよ。子どもっぽいとか気にしてるみたいだけど、全然そんなことないし、めげないしそれをカバーするぐらい元気だし……」
傍らで、絵梨菜はそれに頷きながらまゆを見た。今でも彼女は少しペースを落とし、少し下がって参加者の様子を伺っている。と、靴紐が解けたらしい昌也に気づき、教えてあげていた。
「まゆ先生は、頼れる先生だよね」
　絵梨菜と寿美礼は頷き合い、溌剌とした笑顔を向けるまゆに尊敬の眼差しを向ける。
「あたしも、先生みたいに体当たりで進んでいける人になりたいな……」
　なんてね、と言いながらも寿美礼は小さく笑う。水泳部の部長として、悩んでいる仲間を助けたいと思えど、タイミングが解らない事もある。それ故に、もっと顧問であるまゆのように行動的になれれば、と気合を入れ直す寿美礼であった。
　二人で話しているその前では、真央がこんな質問をしていた。
「まゆちゃんセンセー、質問なのだ！　まゆちゃんセンセーとまゆまゆセンセー、どっちで呼んで欲しいのだ？」
「そうねぇ、まゆちゃん先生の方がいいかな～。そっちでお願い！」
「それじゃ、まゆちゃんセンセーと呼ぶのだっ！」
　真央は楽しそうに笑って頷く。そのやりとりを横で聴きつつ、「そっちの方が似合う」と武道もちょっと納得していた。

　ペースを崩さず走る刀は、靴紐を結び終え、走り出す昌也に並んだ。その少し前ではシャドーボクシングを合間に入れながら走る円の姿が。
「どうだ、調子は」
「まあまあって所だね。円ちゃんはどう？」
　昌也が前の方を走る円に聞いてみると、彼女は満面の笑みを浮かべる。
「ボク？　もう絶好調だよーっ♪」
　円の肩の上では器用にバランスをとるにゃーくんの姿が。その姿になごみ、励まされた昌也はいつの間にか笑っていた。少しだけ体が軽くなったような気がする。
（もうちょっと、頑張ってみようかな）