月が照らす夜空を、一隻の幽霊船――
『クイーン・ラグドール号』が進んでいる。
その甲板の上、舵輪のすぐ近くで幽霊猫、
クリストファーが空を見上げていた。そのヒゲが不意にピンと張り詰めたようになり、微かに震えた。
クリストファーが、眼下の海に視線を向ける。
「なるほど、あれか」
「王子様、何かあったの?」
外の空気を吸おうと甲板にあがってきた
春山 小枝が、寝ぼけ眼をこすりこすり問いかける。ゴーストになっても、眠いものは眠いようだ。
「ああ、強いゴーストパワーを感じ取ってな」
小枝がクリストファーの視線を追うと、孤島がぽつんと海の上に浮かんでいた。ほとんどが森に覆われていて、欠けた月のように開けたところに2階建ての
洋館が一つ建っているのが見える。
「皆を呼んできてもらえるか。あの島へ立ち寄ってみようと思う」
◆
孤島の上空にラグドール号を停め、皆は屋敷へと向かった。
クリストファーが扉を叩こうとすると、その前に扉の方がひとりでに開いた。
その向こうには、真っ暗な玄関が口を開けていた。
「えっ、ちょっ、わぁっ!?」
直後その場の全員が、見えない何かに屋敷の中へと引っ張られた。続いて扉がバタンと閉まる。
当然のごとく扉は開かない。しかも近くに窓がないのか、玄関には月光さえもささずに真っ暗だ。
「どうしようクリストファーさん!?」
「慌てることはない。相手は強力なゴースト、このくらいや予想の内だ。……はっ!」
クリストファーと一緒になって小枝が視線を上げると、月光の向こうから小さな影がふわふわと飛んでくるが見えた。
フリルたっぷりの洋服に包まれた、可愛らしい西洋人形だ。
「珍しいわね~、お客様なんて。わたくしはこの館の主の
メモワ。一体なんの御用かしら~?」
「我輩はお化けの国『ゴーストリア』の王子、幽霊猫のクリストファー。故あって共にゴーストリアへ向かってくれるゴーストを探している」
「あのね、王子様の国は大変なことになってて、それをなんとかするのに強いゴーストさんの力が必要なの。それで――」
「いやよ」
小枝が言い切らないうちに、メモワはきっぱりと言い放つ。不機嫌そうに顔をそむけて、
「さんざん呪いだとか好き放題言っておいて、いまさらそんなこと言われてもねえ」
「そなたの心中はお察しする。だが我輩たちには一人でも多くの仲間が必要なのだ」
そんなクリストファーの言葉に、「じゃあ」とメモワは言う。
「鬼ごっこしましょ? 夜明けまでにでわたくしを捕まえることができたら、ついていってあげる」
ただし、とメモワは口の端を吊り上げた。
暗闇の向こうに、いくつもの影が浮かび上がる。それは
人形だ。無数の人形が、小枝やクリストファーたちを見つめていた。
「捕まえられたら、だけどね~?」
直後、一斉に襲いかかってくる人形たち。髪が伸び、手にしたハサミや包丁がきらめき、ケタケタと気味の悪い笑いが響きわたる。
自身も笑い声をあげながら、メモワとは館の奥へと消えていった。
この人形たちを切り抜けがらメモワを捕まえる。考えるだけでも大変そうだが、やるしかないようだ。
「ぜったい捕まえてみせるからねぇ!」
お久しぶりです、風雅です。
春山 小枝さん、ガイドにご登場いただきましてありがとうございました。
ラグドール号が出航してリアルタイムではもう一年以上、ようやくのシリーズ続編のお届けとなります。
たいへん長らくおまたせしました……!
前回シナリオにご参加頂いた方はもちろん、今回が初めてという方もお気軽にご参加ください!
「今回までの間に、いつの間にか船に乗っていた」「実は前回から乗ってたよ」といったアクションももちろん大歓迎です!
概要
星ヶ丘地区を出航した『クイーン・ラグドール号』が着いたのは、小さな孤島でした。
孤島には小さな洋館が一つ建っており、今回ラグドール号はその洋館から発せられるゴーストパワーに引き寄せられたようでした。
パワーを発する強力なゴーストを仲間にすべく洋館に向かったクリストファーと皆さんですが、そこに居たのはゴースト化した大量の人形たちでした。
夜明けまでに人形のリーダー"メモワ"を捕まえることができれば、彼らを仲間にすることが可能です。
人形たちの妨害を切り抜けながら、メモワを捕まえることはできるでしょうか!?
今回の敵はゴーストドール。
その名の通りゴースト化した人形たちで、西洋人形から日本人形、動物のぬいぐるみにソフビ人形と様々な人形が存在しています。
メモワを探す皆さんを様々な手段で攻撃してきます。
・トラップ
・家具や食器を飛ばして攻撃
・ハサミや包丁を持って襲いかかってくる
・ゴーストパワーで髪を伸ばして攻撃
・幻覚、幻聴
あくまで人形のため物理的なパワーは大したことがなく、振り払ったりは簡単にできるようです。
なお彼らは洋館から出ようとはしないため、ラグドール号に危害が及ぶことはありません。
本シリーズの特殊ルール
本シリーズでは、幽霊船の影響によって参加者の皆さんはゴーストとなっています。
ゴーストには以下の特徴があります。
<ゴーストボディの特徴>
・空を飛べる
・物体をすり抜けられる
・生身の人間や生物に憑依できる
・任意に姿を消したり出現したりすることができる
・夜になるにつれて力が増し、昼になると力が弱まる
・ろっこんも使用可能(上記の特徴に似た能力の場合、より強力になる)
・霊体に対しても「物理的に干渉するろっこん」が通用する状態になる
NPCについて
・クリストファー
お化けの国『ゴーストリア』から来た、幽霊船『クイーン・ラグドール号』を駆る幽霊猫。
メモワを捕まえるために奔走します。
主目的がゴーストドールたちを仲間にすることだからか、最低限の反撃以外では攻撃しないつもりのようです。
・メモワ
人形屋敷に眠るゴーストドールたちのリーダー。
見た目はフリルたっぷりの洋服を着せられた西洋人形ですが、非常に強力なゴーストです。
いわゆる不幸を呼ぶ人形の類であり、歴代の持ち主たちの恨みを吸収したことでゴースト化しました。
ゴーストパワーによって周囲の物体を操る、髪を伸ばして拘束するといった攻撃をしかけてきます。
口ぶりからすると、呪いの人形扱いされてきたことに思うところがあるようで……?
その他、登録済みのNPCなら、特定のマスターが扱うキャラクターを除き、基本的に誰でも登場可能です。
また、Xキャラクターも登場可能です。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いてもらえれば大丈夫です。
NPCやXキャラクターも、ゴーストになってしまっているかもしれません。
いっしょに冒険を楽しんでください。