プラネット・バトルロイヤル｜リアクション

プラネット・バトルロイヤル

◆
　空には、三つの月と二つの太陽が輝いていた。
　周囲に広がるのはＳＦ小説にでも出てきそうな未来的な都市。そこを闊歩するのは機械と獣のハイブリッド――機甲獣たち。
　その異常な景色の中を、尾鎌蛇那伊は近くの建物の陰に身を隠していた。
　戦闘セットを終え、近くに転がるコンテナを開く。
「……ロケラン？」
　入っていたのは、ロケットランチャーだった。刻まれたマークからすると、閃光弾とかそういう感じの代物だろうか。
　あって困ることはないだろうとロケランを担ぎ、安全地帯を目指して移動開始。
　機甲獣をかわしながら進んでいくと、視界に飛び込んできたのは小さな子どもたちの集団。その目の前で、小型のワニ型機甲獣が睨みを効かせている。
　子どもたちは武器こそ手にしているようだが、機甲獣におびえてか構えるのがやっとの有様なのが見て取れた。
　武人として、見過ごすわけにはいかなかった。
　風景に己を溶け込ませるように、蛇那伊は静かに歩みを進める。そっと両者の視界の脇へと近づくと、そこからは一気に疾走。
　ワニが気付く。
　尻尾のしなりから跳躍の気配を感じ取り、飛びかかるワニの真下へと潜り込むようにスライディング。
　装甲のない腹部が頭上に晒され、
「ふんッ！」
　すかさず拳を叩き込んだ。撚るようにして拳を押し込み、衝撃を内部へと浸透させた。
　ワニが動かないのを確認し、ぽかんと見つめてくる子供たちへ向きなおる。
「怪我はない？」

◆
　肌がひりつくような感覚に、椎井莉鳥は素早くその場を離れた。
　直後、ゴリラのような機甲獣の拳が叩きつけられる。そのパワーは凄まじく、叩き割られた地面が飛礫となって飛び散るほど。
　しかも対する莉鳥は丸腰で、このままではどう転んでも勝ち目がない。
　だから、逃げることにした。
　倒れたアンテナやら未来的なデザインの車やらの残骸をくぐり抜け、ゴリラから逃げるうちにコンテナを発見。
「何これ？」」
　側面には、何かアイコンがプリントされている。銃とナイフと……武器が入っている、ということなのだろうか。
　中身はロケットランチャーだった。何故か弾頭がネコっぽいデザインの。
「……何これ」
　見た目は妙だが武器は武器、それも重火器だ。文句はない。
　ネコロケランを担ぎあげたその時、後ろから轟音が轟く。
　まさかと振り向けば、そこには撒いたと思っていたゴリラ機甲獣の姿。道を塞ぐガレキを吹き飛ばしながら、まっすぐに向かってくる。
　すぐにもロケットランチャーをぶっ放したくなる莉鳥だったが、
（威力はありそうだけど、あのゴリラ相手に足りる？）
　ぐっとこらえた。
　吹き飛ばされたガレキが、重い足音が、ゴリラの巨躯がどんどん迫ってくるのから目を離さず、目を逸らさず、ギリギリまで引きつけて――発射。
　ロケランが、にゃあと鳴いた。
「今の何！？」
　怪訝な顔でロケランを見やる莉鳥。似つかわしくない気の抜けた発射音を放つ武器に、今更のように不安が押し寄せる。
　しかし、あくまでもロケットランチャーということか。
　命中したロケットランチャーは、一撃でゴリラ機甲獣を爆散せしめた。

このページにイラストを設定する