中の人など……ちぇんじ！｜リアクション

中の人など……ちぇんじ！

●おしゃれしてみよう！

「あれ？　なんか視界がいつもより高いような……？」
　廊下を歩いていた雨寺凛はふと違和感に気づき、窓ガラスに映った顔を見た。
　茶色の髪、赤っぽい瞳の男子……？　
（うわっ、これ修くんの顔だ！？　私修くんになっちゃってる！）
「お、八神、ちょっとわからないところが……」
　男子に呼び止められて、
（あわわ、勉強教えてとか言われても修くんほどできる方じゃないし……一旦避難っ！）
　全力ダッシュでその場を離れる。
「まだ軽音楽部の部室なら誰もいないかな？　部室にGO！」
　しかししばらく走ると、息が上がってしまった。
「ぜぇ、ぜぇ……修くんの体って体力無いなぁ……この程度のダッシュいつもの私なら全然平気なのに！」
　部室に着き、姿見を見ながらため息をつく。
「でもこうして見ると修くんの体って線が細いしおしゃれしたら映えるんじゃないかな？　ここにライブ用の衣装があった筈だしちょっと試してみよう！」
　善は急げと、衣装を引っ張り出し着替え始める。
　革ジャンにスキニーのジーンズにグラサン！
「おお、なかなかイケてる！　これで外に出てみようかな……」

　一方八神修は、解析関数の複素数分布について考えつつ歩いていた。
　視点が２０ｃｍ低くなった事に気付かないまま、男子トイレに入る。
（ん？　スカート？！）
「お、おい、男子トイレだぞ？」
　周囲の男子の目が自分に集まっている。慌てて修は鏡を見た。
　ロングの黒髪、黒い瞳、いつもの自分よりずっと下に映っている姿は……
「雨寺？！」
　トイレから出て、慌てて凜に電話しようとしたが番号を知らなかった。
「雨寺を見かけなかったか？」と周囲に聞きまわる。
「雨寺って……自分だよね？」
　怪訝そうな顔をされるばかりだ。
「ラチがあかん。雨寺は軽音楽部だったな」
　文化系部室のほうへ走り出した。
　走っても苦しくないのに驚く。
（小さいのになんて高性能なんだ……っ）

　軽音部部室前で、修は部室から出てきた男子……凜とぶつかった。
「っと、ごめ……あっ、私だー！？　ってことは中身はもしかして修くん？」
「？　誰……俺かっ！？」
　気が付かないのも無理はない。制服とは全然違う姿だ。
「俺が不良になってしまったｏｒｚ」
「良かった、私の体が無事に見つかって……えっ？　ああこの格好？
　似合いそうだったからおしゃれしてみたんだ！　かっこいいでしょ？」
「いや……それより俺の体を返してくれ」
「そりゃ私だって返してほしいけど、いつの間にかこうなってたんだもの。よかったら一曲歌うから、聴いていかない？」
　修はなし崩しに音楽活動に参加し、色んな服を着る自分を見る羽目になった。
「かっこいいよねー！　修くんはこういうの興味無いの？」
「ああ。たまには悪くないかもな」
　照れながらつぶやく。
　
「そうだ、雨寺のろっこんを試してみよう。録音もしてみるか」
　凜のろっこん「虚偽声楽（フェイク・ショウ）」は、自分の声の代わりに、好きな音や声が出せるというものだ。
　人気のないところに隠れて、修は右耳に手を触れる。
「ええと、こっちか？」
　ニャーン。
　触れた途端に、猫達の甘えた鳴き声が。
「癒されるな……次は」
　重火器の発射音や爆撃音が耳をつんざく！
「サバイバルのとき聞いたからな。面白いなあ」

　そうしているうちに。不意に、視界が変わった。
「おおっ、戻れたー！　自分の体はやっぱ落ち着くよー」
　喜ぶ凜。
「雨寺……。俺の体を酷使しすぎ……だ……っ」
　対照的に、修はぐったりしている。
「え？　体が痛い？　あー、その体で走り周ったからね……修くん、もっと鍛えた方がいいと思うよ、うん……」
「誰か、ヘルプミー」
　まだ鍛え方が足りないのかと痛感させられる修だった。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
男女が入れ替わる！　という状況ですが、ほとんどの皆さんが紳士淑女的に振る舞っていて感心しました。
もっとはっちゃけてもよかったんでしょうか？

原因の調査は今回触れないでしまいましたが。
校門の神魂が原因で食堂あたりまで影響が及び、時間差発動したりしています。
個人差がありますが、学校から離れたりお互いの接触が多いほうが早く戻りやすかったようです。

ともだち参照が、外見の分と中身の分両方必要になったのは想定外でしたが。
別の人相手だとまた違った感じになるかと思いますので、機会がありましたらまたやってみたいですね。
それでは、次回シナリオでお会いしましょう。

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