中の人など……ちぇんじ！｜リアクション

中の人など……ちぇんじ！

●乙女の花園で

「なにっ、次は水泳の授業だって！」
　信彦in千鶴が青い目を輝かせる。
「紳士としてレディの着替えを覗き見る事はできない。しかし！　仮病を使って見学なんて、真面目なちーちゃんのイメージを損なっては大変だ。
　それにレディがレディの着替えを見るのは問題ないし、ちーちゃんは授業に参加できるし、俺も嬉しいと見事なWIN-WIN-WINの関係だよね」
　一人でぶつぶつつぶやくと、意気揚々と更衣室へ向かっていった。

　更衣室では、伊賀解理の姿をした骨削瓢がバスタオルにカメラを隠して相手を物色していた。
（どうせならでかいほうが需要があるだろうねぇ）
　やってきた信彦に目を留める。
（おお、あの胸はすごいねぇ）
　服を脱ぎだす信彦in千鶴にこっそりカメラを向ける。
「ふう、脱いでみるとやっぱり重いねえ。ううん、この胸はどうやってしまえばいいのかな？」
　レディの着替えを見るはずが、今は自分の一部となったＨカップの胸に振り回される。
　着なれない女子の水着。さらに伸びる素材とはいえ、小さな背丈用の水着に巨乳をしまうのはかなりの難題だ。
「このままではちーちゃんが恥ずかしい思いをしてしまう。あ、そこのレディ、手伝ってくれないかい？」
「へっ、あっ……僕のことかねぇ」
　驚いた瓢in解理だが、カメラは脇に置いて手伝うことにした。
「この胸、大きすぎてね。水着にしまうのにちょっと支えてくれないか」
　信彦は瓢の手を自分の胸に導いた。
（ちーちゃんごめん、でもレディ同士だから問題ないよね）
　そのとき、更衣室の扉を叩く音と叫び声がした。
「骨削氏！　そこにいるんだろ？！　すぐ出てきてくれ！」
（伊賀はんが追いかけてきたようだねえ。だが……）
「何してるの、女子更衣室よ！　男子は外で体育でしょ！」
　瓢の姿をした解理は、当然のごとく女子たちによって行く手を阻まれてしまった。
「いや、僕は伊賀解理……わあっ！」
　解理の主張は届くことはなかった。
（ふふふ、撮り放題だねえ）
　誰にも見とがめられることなく瓢は着替え風景を撮影していく。
　これは千鶴のろっこん「王様ゲーム」のもたらした幸運だった。
（いくらになるだろうねえ）
　ホクホクしながらお宝画像を増やしていく。

「もう限界だ……」
　そのころ。
　上穗木千鶴は、ついに限界を感じて教室を抜け出し、保健室へ向かった。
「そういえば、次って水泳の授業じゃないか！？」
　慌てて自分の携帯あてに信彦にメールする。
『もうだめだ。保健室で待ってる、たすけて、早く来て』
　なんとか着替えを終え、プールへ向かおうとしていた信彦が着信に気づいた。
「せっかく着替えたけど……ちーちゃんが助けを求めてるなら放っておけないね」
　信彦は水着の上から制服をまとい、保健室へ向かった。
「信彦くん！」
　保健室にいた自分が、情けない顔をこちらへ向けるのを見た……と思った次の瞬間。
　視界に映ったのは、ちーちゃんの顔だった。
「あれ？　胸が軽くなった」
「信彦くん……戻ったみたいだ、良かった」
　安堵したのもつかの間。
「信彦くん……水着に着替えたのか！？　きみは、触るだけじゃ飽き足らずなんてことを！」
　真っ赤になった千鶴が信彦に詰め寄る。
「ごめん、ちーちゃん。真面目なちーちゃんに授業をサボらせるなんてできなかったんだよ。
　それにしてもちーちゃんの苦労がよくわかったよ……」
「ええっ、苦労ってどういうことだい？」
　さらに翌日、千鶴は真面目な態度のおかげで周囲からの評価が上がった信彦にヤキモキすることになる……