鈴島、無人島サバイバルチャレンジ｜リアクション

鈴島、無人島サバイバルチャレンジ

●１日目夜～２日目朝

　こうして、一日目が終わっていく。
　日が暮れてしまうと、街にいるときは想像もつかないような闇があたりを包み込む。
　静かだけれど、静かじゃない。
　波の音、虫の声、風に揺れる葉擦れの音。
　様々な音が満ちている。
　昼の内に大き目の葉や切り落とした枝で作った簡易なテントの中で、莉鳥は世界の音を遮断するかのように持って来たイヤフォンを耳に押し込んだ。
　音楽が聞こえるわけではない、もともと壊れたものなのだ。
　それでもこの小さな機械は日常との懸け橋だ。
　耳に差し込んで置けば何となく眠れそうな気がした。

「森の木々があんなに真っ黒に見えるなんて知らなかった」
　浜辺に作った簡易な寝床の中で、まゆらは眠れず何度も寝返りを打つ。
　ポケットの中から取り出したのは「魔法少女ミスティックアリア」のアクリルスタンド。
　一つだけ持ち込める私物として、お守り代わりに持って来たものだ。
　ちなみにガチャを引いた際に同じものを２つもっている。
「……うーん……なん、か……微妙におなか痛いかも……」

　茂は気持ちよさそうな寝息立てている。
　帆太はワクワクが止まらず眠れない。
「星、綺麗だなあ。明日も晴れそう」

◇

　そして２日目の朝が来た。
　参加者の全員が砂浜に集められる。
　いよいよ、一日目の結果発表だ。
　いったい何人が脱落してしまうのか。
　早朝ではあるが、参加者だけでなく視聴者も固唾を呑んで見守っている。

「ドゥルルルルルルル‥‥１日目の結果発表ー！　得点の高い方からいくね！」
　帆太がドラムロールを口にしながらスマホを覗き込む。
　ポイントは、スポンサー点と視聴者点の合計で、配信主である帆太もこの瞬間まで知らないままなのだ。
「１日目の最高得点は……１８ポイント、タスニムさん！」
　タスニムは被っていた帽子を小さく上げて、薄い唇で嬉しそうに弓型をつくる。
「１７ポイント、僅差で追うのはあいおさんとウナウナ！
　１５ポイント、マイカさん！
　１４ポイント、千恵さん！」
　カウントダウンされるように名を呼ばれていく。
　既に呼ばれた参加者は安堵の表情。
　まだ呼ばれない参加者は緊張の面持ちだ。
　なにしろ１０ポイントに到達していなければここで島を去らなければならないのだ。
「１３ポイント、塩むすびさん！
　１１ポイント、かーささんと莉鳥さん！」
　まだ帆太とまゆらが呼ばれていない。
　ごくり、帆太の唾をのむ音が響く。
「えー……俺、パンダは……ええ～……ご、５ポイント！？」
　ショックを受けて言葉がなくなってしまった帆太の代りに、茂が実況する。
「そして最下位は……まゆらさん、３ポイント。残念ながら――

　最初の脱落者はパンダとまゆらさんとなってしまいました！

　敗因は……パンダは寝不足、だそうだが？」
「あーっ。つい、ワクワクしすぎちゃって。寝れなかったんだよね」
「まゆらさんは、貝やばかった、とコメントが届いています。まゆらさん、……まゆらさん？」
　まゆらは青い顔でお腹のあたりを抑えている。
「あちゃー……なんでこうなるかな」
「いいから。はやく島を出て医者に診てもらってくれ！」
「はーい。……みなさん。応援してくれたのにごめんね。大丈夫なので心配しないでねー……」
　こうしてまゆらは控えていた水上タクシーで島を去った。

「残るチャレンジャーは、８人！　それでは、２日目スタートぉ！」

　叫んだ帆太は配信者として島に残るが『ひとまず仮眠してー』というコメントが飛び交っている。