中の人など……ちぇんじ！｜リアクション

中の人など……ちぇんじ！

●昼下がりの入れ替わり

　食事を終えた御剣刀は食堂から出ようとした、はずだった。
（あれ？　さっきまで食堂に居たのに）
　気がついたら屋上にいた。
　下を見ると地面が近い、視線が下がった気がする。
　もしかして以前のようにまた子供になったのか？　と窓に映った自分の顔を確認すると。
　そこに映っていたのは小山内海の顔。
（……えっ、何だこれ！？　って声が出ない！？）
　そこで、持っているスケッチブックとペンに気づいた。
（落ちつけ俺、とりあえず状況を整理しよう。俺が小山内の体になっている？　じゃあ、俺の体に小山内が？）
　こうしてはいられない。
（うん、早く合流しよう、痛っ）
　走り始めたら転んで、慌てて立ち上がる。
　スカートだから捲れないようにしないと。
（男と女だと体のバランスが違うな。気をつけて走ろう。なんか胸や股間に違和感を感じるな……）

　そのころ、小山内海は。
（さっきまで屋上にいたのに……気が付いたら食堂）
　いつもと比べてなんだか視界が高い気が……
　どうしたんだろう？　と思って自分の体を眺めてみると、男物の制服。
（なんで、どうして？）
　と思って窓を見たらそこには刀の顔が。
（え？　な、なにが起こってるの）
　私は刀くんになってる、じゃぁ私の体には刀くんが？
（早く合流しないと、屋上のはず！）
　走り出してみて驚いた。
（わ、一歩が大きい。それになんだろう筋肉質だからかな？　体が少し重く感じる。あ、股間に違和感が……）
　……刀くんの体、なんだよね）
　一度意識するとドキドキしてくる。
（そうだ、とにかく連絡取ってみよう。ごめん、刀くん。携帯見ちゃうね）
　ポケットをあさって、携帯のアドレス帳から自分の名前を探してメールを送る。

　刀は階段を駆け下りながら考えていた。
（小山内の体って華奢だよな、女の子なんだから当たり前なんだけれど。
　この体で俺の事を助けてくれたりするんだよな、気を使った方が良いんだろうか？
　それはそれで一緒に戦っている仲間に対する態度ではない気もするし……難しい）
　色々考えていると携帯の着信音がした。
（メールが、俺から？）
　慌てて立ち止まり、開いてみる。
　やっぱり小山内が俺の体に入っていたか、急いで合流しよう。

　刀を待ちながら海は考えていた。
（あ、刀くんの体ってことは声が、しゃべることができる？　すごい、久しぶり……11、2年ぶりくらい？）
　ドキドキしながら声を出そうとしたけれど。
（って、あれ？　声ってどう出すんだっけ……）
　残念なことに、声の出し方を忘れてしまっている。
（こんな状態で思ってることがすぐ声にでちゃうよりは、いいのかな……）
　そう思ってみるが。
（刀くんの体って見てもわかるけどがっしりしてるよね。細身だけど締まってるって言うか。
　動作もなんていうか大きいっていうか。この身体だと普段、細かく動いてる私に合わせるのに気を使わせちゃってるかな）
　廊下を走る自分……刀の姿が視界に入った。
　大きく手を振ってみせる。

　たどり着いた刀は、海を見上げた。
　言葉が出ないのがもどかしい。
（小山内は俺と話をする時は見上げる形になるんだな。自分がその立場になって分かったが、距離が近いと見上げた時に首が痛くなりそうだ。
　次からは小山内の隣に座って見上げやすくしよう）
　刀は、そんなことを思っていた。

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