プラネット・バトルロイヤル｜リアクション

プラネット・バトルロイヤル

◆
　莉鳥は一人、無人の建物の中を走っていた。
　この辺りの建物は繋がっていて、ほとんど外に出ることなく移動できた。おかげで敵とも遭遇せず、ロケランの弾薬も節約できたように思う。
　この調子なら意外と、と思った矢先だった。
　轟音と共に、モールの外壁が砕け散った。
「ドラゴン！？」
　崩れた壁から見えたのは、大型のドラゴン型機甲獣の尻尾とその周囲を走り回る人影。
（巻き添えを食っただけ？　だったらこのまま）
　隠れて進めばと思った瞬間、足元から嫌な音がした。
「嘘、ちょっと……！」
　足元にヒビが走ったかと思うと、崩壊した。
　そのまま莉鳥はまっ逆さま。落下地点のガレキが崩れて、滑って、あっという間に地上に転がり落ちる。
　そう、ドラゴンの居る地上に。
　センサーが莉鳥を捉えたのか、ドラゴンの頭がぐるりと左下方の莉鳥へと振り向いた。
　死んだと思った。
「お前の相手は僕たちだろ」
　ドラゴンの横面に転移したサキリが、赤光帯びたマチェットで爪痕を刻む。
　ドラゴンが爪を振るう。
　その寸前、鸞先生がドラゴンの鼻面に電撃を連射。センサー類がかき乱されたか、爪はサキリを捉えそこねて空を斬る。
　ならばとばかり、尾が一閃。先ほど崩れた建物のガレキを弾き飛ばし、サキリに、鸞先生に、そして莉鳥に襲いかかる。
　乗り捨てられた近未来的自動車の陰に飛び込み、なんとか礫弾をやりすごす莉鳥。
（完全に捕捉されてるわね）
　外にも気を配っておけばよかったとは思うが、後悔しても仕方ない。
　一人だけ逃げるのは無理だろうし協力した方がいいと、莉鳥はロケットランチャーを構えた。

（共闘してくれるならありがたい！）
　莉鳥への注意を逸らすよう、サキリはドラゴンの右手へ転移。
　腕を蹴って肘の関節部へと疾走するサキリを、ドラゴンは虫を払うが如くに叩き落とす。
　瞬間、斬空赤刃。右肘の関節部へと転移し、一閃を刻んで退避する。　
　莉鳥がロケットランチャーを発射すれば、ドラゴンは左手からの火炎放射でロケット弾を迎撃。
　しかし同時に鸞先生が電撃を連射。右肘の関節部をショートさせ、破壊には至らないまでも動きを止める。
　直後、サキリが再度の転移――再び関節へ斬撃を放つ。
　ドラゴンは構わず右腕を振り抜き、サキリに叩きつけた。しかし度重なる損傷に、右腕下腕はもはやケーブルで繋がっているだけの有様。
　あと何度もケーブルが耐えられるものではない――というより、耐えさせない。
　鸞先生が正面から右へ回り込むようにライフルを乱射、莉鳥がやはり左からロケットランチャーを発射。
　防ぎきれずに直撃し、ケーブルが断裂。肘から先が落下する。
　土埃が舞い上がった向こうから、サキリが姿を現す。右腕を受ける寸前、ろっこんで逃れていたのだ。
　転移、落ちた下腕部を踏み台に跳躍。その勢いのままに、破損部からねじ込むように斬撃。
　右腕上腕部の装甲が引き裂かれ、機械化された内部構造が覗く。
「先生！」
「お任せですわぁ！」
　アサルトライフルから放たれた電撃がケーブル系を襲い、ドラゴンの全身が痙攣する。
　
　遮蔽代わりのガレキを飛び越え、可能な限り距離を詰めて莉鳥はロケランを発射する。
（できるだけ距離を詰めて、威力を高めて早く倒さないと）
　その時だった。
　ドラゴンの胸部が展開、無数のミサイルが顔を覗かせた。
　――早まった。
　次の瞬間に吹っ飛ぶ自身を想像し、ロケットランチャーの引き金にかけた指先が緩みかける。
　しかし鸞先生がアサルトライフルを乱射。手当たりしだいにバラまかれた電撃がミサイルの発射を遅らせ、その一部を誘爆させる。
「そっか、誘爆させれば……っ！」
　飛び出したガレキへと後ずさりながら、ロケットランチャーを発射。気が抜けそうな猫の鳴き声をかき消して、誘爆による大爆発の音が響いた。
　苦悶の叫びをあげるドラゴン、しかし誘爆を逃れたミサイルが放たれ――
　――ようとしたその時、閃光がドラゴンの視界を焼いた。

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