鈴島、無人島サバイバルチャレンジ｜リアクション

鈴島、無人島サバイバルチャレンジ

●２日目～フリータイム

　蒼留人が拠点である洞窟に戻ってくると、ちょうど舞華がスコップで穴を掘っていたところだった。
　洞窟の中には茂もいる。ちょうど、洞窟組の様子を配信していたところだったようだ。
「おかえりなさい。どうでしたか？」
「魚、けっこう獲れたよ」
　蒼留人がゴザを拡げて見せると、その上でまだ生きのいい魚がビチビチと跳ねる。
「素晴らしい。ちょうど火床が出来たところです」
「火床ってこの穴のことか？」
「そうです。直火は森林火災の原因ですからね」
　配信を意識してか舞華は画面の向こうの人々に解説するように話をする。
「火そのものはどうする？　ペットボトルがあるからレンズ代わりに使えないかな」
「天気いいですからね。ただ、あたしはこっちの方法を試してみたいと思っているんですよ」
　舞華が指さしたのは、火床の傍らに置いてあった弓のような道具だ。
　森の中で手に入れた木材と、支給物資のツルで作った火を熾す道具『弓切り』である。
　弓の真ん中あたりに蔦を絡めた棒を立ててあり、その棒を木の板に押し付けて弓を上下に動かせば、摩擦が起きて火が熾きるという仕組みだ。昨日浜辺で夏朝がしていた火熾しの方法と似ているが、弓切りを使うことで手で擦るより楽に回転摩擦を起こすことができる。
　舞華が作業しながら説明しているうちに、火種が熾きた。
　着火剤にと集めておいた枯れ草に火を移し、火を大きくしたら今度は枯れ枝へと順々に移して、最終的には乾燥させた薪に移して焚火とする。
　そこに千恵が木の実集めから戻って来て、うわぁ、と嬉しそうな声をあげた。
「火だぁ！　なんか、感動する！」

「これで薪を乾燥させたり、塩むすびさんが獲って来た魚も焼けますよ」

「お料理もできるね。今夜は御馳走だね！」
　千恵は麻袋を開いて収穫した木の実をあたりに拡げた。
「おっ、いろいろ採ってきたな。こっちはヨモギか？」
「うん！　これも食べられるよね」
　千恵は今日も元気だ。
　火の具合が安定すると、舞華は外に出て薪材を作ったりし始めた。
　はじめは獣などの侵入を防ぐために木材で入り口を塞ぐ案もあったのだが、蒼留人が持って来た傘とゴザを立てかけることで扉代わりになるということで敢えて手間をかけることは省いた。
　千恵は麻袋を切ってツルで括ってハンモックを作った。
「えへへ。こういうの、憧れてたんだ」
　ハンモックに揺られ、千恵は満面の笑みを浮かべている。

◇

　その頃、浜辺ではあいおが拾った金属板をフライパン代わりに使って料理をしていた。
「小麦粉を水で練ったものを焼いて、」
　じゅわっと生地を金属板の上に拡げる。
　ホットケーキほどふんわりとはいかないがそこは我慢しよう。
　火が通ってくるとぷつぷつ泡が浮いてくる。
　ひっくり返して裏面も焼く。
「はいっ、完成ですぅ。木の実を添えればパンケーキっぽいものになりますわ」

　一方、莉鳥は結局三匹の魚を獲ることができた。
　獲った魚を三枚におろし、風通しのいい日陰において一夜干しにする。
　一匹は今日焼いて食べよう。
　昨日のうちに木の実などをナイフの柄で砕いたものと小麦粉を練った焼き団子を作ったから、今日はそれと焼き魚があれば栄養バランスも良さそうだ。

　夏朝は長い木の棒を拾って来てナイフで端を削っている。尖らせて銛にするつもりだろうか。
　タスニムは本日も最小限の食料を確保してそれを食したあとは省エネ活動で、早くから体を休めている。