四月の蒼青（あお）い空の半分欠けた月を見て彼女は笑ってる。｜リアクション

四月の蒼青（あお）い空の半分欠けた月を見て彼女は笑ってる。

　シャワーからベッドまでは、ほとんど一瞬といっていいほどの距離しかなかった。
　一糸まとわぬ紗月の躰を横たえると、理緒は彼女の、これまで一度も目にしたことのない部分に視線を移す。当然のことながら、じっくりと見るのははじめてだ。
「……理緒ちゃん……恥ずかしいよ」
「知ってる」
　恥ずかしがるときの紗月ってば本当にかわいいんだから！
　本当に。
　理緒は短く息を吸った。心臓が爆発しそうだった。
　しちゃうんだ。
　とうとう、あたし。紗月と。
　待ち望んでいたのに、いざとなると……怖いかもしれない。
　やりかたなんて知らないし、うまくできるという自信もない。でもあたしがリードしなくちゃと、責任のようなものを理緒は感じている。
　理緒ちゃんに任せれば大丈夫――と紗月は思い目を閉じた。
　心臓は爆発しそうだけど……いや、もう二三度爆発してしまっているかもしれないけれど。でもこの時間の訪れは予期していたし、それが今日であることも受け入れる考えだ。恐れがないとは言わないが、不安はなにひとつなかった。
「じゃあいくけど……えーと、大丈夫？」
　我ながらマヌケな発言だと理緒は思った。といっても、今さらノーと言われてもキャンセルできる自信はないのだけれど。
　もちろん紗月も同じ気持ちだ。
「……うん……お願い」
　震える声で、紗月は両腕を広げた。
「来て」
　理緒ちゃんが乗ってくる。
　私の上に。
　やわらかな理緒の体温を感じた。
　理緒の重みも感じた。髪の香りも。
　五感が、理緒の匂いと味で満たされる。
「理緒ちゃん……これで私たち、何もかも一緒になったよ」
　
　よくポップスの歌詞に出てくる『一晩中愛し合う』という表現が、けっして誇張でも大仰でもないことをふたりは知った。