プラネット・バトルロイヤル｜リアクション

プラネット・バトルロイヤル

◆
　少し傾いたビルの中程に、壁が崩壊して中が顕になったフロアがあった。
　拾い物のロケットランチャーから煙を立ち上らせ、檜扇舞華がドラゴンとの戦いを眺めている。
「着弾確認、と。これ結構便利ですねー」
　このロケラン、機甲獣の残骸の山に倒れていた他プレイヤーから拝借したものだ。彼には悪いが、良い拾い物だったと思う。
　ドラゴンに捕捉される前に、床に空いた穴から下に降りる。進路等などを考えると一体くらいは倒しておいたほうが良いだろうが、後はさっきから戦ってる人たちにお任せだ。
　下へ下へと降りていく舞華の耳に、
　――ちゅう、と。
　耳の奥が、ざわっとする感じの音が聞こえた。
（右でしたかね）
　音がした方へ閃光ロケランを向けた直後、今度は左に気配。
　その出処は、ケーブルやらがむき出しになった壁の穴。
　そこから無数の赤い光が漏れ出したかと思うと、ネズミ型の機甲獣の群れが溢れ出す。
「これはちょっとジャンルが違わないです！？」
　武器を切り返る。
　ロケランを入手してからわかったことだが、思考一つで所持品は切り替えられるらしい。こんなところもゲーム的だ。
　かくて取り出したのは初期装備――猫の手みたいないい感じの長さの棒と、多分役に立たない鍋の蓋。巨大モンスターを狩るアクションゲームに、こんな武器があった気がする。
　殺到する機甲のネズミに向け、猫の手をフルスイング。
　にゃああぁぁあんとドップラー効果感のある鳴き声が響いて、ネズミたちが動きを止める。機械化されていても、ネズミはネズミということか。
　その隙に、舞華はフロアを駆け抜ける。

◆
　閃光にセンサーを焼かれたドラゴン目掛け、サキリが駆ける。その胸元に揺れるのは、苺のネックレス。
　狙うのは、誘爆によってえぐれた胸の奥。そこにあるはずの心臓部。
　刃が帯びる赤光は煌々と、しかし果実のように鮮やか――『ストロベリー・バーンナップ』を受けた極光の赤双刃に、全身のバネを駆使した回転を載せる。
　螺旋を描く赤刃がドラゴンの胸を抉り断ち、機械式の心臓部が顕になる。
　直後、心臓部へと電撃が着弾する。
　火花を散らすそこへ、さらにダメ押しのロケットランチャーが直撃した。
　
　胸部から爆煙をあげて、ドラゴンの巨躯が崩れ行く。
　倒れ込んだ拍子の地響きと、直後上がった大爆発に、莉鳥はロケットランチャーを抱えたまま安堵の息を吐いた。
　その時だ。
　頭上を大きな影が覆い、空を見上げる。
「え？」
　瞬間、巨大な影が――二体目のドラゴン型機甲獣が降り立った。
　幸運なことに、莉鳥には絶望を感じる間もなかった。
　降り立った瞬間、ドラゴンに踏み潰されていたからだ。
　
　爆炎の中咆哮する二体目のドラゴンの姿に、サキリの口元には何故か笑みが浮かんでいた。
「まさか複数居たとはね。流石に驚くね……」
　思えば、こういう死に様をこそ望んでいたのかもしれない。
　先生を守って戦い抜いて――その末に、死のうじゃないか。

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