幽霊猫とお化けの国　第二幕：人形島の鬼ごっこ｜リアクション

幽霊猫とお化けの国　第二幕：人形島の鬼ごっこ

◆
「見つけたよメモワさん！」
　1階の廊下、メモワを発見した夏朝が飛び出す。
（重くできれば少しは捕まえやすく……！）
　『重く軽く』の進化能力でねこシールを射出。当たれば即座に重く――傷つけない程度に――するつもりだったが、
「あらぁ残念。そんなんじゃ当たらないわよ～？」
　クスクスと笑いながら、踊るようにメモワは身をかわして手を叩く。
　直後、集まってきた人形の髪が夏朝の脚を捉えた。
「っ、ごめんね！」
　奪っていたハサミで髪を切り、ねこシールを射出しながらメモワを追いかける。
　ひらりひらりとかわして逃げていくメモワ。
　その右手側から、『アクセラレイトライン』で自分自身を加速させた海が飛び込む。
（つかまえ――っ！？）
　バッ、と目の前に飛び込んでくるのは大きなくまのぬいぐるみ。
　大きくてふかふかのボディを避けきれず、けれどとっさにすり抜けた。
　けれどその時には、もうメモワの姿は左の角へと消えていくところだった。
「ねえ、メモワ」
　悠々と逃げるメモワに声をかけたのは、神無だった。捕まえようとするのではなく、ただただ静かに問いかける。
「メモは読んでくれた？」
　はぁ？　と顔を歪ませるメモワ。なにそれと一笑に付す彼女だったが、しかし一瞬その瞳が揺れたのを神無は見逃さない。
「本当に知らないの？」
「知らないって言ってるでしょぉ！？」
　激昂してその場を去っていくメモワ。神無とは反対側、2階への階段に、居間へと続く扉のある廊下へと進み――
「てやーっ！」
　廊下の奥側から小枝が飛びかかっ、
「うえっ！？」
　アンティーク調の人形たちが小枝の服の裾を後ろから引っぱっていた。
　慌てる小枝を尻目に、居間の方へと向かうメモワ。しかし居間からは幸次が飛び出し、その肩にのった花遊が多段式ロケットよろしく飛びかかる。
　やはりロケットよろしくハサミを持った人形が花遊とメモワの間を遮り、その隙にメモワは2階へ。
　上がるなり廊下から襲いかかるアリサを悪態混じりに、廊下の床をすり抜けて飛び出すクリストファーをかわし――。

（そろそろですね）
　『死音』で音を消してステルスできることから、部屋への侵入役を担当していた紫苑。
　細く開けておいた扉から聞こえてくる鬼ごっこの音に、扉を思い切り開けて――『死音』を解除した。
　作戦のためにクリストファーとサキリから借りたカトラスを打ち合わせる。

「――んなっ」
　部屋から響いた剣戟音に、2階へと追い込まれたメモワは敏感に反応した。
　鬼ごっこに興じていた時よりもよほど素早く廊下を駆け抜け、部屋に飛び込む。
　中にいるのは紫苑だけ。その彼女もカトラスを握ってこそいるものの、部屋の中のものを壊したといったことはもちろんなく。
　そのことに安堵したのか、メモワの動きが明確に鈍った。
　――瞬間、背後に赤光が走る。
　『斬空赤刃』で跳んだサキリが背後から手を、
「っ！？」
　メモワが身を翻す。サキリが再び跳んで回り込む。
　何度も転移を繰り返し、しかしメモワはそれをかわし続ける。
　やがてサキリが転移を止める。それを限界のサインと見たのかほくそ笑むメモワに、しかしサキリはニヤリと笑った。
「これで王手詰み――いや、チェックメイトと言った方が様になるかな？」
「何ですってぇ？　負け惜しみは――」
　メモワの背後、床をすり抜けて現れた夏朝の姿があった。
　気づいて後ずさりかけ、しかしサキリのことを思い出して横飛に逃げようとするメモワ。
　そこへ海が『アクセラレイトライン』を発動、夏朝の身体を加速させる。
　次の瞬間、メモワの身体は夏朝に優しく捕まえられていた。
　ねこシールを貼り付けて、『重く軽く』。半ば尻もちをつくような格好になりながら、重くなったメモワを床の上で抱きしめる。

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