鈴島、無人島サバイバルチャレンジ｜リアクション

鈴島、無人島サバイバルチャレンジ

●３日目～大魚獲り大会

　最終日、誰からともなくはじまったのは『大魚獲り大会』であった。

「ギャー！　やっぱり虫を針につけるのは苦手なのですーっ！」
「あいおさん、落ち着いて。こうやって摘まんで、さくっと刺すだけだから。ねっ」
　あいおと千恵が、枝とツルで作った即席の釣り竿に餌の虫をつけ乍ら大騒ぎしている。
　そこにタスニムが通りかかって、涼しい顔で釣餌の虫を摘まんで細い枝に刺すと近くのたき火で炙って――。
「虫なんてそんなに怖がるこたぁないだろ、炙れば食えるし」
　パクリ。
　長い舌で唇の周りを舐めて、ご馳走さんなんて言うもんだからまた大騒ぎだ。
「きゃああ、た、た、食べましたわーーーっ！」
「タスニムさん女の人なのに男前すぎっ！」
「いいから。虫くらいちゃっちゃとつけて釣り糸垂れな。ま、勝つのはあっしだけどね」
　タスニムはその場を去ると、即席の銛を作って海の中にざぶさぶと入っていった。その姿はほかの人々より元気だ。
「最終日だ、温存していた体力は使いきっていい。１００万円のためならば本気にもなるぜェ！」
「……僕だって、負けない」
　続くように夏朝も長い木の枝の先を削って尖らせた木の槍を手にして海の中に潜る。

　はしゃぐ女子たちから離れて、浜辺の木陰では茂と蒼留人が並んで腰をかけている。
「塩むすび君、君は参加しないのかい」
「魚は昨日けっこう獲ったので。ウナウナさんは？」
「読書だ」
「『おちこぼれ姫のカイカン無人島生活』……ですか。旅行ガイドの割に肌色の多い本ですね」
「君も読むか？」
「……いえ、そっちに足を踏み入れると姉の二の舞になりそうなんで……」
　
　千恵が竿を引き上げ歓声を上げている。
「来た来たっ！　あっ、大きい！」
　釣り上げたのはこのあたりを回遊しているカマスのようだ。
「おや、やりますね」
　太公望よろしく岩の上に胡坐をかいて釣り糸を垂れていた舞華の竿にも引きがあった。
「……ふっ。五匹目ですよ」

　結局、午前中の大魚獲り大会の優勝者は千恵となった。
　二位が舞華。
　他の者たちはほぼ同数の数の魚を捕まえ、ボウズだった者はいなかった。

◇

　昼からは釣れた魚を枝に刺して焚火のまわりに立て、皆で焼き魚を賞味した。
　午前中の優勝者である千恵がみんなに提案する。
「ごはんとして調べてきたグルテンミートっていうの作ってみたいんだけど……」
「グルテンミート？」
　聞きなれない単語に帆太が食いつく。
「うん。材料は小麦粉と水だけ。混ぜて、捏ねて、何度か水洗いして、茹でるだけなんだって。肉のような触感があるらしいんだけど……できるかな」
「やってみる価値はあるんじゃない？　小麦粉だったら私も余ってるし」
　答えたのは莉鳥だ。
　焼き団子を主食に２日過ごしたので、そろそろ違ったものを食べたい気持ちになっている。
「じゃあお姉さん、一緒に作ろう！　海水から塩ができたら飽きずに食べれそう」
「いいわね。やってみましょう」
　莉鳥が海水を熱して塩をこしらえる間に、千恵が洞窟の拠点近くから水を汲んでくる。
　それから小麦粉と水を覚えている通りに混ぜて、捏ねて、何度か水洗いして、団子大にちぎって茹でる。
「出来た！」
　千恵はもこもこした白い物体に、海の塩を擦りつけて、恐る恐る食す。
「どう？」
「……うーん、そんなに美味しいわけじゃないけど、プリプリもっちりなのは確かだよ」
「そうね。今までと違う食感なのは気分が変わっていいわね。焼き魚を挟みこんだら、フィッシュバーガー風にならないかしら」
「それ、やってみる！」
　なんでも挑戦、それがサバイバルの醍醐味だ。
　結局のところ自分でやってみなければ正解なんて分からないのだから。

　最終日は穏やかに時間が過ぎる。太陽が傾いてゆく――。

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