鈴島、無人島サバイバルチャレンジ｜リアクション

鈴島、無人島サバイバルチャレンジ

●１日目～フリー（浜辺組）

「探そー♪　使えそうなもーのー♪」
　あいおが即興の歌を歌いながら砂浜を歩いている。砂浜に拠点を構えることにした彼女は、漂流物を探してあるいているらしい。
「あいおさん何か見つけた？」
「ええとぉ、長くて細くて丈夫そうな枝を見つけましたよ。軽いので釣り竿にちょうどいいかも」
「へえっ。あ、視聴者さんからもっと歌ってってリクエスト来てるよ」
「いいですよー♪　ふふふーん♪ ……あっ、」
　あいおは砂の中からまた何かを拾い上げる。
「この金属の板は火の上に乗せれば料理の鉄板代わりに出来そうですよぉ」

　あいおの歌声をバックミュージックに、夏朝は額の汗をぬぐう。
「ふう……っ」
　午前中に集めた葉・枝・蔓を使って作った、テントを模した簡易寝床はまあまあの出来だ。
　森に入ったときに枝や蔦で小型獣用の罠も仕掛けてきた。
　獲物が掛かるとしたら夜だろうか。今日を生き残れたら明日見回ってみよう。
「あとは……石を積んで囲った火起こし場を作ろうかな……」
　でもその前に一休み。木陰に腰を落ち着けると、周りの人の様子がよく見える。
　森の方から歩いて来たまゆらが近づいて来た。手には葉や枝、それにたっぷり水を汲んだ瓶を持っている。
「うわ～すっごい素敵な家が出来てる！　かーさちゃんだっけ」
「おつかれさまです。……水、あったんですね」
「うん。いい感じの湧き水が出てるところがあってね」
　なるほど。良い情報だ。
　夏朝と軽く情報交換をしたまゆらは、少し離れたところに集めた葉っぱや枝でそれっぽい寝床を作り上げた。
　正直、夏朝の寝床よりは完成度的に劣る気もするが、なに、２日間過ごせればいいのだ。
「これで雨露凌げればいいけど……どうかな？」

　まゆらが寝床を作っている間に、夏朝はたき火熾しをした。
　木の板に置いた枯れ葉等を木の棒でひたすら擦る。
　手間はかかるが古代人もやってきた火熾しだ。
　かなり時間はかかったが、煙が立ち上ってきたときは本当にうれしかった。
　慎重に火を枯れ枝に移し、空気を送り込んで大きくしていく。
　炎が大きくなるにつれ、ぱちぱち、と弾けるような音がしてきた。
「よし。ナタかスコップをフライパン代わりにしたら料理できそう。ああ、お腹空いた……」

　気づけば太陽が水平線に沈みつつある。
　海と空、両方を圧倒的な赤があたりを包み込んでいて息を呑むほど美しい。
　まゆらもまた火を熾し、汲んできた湧き水を沸騰させて消毒した。
「あー疲れた。でも……夕日、綺麗だなあ。この景色を見られただけでも来て良かった」
　まゆらは採取した木の実や貝――視聴者の声はまゆらには届いていない――などを切り刻み、溶いた小麦粉の中に入れて生地をつくった。
　フライパン代りに綺麗なままのスコップを熱して、そこに生地を流し込む。
　じゅわっという音と煙、ここまでの疲れをいやすような感動的な香りが立ち上っくるとそれだけで、口の中に涎が溢れてくる。普段だったらはしたないって思っちゃうかもしれないけれど、よく働いたあとはそんなこと気にしちゃいられない。
「お好み焼き？　チヂミ？　わからないけどまあいいや。いただきまーす！」

　同じく砂浜に敷いた干し草の寝床の中ではタスニムがもう横になっている。
　水と小麦粉を練って焼いたものを食べ、水もすこしだけ飲んだ。食料を探したり探索する以外は休んで、体力を温存するのがサバイバルの基本だというのがタスニムの考えだ。
（これで初日は体力温存って寸法よ）
　水は３日かけて少しずつ飲むことにしよう。小麦粉の配分は……と瞼を閉じて考えていたタスニムだったが、やがてゆるりとした呼吸となった。