勿忘草奇譚｜リアクション

勿忘草奇譚

　図書館の終わる時間になり、男性とことこは外に出る。
　そこには、鴻上彰尋、八神修、神野美野梨の他に、館長の森本明乃、警察官の水槻清恋、先ほど会った水上桜と三条神無の姿もあった。

　全員、男性が過去に帰れるのか心配してくれていたのだ。

「まだ、戻れないんですね……」
　桜が心配そうに男性に声をかける。

「もう一度落神神社に行ってみるのはどうかしら？」
　ねこったーで噂になっていた場所が、落神神社だったことを思い出した美野梨がそう提案した。

　一行が神社へと着くと、彰尋が男性に声をかける。
「どうですか？　なにか、過去に戻れそうな感じありますか？」

「……さて、どうかな」
　そう答えた男性の口元には笑みが浮かんでいた。

「私は、自分がなぜ生きていなければいけないのか、それが全然わからなかったんだ」
　男性は空を見上げ、呟いた。

「『人は人に影響を与えることも、影響を受けることもできない』そう思っていた」
　男性は全員を見渡し、言葉を続ける。
「しかし、それは必ずしもそうではないことを知ったよ。私は、たくさんの良い友と出会うことができた。そしてそれは、今の私に必要なことだったのかもしれない」

「あぁ、そうだお嬢さん。これを返しておくよ」
　男性は美野梨に、先ほど借りたペンと紙の切れ端を渡した。

「生きる意味が分かった気がするよ。友たちよ、またどこかで会おう」
　そう言って彼はふっと笑った。

　それを見て、そこにいた全員が笑顔になったが、彼の姿はもうなかった。
　
「グッド・バイ……か」
　彰尋が小さく呟いた。

　美野梨の持つ紙の切れ端には、『太宰　治』と書いてあり、風に吹かれてゆらゆらと揺れていた。

　全員が星の輝く空を見上げる中、彼らの足元にはピンクと白のワスレナグサが綺麗に咲き誇っていた。

　その後、彼らは再会することとなる。

　たくさんの「本」の中で。

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あとがき

担当マスター：ぬも
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初シナリオということでドキドキでしたが、８人もの方にご参加いただき、とても嬉しかったです。

１人１人丁寧にアクションが書かれていたので、キャラの特徴などが分かりやすく、執筆しているときも楽しかったです。

この話を読んで、皆様にも少しでも楽しんでいただければ幸いです。

『過去から来た男性』の正体に気づいていた方も、そうでない方も、納得のいく最期になっていたでしょうか？

初シナリオにご参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。

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