【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

　特設ステージに人々が集まってきた。大人や小さな子供の姿が多く見られた。
　最前列にいた女の子は隣にいた父親の袖を引っ張る。
「ねえ、パパ。あれって、なに？」
　ステージを指差す。両端と中央に楕円形の白い物体が置かれていた。
「あれは卵じゃないかな」
「大きいね！　それで、どうなるの？」
「どうなるんだろう。大きなヒヨコが生まれるのかもね」
「そうなんだ！」
　ステージ裏には花咲夢乃がいた。傍らには楡宮遠海がショルダーキーボードを持ち、飛び出すタイミングを計る。
「私がステージに出たら、楽器を入力したこの機械を操作してね」
「わかったのですわ、先輩！　今日はよろしくお願いしますの！」
「もっと力を抜いて。じゃあ、行くよ」
　遠海がステージに飛び出した。声援には片手を上げて応えた。
　ゆっくりとした調子で音を鳴らす。夢乃の操作でドラムの音が合わさった。遅れてギターが加わり、スピード感を増していく。
　そこにシンバルの音が響き渡る。瞬間、ステージに置かれた卵が中央から割れて三人が飛び出した。左右は新入生で中央にアイドル活動研究部の部長、喜矢武あいおが務める。
　三人は暖色系の衣装で個別に踊る。放射線状に広がった羽が軽やかに弾む。
「アイドルのコンサートみたい！」
　その一言が切っ掛けで手拍子が起こる。観客の中には熱狂的なファンがいるのか。あいおシスターズ最高―、と叫ぶ者が続出した。
　三人は踊りながら間隔を詰めてゆく。すると個別の踊りは徐々に揃い始める。
　気付いた何人かは掌が赤くなる程の拍手を送った。
　三人は中央に集まって切れのある動きで同時に回る。
　ぴたりと寄り添う形で観客に向けて手を振った。
　八神修は最大限の望遠を活かし、全身をカメラに収めた。
　中程で見ていた野々ののこは全力で拍手を送る。隣にいた佐藤英二は拍手をしながら、良い演出だね、と口にした。
「大きなヒヨコが雌鶏になったみたい！」
「短い踊りの中に成長の過程を表現したのかもね」
「踊りが揃ってたし、みんな可愛い！」
　英二はののこの横顔を見つめて、そうだね、と小さな声で言った。
　あいおはステージに置いてあったマイクを手に取ると、大きく腕を振って言った。
「こんにちは！　アイドル活動研究部ですわ！」
　一際、大きな声援が返ってきた。少し待つと再びマイクを口に近づける。
「出来たばかりの、本当に孵ったばかりの雛鳥です！　私達が力強く羽ばたいていけるように応援をよろしくお願いします！　皆さんが私達の育ての親鳥ですわ！」
　最後の熱の籠った台詞に観客は熱狂した。予定にはなかった歌や踊りがアドリブで行われ、そのライブ感に全員が巻き込まれるのだった。