【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト｜リアクション

【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト

●星ヶ丘寮～シンデレラパーティ・その７

「部屋と部屋を繋ぐ『小道』ってなに……？　掃除洗濯は基本メイドさん任せ……？　バルコニーでアールグレイを飲みながらの高校生活、って……」
　恵御納夏朝は、昨年星ヶ丘寮のパーティに参加した恵御納夏夜に案内されて、星ヶ丘寮のあちらこちらを興味津々に見て回った。見れば見るほど、優雅すぎて眩暈がする。
　そうこうするうちパーティ会場にたどり着いた朝と夜の双子は、立食を楽しみ、ふたりでダンス。
「よかったら撮影いたしましょうか？」
　記録用のカメラを持った檜扇舞華に声を掛けられ、夏夜は自分のデジカメで踊る様子を撮ってもらった。
「どうぞ。上手く撮れているといいのですが……ご確認くださいませ」
　夏夜は返してもらったデジカメのプレビューボタンを押した。夏朝がそれを覗き込む。
　表示された写真を見て、ふたりは同時に息を呑んだ。
　ふたりがいっしょに映っている。
　手と手を取り合って踊っている。
　去年の今ごろは撮り得なかった写真がそこにある。
　その事実に、思いがけず感激したのだ。
　こんな日を夢見ていたのだ。ずっと。
「こういうパーティも楽しいね」
「ふたりで楽しめてることに、感謝……」

「まあ、とっても素敵なおふたり」
　弾けるような声に振り返る。
　そこにはエレガントなピンク色のドレスを纏った花咲夢乃がいた。
「私、こういう者です」
　彼女は颯爽とニャインIDとアイドル活動研究部の肩書が入った名刺を差し出す。
　ちょっと怪しい。だけど可愛い。
「花咲さん……１年生……？」
「アイドル活動研究部……？」
「ええ。私、寝子島にはアイドルがたくさんいると聞いて寝子高を選んだんです。今はアイドル活動研究部に所属して、衣装や音響、照明の担当をしていますわ」
　アイドルになってみたい！　アイドルを応援したい！
　そんな願いをかなえる部を、と今年新設の部として承認されたアイドル活動研究部。
　ちなみに部長は、猫鳴館で肉まんをつくり温泉で歌った喜矢武あいおである。
　夢乃はあいおとともに活動するメンバーで、自身がアイドルになりたいというよりは、アイドルが好きだから応援したり裏方としてサポートしたいという夢を持っている。夢乃本人もアイドルくらい可愛いのでいつかステージに上がってしまうこともあるかもしれないが、今のところはひとまず交友関係を広げたくこうして名刺を渡していろいろな方とコミュニケーションを図っている次第だ。
「お姉さま方もお揃いのドレスで素敵です。まるでアイドルみたいですわ」
「そんなこと言われたの、はじめてかも……」
「ドレス、あまり着ないから……似合ってるなら嬉しいよ」
「うふふ。朝焼け色と宵闇色で対になっているのですね。とてもお似合いです」
　双子デュオアイドルとして売り出したら人気が出そう、なんて妄想が広がってしまう。
　いかにもアイドル然ときゃぴきゃぴしていないところが、却って魅力になりそうな気がする。
「もしもアイドル活動研究部にご興味がありましたら、いつでもお声かけくださいね」

　そういって、ひらりと手を振り他の場所へ移動する夢乃。
　桃色の蝶のように会場内を舞う彼女を男子たちが放っておくはずがない。
　男子に礼儀正しくダンスを申し込まれた夢乃は、礼儀にのっとってそれを受けた。
　東京生まれでお嬢様な夢乃は、社交ダンスについてもそれなりに仕込まれていた。
　相手の彼も似たようなものなのか、軽やかなステップで踊る。
　曲はヨハン・シュトラウス2世作曲の荘厳なワルツ。
　夢乃はうっとりと思う。
「ずっとこんな時間が続いてほしいですわ」