プラネット・バトルロイヤル｜リアクション

プラネット・バトルロイヤル

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「がんばって皆！　諦めちゃダメよ！」
　子供たちを励ましながら、亜美佳は集団の殿を走る。
　背後から迫りくるのは、サーベルタイガーのような機甲獣。しかし建物に入れれば逃げ切るチャンスはできる。
「あっ！」
　子供たちの最後尾を走っていた少女が脚をもつれさせた。その間にも、サーベルタイガーは容赦なく接近する。
　少女を抱き起こしながら、他の子供には先へ進むよう叫ぶ亜美佳の身体を、背後から影が覆う。
　咄嗟に唐辛子スプレーを噴射し、少女を突き飛ばす。仲間たちが彼女を受け止め、そして亜美佳の方を見た。
　どうすればいいか問う眼差しに、唇の動きだけで告げる。
　行きなさい、と。
　背後から飛びかかるサーベルタイガーに、ろっこんを発動。吹き飛ばし、スプレーを噴き付けようとするが――
「あぐっ！？」
　一瞬早く身体を起こしたサーベルタイガーの牙が、亜美佳の身体に食い込んでいた。
「つ、かまえたわ……よっ！」
　サーベルタイガーの眼へ、ナイフを突き立てる。
　さらにスプレーを噴射、体内に直接ぶちこまれた刺激物にサーベルタイガーは泡を噴いて悶絶する。
　その様を眺めながら、うすれていく意識の中で亜美佳は思う。
　最期まで付き合えなかったことは残念だけど、今この時、確かに子供たちを守ることができた。
　それだけは、良かったと。
　
　亜美佳の意識が途切れた直後、子どもたちへと猛然と突進する新たな機甲獣の姿があった。
　牛のような姿をしたその機甲獣は、背中に搭載されたマシンガンで子供たちを狙う。
　なんとか銃撃を逃れ、建物の中へと逃げ込んだ子供たちは扉を閉めた。亜美佳が居なければ、その時間さえもなかっただろう。
　扉は分厚く頑丈で、すぐに破られるものではない。だからこそ亜美佳も、ここへ逃がしたのだが――。
　牛型機甲獣は、力任せの突撃で扉をひしゃげてさせた。
　爛々と瞳を燃えたぎらせた機甲獣を前に、一人の少年が震える手でハンドガンを構えた。
　ガチガチと歯を鳴らしながら、それでも立ち向かおうとする少年。
　そんな彼をあざ笑うように、機甲獣が助走をつける。
　
　突撃。
　
　その瞬間、牛の前に立ちはだかる屈強な影があった。
「彼女が繋いだ命、散らせてなるもんですかッ！」　
　鎧のような筋肉を大量の爪痕と血にまみれさせ、影――蛇那伊が叫ぶ。
　マシンガンを撃たれようと決してひるまず、渾身の膝蹴りと肘打ちを挟み込むように叩き込む。
　続けざまに放つのは、眼球を狙った貫手。
　持てる力の全てを注ぎ込んだその一撃と牛の角が、互いの肉体をぶち抜く。
　どちらももはや、そのまま動くことはなかった。

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