プラネット・バトルロイヤル｜リアクション

プラネット・バトルロイヤル

◆
　四十九院鸞先生の合図で、サキリ・デイジーカッターは『斬空赤刃』を発動。
　機甲獣から距離を取った直後、先生がアサルトライフルを連射。放たれた電撃が、機甲獣の動きを鈍らせた。
　その瞬間を逃さず、サキリは機甲獣の頭上へと転移。赤光を纏うマチェットで、機甲獣を両断した。
　残骸を蹴って、サキリは先生のもとへ。
「カバー助かるよ、先生」
「このくらいお安いご用ですわぁ」
　そんな先生の様子に、サキリはふっと笑う。ここで先生と出会った時は驚いたものだが、これも縁というやつだろうか。
「それよりサキリ君、武器は……」
　大丈夫、と頷いてみせる。
　サキリのマチェットは私物だ。それが『ルール違反』扱いされたのか、ろっこんを使わないとまともに斬れない。
　ついでに言えばアサルトライフルは本来サキリの武器なのだが、先生がハズレ武器を引いていたので渡してしまった。銃より刃物のほうが慣れているし、問題はない。
　新手が現れないうちに、と先を急ぐ二人。
　しかしその矢先に、一つの巨影が空を覆った。

◆
「わっ！」
　薬師寺亜美佳がお腹に力をこめて叫ぶと、『旋動のバレンティア』が発動。
　双頭の犬型機甲獣が吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられる。
　すかさず駆けよってナイフを突き立てる――前に、ナイフから唐辛子スプレーを噴射。SFチックな状況なのに、なんだか護身アイテムみたいな武器だった。
　しかし敵も生身の部分がある以上、刺激物の噴射は有効だった。
　悶絶している隙にまわりこみ、体重を乗せてナイフを突き立てた。
　動かなくなったのを確認し、周囲を伺う。
　敵の姿はないが、光のサークルが迫ってくるのが見える。あまりのんびりしている時間はないかもしれない。
　都市のガレキの上を跳び跳びに駆け出す亜美佳だったが、その足はすぐに止まった。
　視線の先には、子どもたちの姿があった。大柄で屈強な男性に守られながら、必死に狼型の機甲獣と戦っている。
　しかし子供たちは覚束ない手付きで、まともに戦えそうには思えない。
　ガレキからわざと大きな音を立てて着地し、おまけとばかりに小さなガレキを蹴立ててる。
　狼型が何体かが振り向く。
　そうして注意を引きつけたまま、亜美佳は蛇那伊に呼びかける。
「こっちは任せて！」
「感謝するわ！」
　狼型を正面に捉えるように動きながら、距離を測って唐辛子スプレーを噴射。
　生身部分への刺激にたじろいだ隙に、すかさずろっこんを発動。先頭の一体を吹き飛ばし、さらに目を狙ってスプレー。
　もがく隙にナイフで首筋を斬りつけ、弾幕のようにスプレーを噴射しながら後退。が、一体がスプレーを抜けてくる！
　バイザー状の目に、アンテナのような耳。これでは目に噴きつけたところでお構いなしだろう。
　バイザーアイが飛びかかる。その瞬間、亜美佳が注視したのは口の中。
「ここならどう！？」
　口内目がけ、唐辛子スプレーを噴射！
　思ったとおり、そこは生身だった。飛びかかった体勢のまま悶絶したのをろっこんで吹き飛ばし、ナイフで一撃を叩き込んだ。
　その時、狼型の一匹が遠吠えをあげた。
　応じるように、どこからか狼型機甲獣が数を増していく。

　群れを相手に合流する二人。しかし子どもたちを守りながら相手をすればどうなるかは、火を見るより明らかだった。
　ずいと前に出て、蛇那伊が言う。
「子供たちを連れて逃げて」
「でもどうやって逃げる？　それに、あなたは――」
　不敵に笑い、ロケットランチャーを担ぐ蛇那伊。
「こいつでワンちゃんたちを目眩ましするから、その間に行って」
　答えを聞くよりも先に、蛇那伊はロケランを構えて飛び出していた。
「さあワンちゃんたち、遊びましょッ！」
「……っ、いきましょう！」
　蛇那伊を呼び止めようとする子どもたちの背を押して、亜美佳は走り出す。
　直後、ロケットランチャーが炸裂。
　閃光が狼たちの視界を塞ぎ、蛇那伊の姿をかき消した。

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