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四月の蒼青(あお)い空の半分欠けた月を見て彼女は笑ってる。
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根積と話していた女性が陽太の受付をしてくれた。すっとした眼差しをしていて姿勢がいい。猫のイラストをあしらったエプロンを巻いている。胸の名札には『店長:
鈴木 冱子
』とあった。
冱子ってなんて読むんだろう? 『さえこ』でいいのかな? それとも『しょうこ』?
店は保護猫カフェつまり、保健所に保護されたり虐待の犠牲になっていた猫たちの居場所ということだ。客は普通の猫カフェ同様にくつろぐ場所として利用するのが基本だが、親しくなった猫の引き取り手になることもできる。
店内に案内されるなり陽太の顔は笑み崩れた。
「わー♪ 猫カフェ、カワイイ猫があちこちにいるぅ」
ふわっとした香りがする。猫の毛の匂いだ。丸まって眠っている猫、音を立てず歩いている猫、キャットタワーで休憩している猫、三毛猫もぶち猫も長毛種もいた。なんとすてきなにゃんこ空間だろう。
あの猫もこの猫もカワイイなぁ……顔がゆるんじゃうなぁ。
あぁ、でも今は根積さんと話をしないとだから。
さっそく足元に寄ってきた人なつっこい茶トラさんをそっと撫でてから、陽太は根積の近くまで行って声をかけた。
「根積さん、こんにちは。お久しぶりです」
ソファに横たわり、こんこんと眠るキジトラ猫がいた。その背に手を乗せていた根積が顔を上げる。
「坊っちゃん……いえ、呉井陽太さん!」
お久しぶりです、意外なところでお目にかかりますねえ、とよどみなく根積は言った。根積さんがオレのこと覚えてなかったらどーしよ、と危惧していた陽太は、ほっと胸をなでおろす。
陽太は根積の向かいに座った。
「呉井さんはよくおいでになるんですか? こちらのお店」
「いえ、オレははじめてです。根積さんは?」
「私もなんですよ。こんなところに猫カフェがあるなんて思ってもみませんでしたねえ」
「根積さんも猫好きなんですね」
「はい!」
声が大きかったのかキジトラの片耳がぴく、と動いた。けれども根積が「ああごめんなさいねー」と優しく声をかけると、猫はまた眠りの世界に戻っていったようだ。お腹が呼吸にあわせて動いている。
「私ね、名前も顔もネズミっぽいのに大好きなんですよ、猫ちゃんが。変でしょう?」
そんなことはと言いかける陽太をさえぎって続ける。
「私、田舎育ちなんで子どものころは本当、まわりにいーっぱい野良猫さんがいましてね。いろんな毛並みの猫ちゃんが。どこにもかしこにも。それで私、人間の友達が少なかったものですから、いつも猫ちゃんたちにこんな風に相手になってもらっていたものです。人間なのにこっそり猫の集会に混ぜてもらったこともあるんですよ。黙って仲間に入れてくれましてね。あれは嬉しかったなぁ……」
話し好きの根積らしく、語り出すと止まらないようだ。彼も気づいたらしく、いけませんねと頭をかいた。
「あ……すいません。つい止まらなくなってしまいました」
「いえいえ、猫好きは同じですから。気持ちがわかるだけにオレも嬉しくなってます。気にせず話してくださいよぅ」
なんだか賑やかだなと思ったのか一匹、好奇心の強そうな白猫がひこひこと歩いてきた。若猫だ。陽太を一度しっかりと見てから、ひょいと隣に飛び上がる。
陽太は白猫に手を伸ばした。猫は、鼻を近づけて匂いをかいだ。
「ぶしつけな質問かもしれませんけど……根積さん、今、どうされてます?」
陽太の手は猫の腰のあたりをなでている。ビロードみたいな手ざわりだった。
「入っていた施設、その後も細々と続いてはいたんですがねえ」
根積は溜息をついた。
「やっぱり資金があぶなくなってきて、だんだんケアもいきとどかなくなってしまい……それで私、また具合が悪くなってきたんですよ。だから出ました」
「具合が、っていうのは」
「『あいつ』がね。また出てきたんですよ」
もし大丈夫になって施設にいる必要がなくなったのなら、そのほうがいいんだけど――という陽太のかすかな期待はすでに砕けている。
陽太にはわかっている。『あいつ』とは根積のなかにいるもうひとりの根積だ。貧相な中年男とは正反対の人格、筋骨隆々とした怪物である。
怪物は名を
マウス
という。
まさしくジキル博士に対するハイド氏だ。助走なしで数メートルの高さに跳躍し、素手で鉄の棒をねじ曲げ拳で岩を砕く。
口調こそ共通している。しかれど記憶は共有できない。マウスは根積の記憶を保持しているが、根積はマウスになっていたときのことを覚えていないのだという。
こういった人間をDUAL(デュアル)を呼ぶのだと、同じくDUALである
ナターシャ・カンディンスキー
が言っていた。(ナターシャの場合、表に出ている人格が変身した姿で、冷徹な性格のほうが本来の姿らしい)。
根積はマウスを恐れており、第二人格を封じ込めるべくEABという団体の施設に身を置いていた。EABは刑務所のような管理体制を敷き、違法な薬物すら用いていたと聞いている。ほとんどの入居者にとっては人権無視のひどい体制だが、幸か不幸か根積には効果があったようだ。
「それで、根積さんはどうするつもりですか?」
ここまで立ち入ったことを尋ねていいだろうか、という迷いが陽太にはあった。
しかし、根積は意に介す様子もなく回答したのである。
「人生やり直すつもりです」
きっぱりとした口調だった。希望とか理想とかではなく、動かぬ事実だと断定するような。
「それは、どうやって?」
「あいつを切り離した世界に住むんです」
「ごめんなさい。ちょっと話が見えてこないんですけど」
「ですよね」
ウフフと根積は笑った。
「実はね、助けになってくれる人、というか、モノがありましてね。最近手に入ったんですよ。……いや、意思があるのだからモノあつかいはいけませんね。『存在』とでもいいましょうか? 朗報ですよ、まったく、朗報。私のようなみじめな生き物に降りてきた天佑(てんゆう)とでも申しましょうか。ありがたーい存在がやってきて、私を助けてくれることになったんですよ。呉井さん、私はこれで真人間に戻りますよ。あとはもうね、探偵なんて人に嫌われる仕事はやめて、町工場か何かで地味に地道に暮らすんです」
話しながら興奮してきたのか、根積の頬に赤い色がさしてくるのがわかった。ずっとショボショボしていた瞳に力がこもっている。だが健康な人間のそれではない。「次のレースは必ず来る!」と言っているギャンブル狂のような眼力だ。
口調にただならぬものを感じたのか。キジトラが顔を上げて根積を見あげていた。陽太には猫が、「やめとけ」と言っているようにも見えた。
陽太は、ぞわぞわと肌が粟立つのを覚えている。
根積さんが本気で言っているってことだけはわかる。
でも、そのモノだか存在だかがまともなものじゃないってこともわかる。
勘……だけど自信がある。
喉が渇いた。カラカラだ。たしかこの店ワンドリンクつきだったから、アイスコーヒーでも頼んだほうがいいかもしれない。
でも今は――。
「根積さん、良かったらその、モノというか存在について教えてもらっていいですか」
「ええ、ええ、お見せしましょうとも!」
キジトラが身をかがめ、うなりながら背中の毛を逆立てた。陽太のそばの白猫も平気ではいられず、声を上げてソファの背に隠れてしまった。陽太も中腰になっている。何かあればすぐに行動を起こせるように。
「ご覧あれ!」
背広の内ポケットから、根積は握りこぶし大のボールを取り出した。ボールというよりは水晶球だろうか。きれいな球形で傷ひとつない。半透明でうっすらと赤かった。
「この璧(たま)はですね。意思をもつ魔法的存在なんです! 『
王珠
(おうじゅ)』という名前だそうですよ。璧は私のところに転がりこんできました。そして自分の命令を聞くのなら、引き換えに私の願いもかなえるとおっしゃったのです! 嫌な用事をすることになりそうですがね……これはもう、従うしかないじゃないですか!」
王珠だって!
うっすら赤いように見えたのはわずかな間のことだった。すぐに水晶球は内側から強く赤い光を発し炎の玉のごとく身を染めたのである。
「王珠の力……それは
平行世界の創造!
私がいるべき場所はここではないのです!」
陽太は声を上げていた。
「根積さん、いけない……その力は危険……!」
(世界は、不完全ながら枝分かれした)
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
……しかし、根積は意に介す様子もなくこう回答したのである。
「人生やり直すつもりです」
きっぱりとした口調だった。希望とか理想とかではなく、動かぬ事実だと断定するような。
「それは、どうやって?」
「これです」
根積は両手で名刺を差し出した。反射的に陽太も両手で受け取る。
飾り気のない名刺だ。鍼灸接骨院の名前が印刷されている。医師の名も。
「こちらの鍼灸院の先生さん、もう九十歳くらいのご高齢なんですがね。知る人ぞ知る武術家でいまだバリバリの現役、とても腕が確かなかただそうですよ~。施設の人に教えていただきました」
「鍼灸接骨院……?」
陽太は拍子抜けした。
何かもっと、恐ろしい打ち明け話があるような気がしていたのだ。
「私、慢性の肩こりと腰痛があるんですよ。こちらの先生にかかって、腰とか肩とかね、たっぷり治してもらって心身ともにリラックスできたら、あいつ……マウスなんてもう出てこなくなると思うんです。健康第一ですよねえ」
屈託なく根積は笑った。つられて陽太も相好を崩す。
「ですよねー。凝りをほぐしてもらって元気になって、ゆったりとした場所で暮らすのが一番だと思いますわー」
根積が別人格に切り替わる条件は、過度なストレスを負うことだと陽太は推測している。銀行強盗みたいな黒い目出し帽がスイッチとなっているナターシャとはまた別だ。
だからストレスがなくなること、それが一番だと陽太も考える。とてもポジティブだし応援したい。
それでも、ひっかかる思いがあったのは事実だ。
――果たして、そんなに単純な話だっただろうか。
何かがおかしい。何かが。
おっと、と根積は手首の時計を見てつぶやいた。キジトラ猫を起こさないようにじわじわと立ち上がる。
「じゃあ私、用事がありますんでここで失礼しますよ。ちょっと嫌な用事ですがね。ま、ぱぱーっとすませまちゃいましょうかね」
今日は呉井さんとお会いできて嬉しかったです、と根積は言った。
「どうぞごゆっくり。それでは」
「あ……はい。それでは……」
どうにも落ち着かない。でも陽太は根積を見送ることしかできなかった。
ソファの上では白猫が立ち上がって根積を見ている。向かいのソファのキジトラも、はっと起き上がって目を根積の背に向けた。
根積が立ち去っても、陽太のなかのもやもやとした気持ちは消えなかった。
おかしい。根積さんにとっては良い話になっているはずなのに。止めたほうがいいという気がして仕方ない。
接骨院が悪いわけではないだろう。だとすれば。
嘘をついていた? さもなくば、なにか隠していたとか……?
しまった、と陽太は唇を噛んだ。
せめて連絡先だけでも聞いておくべきだったか。
ドアが開いた。根積が戻ってきたのかと陽太は期待した。
だが実際、立っていたのはあの女性店長だった。
でも――えっ?
店長は目にハンカチを当てていた。
泣いているのだろうか。
「どうしたんですか?」
声をかけずにはいられなかった。
「なんでもない。なんでもない……ですから」
短く告げて店長は『オフィス』と書かれたドアを抜け、隠れるように奥に消えてしまった。
もしかしたら、店長さんもオレと同じ違和感を……?
しかしこのとき、陽太には確かめる方法がないのだった。
せめて違和感の正体に近づくことができればいいのだが。
赤い。
赤いものが意識の底にこびりついているような気がする。
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担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年05月15日
参加申し込みの期限
2021年05月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年05月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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