せんせいといっしょ：相原先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：相原先生編

＊５時　１５分
　程よく解れた所でまゆは手を叩き、もう一度声をかけた。
「それじゃ、そろそろ出発するわよー」
　集合した所で人数を確認し、まゆはうん、と１つ頷く。そして首から下げたホイッスルを吹き、スタートを促した。

（もう、出発しちゃったんだろうなぁ……）
　お好み焼きの材料を準備しながら、望月はちらりと時計を見る。こうしながらも手は休めず、正確に包丁を動かして豚肉やらイカやらを正確に切っていく。姉の方を見ると、手際よくお好み焼きを焼き、ソースを丁寧に塗っていた。あとどのぐらい準備がいるか、と問えば「もうちょっと頼む」とお願いされる。
（こりゃ、完全に遅刻だな）
　望月はせめて何かしたいな、と心の奥で思うのだった。

＊５時　２５分
　駅から、まゆたちは順調に走っていく。
　竜司は荷物を持つ、とみんなに言ったものの、全員が自分で持つ事を選んだので自分の分だけ持って走っていた。さすが陸上部だけあってそのフォームはとても綺麗である。彼は何げにまゆの横に並んで走っていた。
　因みにその後ろはテンションが普段のモノになった武道である。彼はクラスメイト以外にも後輩がちらほら混ざっているのを見、「おにーちゃん負けないぞー☆」と爽やかな笑顔で走っていた。そんな様子に並んだ正也はあいかわらずだなぁ、と小さく苦笑し……ちらり、とちょっと後ろを走る昌也に目を向ける。
「元気がいいな、八城。でも、そのペースだと後からばてるかもしれないぞ？」
「大丈夫だよ、きりのん先輩。ホストだって体力勝負だし！」
　と、笑顔を見せる昌也だが若干息が切れかかっている。正也は「無理するなよ？」ともう一度念を押した。

（思ったより、ちょっと早いかな）
　そんな事を考えながら、刀はダッシュをする。彼は１００ｍダッシュした後、次の１００ｍは軽く走って皆を待ちながら呼吸を整える、という事を繰り返していた。その様子にまゆは「おもしろいわねぇ」と興味を持つ。
　また、少し後ろに位置した北斗は自分のペースを維持する事を念頭に置き、千代は「普段は走らないコースだから新鮮だなぁ」と目をキラキラさせて横に並ぶ。
　ボクシング部の部員である円は、ボクシングの足の動きを意識してか、爪先立ち気味に走っていた。その肩にはうまくバランスを取るにゃーくんの姿が。こんな子猫にハートを擽られる参加者もちらほらいたとか。そんな彼女は真央や絵梨菜と楽しく話しながら走っていた。
「円ちゃんは今日もにゃーくんと一緒なのだ。ホントに息が合ってるのだ～」
「そういえば、その子を肩に乗せて走っているけど、ボクシングの特訓？」
「んーと、体の軸をぶらさない走り方にする為と、にゃーくんのバランス感覚を鍛えるためかな」
　最近はシャドーボクシングにもついていけるようになった、とにゃーくんの近況を語れば、絵梨奈と真央は感心し、にゃーくんはちょっと嬉しそうにしっぽをぴん、と立てた。

　また、元よりマイペースに走ることにした修はやや後ろ目ながら集団から逸れず順調に走っている。それとなく櫻がフォローできるように前を走り、小麗と寿美礼もそのちょっと前あたりをテンポよく走っている。
参加者たちは時折ペース配分を考えて順番を入れ替わりながら、清々しい朝の空気を楽しむ様に進んでいった。