鈴島、無人島サバイバルチャレンジ｜リアクション

鈴島、無人島サバイバルチャレンジ

●１日目～フリー（洞窟探し組）

　太陽が頂点を回り、午後になった。
　サバイバルの初日は何かと忙しい。
　何もない無人島で３日間過ごすための拠点を確保しなければならないからだ。

「ふむ。ここは悪くなさそうですね」
　鬱蒼とした森の中。
　ツインテールの赤い髪のうえで猫耳のカチューシャが揺れる。
　お屋敷にいるときと同じメイド姿の舞華だ。
　そのそばにちょうどいい洞窟をみつけ、舞華はそこを自分の拠点にすることに決めた。洞窟と言っても奥行きはほんの数メートル程度。足元は森から連続したままの枯葉が積もった地面で、自然がつくりだした１０畳ワンルームといえなくもない。
　具合がいいのはほど近くで、岩の間からちょろちょろと清水が湧き出していることだ。
「水場確保は大切ですからね」
　舞華が午前中のうちに集めた食材や薪材を運び込んでいると、向こうの茂みがガサガサッと揺れた。
　ぴた、と動きを止める。
　鈴島にクマがいるとは聞いていないが、なにか危険なけものの可能性もある。
　対してこちとら、可愛く美味しそうな美少女なのだ。
　息を詰めて音がした方に意識を集中していると――。
「あっ！　誰かいる」
「どうした光村。……あっ、マイカさん！？」
　姿を現したのは蒼留人と千恵であった。

「ははぁ、千恵さんと塩むすびさんも洞窟を探していたと」
　話を聞くと、蒼留人と千恵は協力関係を結び、一緒に行動していたらしい。
「うん。雨をしのげるところがあったら過ごしやすいかなあって。そうしたらちょうどソル――じゃなかった、塩むすびお兄ちゃんに声を掛けてもらったの」

「仲間がいるほうが精神的に癒されるだろ」

　それに、と蒼留人は付け加える。
「小学生じゃ体力的にきついかと思ってな。力仕事が必要なら手伝えるし、余力があれば何か協力してもらればありがたいしな。……や、勝負だから、無理にってわけじゃないぞ」
「うん、ゆるやかな協力カンケイっていうことだよね。大きい人ばっかりで私くらいの人いなかったから、声かけて貰えてうれしかった。ちょっとお兄ちゃんのことを思い出しちゃったよ」
　千恵の言葉を聞いて、蒼留人は照れ臭そうに鼻の頭を掻く。
「さて、そろそろ行こうか。ここはマイカさんが先に見つけたみたいだし」
「そうだね。水場が近くてちょうどいいと思ったんだけど……」
「ちょっと待ってください」
　舞華は彼らを引き留める。
「そう簡単にここよりいい場所が見つかるとも思えませんよ。どうやらほかの人たちは砂浜のほうに拠点を作り始めているようですし、この場所なら三人くらいなら何とかなると思うのですが」
　蒼留人は一瞬何を提案されているのか分からず目を丸くする。
「つまり？」
「ここを三人の拠点にしませんか、ってことです」
　家族というより、シェアハウス。
　それぞれの活動は個々にやるけれど、簡単に仕切って場所を共有してもいいと舞華は言ってくれているのだ。
「一人で頑張りたいお年頃でしょうけれど、小学生の女の子を放りだすのも気が進みませんしね」
「ありがとう、マイカお姉さん！」
「それに男子高校生とふたりきりというのも……」
　千恵に聞こえないよう舞華は小声で付け足す。蒼留人も小声になって、舞華の足先を軽く踏んで抗議した。
「おい、俺のことなんだと思ってるんだよ」
「む～ふ、男はみんなオオカミだと思ってますよ」

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