せんせいといっしょ：相原先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：相原先生編

承：朝の街を走ろう！
＊５時　５分
　――寝子島駅・ロータリーの近く

「みんな、集まってくれてありがとう！　先生、嬉しいわ！」
　まゆは揃ったメンバーの顔を見、嬉しそうに笑う。が、集まったメンバーのうち背が高めの参加者数名は思わずきょろきょろとまゆを探してしまう。それに対して「私はここよ！　目線下げて下げて！」と手をあげるという事があったが、気を取り直して話を再開する。
「今回のコースは話したとおり、旧市街を半周するような感じね。ここのマップを参考にすると……」
　と、簡単に説明を開始する。とうとう撤退できなかった昌也は、話を聞きながらぐっ、と拳を握る。
（こうなったら、まゆ先生をがっかりさせないようにがんばろう。ホストだって体力勝負ってトコ、見せてやるぜ！）
　そんなことを考えているとは知らず、傍らにいた小麗は「気合十分なのだ～」と感心する。そして、まゆより小さい彼女はきりっ、と少し上を向いてまゆの話を聞く。
「これだけは約束してね！　無理はしない事。体調を崩したらすぐに連絡してね。そして、わかってるとは思うけど走る前はちゃんと柔軟する事！」
　びしっ、と言うまゆに、一同が返事を返す。
「それじゃ、しっかり柔軟するぞー！　下手するとアキレス腱切るからなー」
　と竜司が先導し、全員でしっかりと柔軟体操をはじめるのだった。
「うわっ、柔らかいねぇ！」
「えへ～、これぐらい平気だよ～」
　武道の傍らで前屈し、ぺったりと掌を地面につける絵梨菜。そんな彼女は開脚もお手の物だったりし、参加者たちは素直にすごいなぁ、と感心する。
「へへ～♪　毎日部活でもやってるからね！　ちょっとは体が柔らかくなったかな？」
「けっこう体が柔らかいんだな、桜庭は」
「そういう御剣も柔らかい方じゃないのか？　もうちょい重心を下げるといいかも」
　円と刀、北斗がそう笑い合いながらアキレス腱を伸ばしている。北斗のアドバイスに後輩二人は素直に実践してみる。
「体がほぐれると、軽くなったような気分になるのだ」
「だよねーっ♪　早く走りたいなー！」
　真央の言葉に千代もうんうんと頷きながら背伸びをし、体をうずうずとさせる。そんな様子に寿美礼や正也も優しい笑顔になる。
「特に体が硬い、という人はいなさそうだねー」
「今回は参加者の殆どが日頃から運動をしているからな」
　柔軟が苦手な人がいればアドバイスがいるかな、とも考えたがその必要は特になさそうだ、と判断し、其々入念に体を伸ばすのだった。

　その頃、櫻はまゆにちょっと相談したい事があって話しかけていた。
「先生、ランニングでは私が殿を務めたいと思っていますが、よろしいでしょうか？」
「そうねぇ……」
　まゆが少し考えていると、今度は修が相談に訪れる。ちらりと聞こえた話を踏まえつつ彼は真面目な顔で春から体力作りをしてきた事、今回はその成果を試す為に参加した事を伝えると、まゆは真剣な顔で相槌を打つ。
「つまりは、置いていって欲しい、という事かしら？」
「はい……。ゴールでも、待っていなくていいんです」
　待っててもらうのも気が引けるし、バツが悪い、と内心で思いながら言う修。しかし、まゆは真面目な顔で言った。
「そうねぇ。無茶をしない、という約束をしてくれるなら。あと、あたしだけはゴールで待たせてもらうわよ。最後まで責任というのもあるからね、先生として」
　まゆ曰く、生徒の安全を守る、という意味では最後に点呼しておきたいらしい。修は少し考えたものの、安全上の理由ならば、と承知した。